はじまりは、いつも卵 ~三保の鉄人便り~

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前回は、初回の緊張も手伝って、大袈裟なくらい固い文章になってしまった。
名前が「鉄」だから、それも仕方が無いという話しのオチは、今までも何度となく使ってきたが、やはりここに名を連ねる御仁のプレッシャーがそうさせたのだと思う。

さて、今回は前回に引き続きの「履歴書」シリーズで、私のライスワークとライフワークが共存する「三保」について紐解いてみたい。

浪人、大学生生活、水中撮影の仕事をした4年間の合計9年以外の40年間はこの地で過ごしてきたわけなので、ここをロジカルにシニカルに語っても、誰からも何の文句も出ないだろうという前提で話しを進めてゆきたいと思う。

「何の根拠があって、あなたはそんな事が言えるのですか?」と聞かれた時に、「40年住んでいて、この海の中で1万時間以上過ごしている経験があるんですけど、何か?(笑)」と答えられますからね。

と、ここでいきなり、書き出しを時系列か逆順なのか、ハタとキーボードを打つ手が止まる。

元来、履歴書をうたうならば、古いものから順番に、提示してゆくのが倣いであろう。
しかし、「2013年6月、富士山の構成遺産として世界遺産に登録される」が最終履歴では、あまりにもプロモーションの要素が強すぎる。

もともと履歴書とは、相手(提出)先に対する自身の宣材なわけだから、その点では間違いではないが、面白みに欠けるし、本意とするところではない。
私の真意は、履歴書の意味合いよりも、健康診断書に近いロジックを使いたいと欲している。

とはいえ、数値データで、何の面白みも無く、つるんとアカらサマにするのではなく、もっとブンガク的に真綿でゆっくりと締め上げるように、赤裸々にしたい願望がある。(笑)

と、言うことで決定!

歴史を遡りながら、この地をザックり断片化してゆくところから始めてみましょう。

と思ったが、どうやらそんな暇は無さそうな連絡が編集部から届く。
とっとと始めてください!(怒)…前置きは、前回で十分だそうだ。

編集長とのきっかけは、卵から

では、断片化は端々でやっていくとして、この地の案内人として、何か生物に関連したテーマを毎シリーズ設定することになりそぅだ。

実は、この編集長の寺山さんと絡むキッカケは、NAUIという古いダイビング指導団体のメンバーセミナーで、私が講演した際に「卵のガイドができて、ガイドの卵」って言うオチをつけた、季節ごとの生物の卵を題材にした内容を気に入っていただいたからであった。
なので、ご機嫌を直してもらうためには、卵を題材とすることが、良かろうと思い始めたいと思います。

もしかすると、世界で二番目くらいかも知れませんが、サビハゼの卵をフィールドで最も観察しているのは、私ではないでしょうか?

観察の年数、時間、回数、個数、負ける気がしないんですけど?(誰に対して?)

とは言うものの、ガイドの仕事をしている時は、自分が撮影するわけにもいかないので、愛情を込めてお膳立てをして、ゲストさまにその場を明け渡します。

サビハゼは、12月末から4月までの4ヶ月ほどの間に5~6回程度の産卵、卵守り、ハッチアウトを繰り返します。

長い時は5月になってもやっていることがありますが、その場合の大半は、始まりが年を越えてからだったり、水温の低い時期が長かったりしています。
今年は後者のパターンで、5月の末まで産卵が見られました。
その煽りをくらってなのか、同じ環境で産卵をするホシノハゼの産卵が、1ヶ月おしてしまい、つい数日前まで、卵を守っている姿が見られました。

だいたい、何でサビハゼなんだと聞かれることが多々あります。
それは、まずは自分のフィールドに個体数が多い事と、ハゼの中で卵が一番大きく、観察がし易い点です。

もしかすると、サビハゼよりも大きな卵を産むハゼもいるかも知れませんが、観察の頻度が高く、難度の低い種でなければ意味がありませんので、「こいつの方が大きいよ!知らないの!?」と言われても、知りません(笑)

画像は、産みつけられたばかりの卵と若干時間が経過して加工した卵です。
フォトバトルの「これがこうなった」のお題で使うと反則扱いされますので、注意が必要ですね。

サビハゼの卵(撮影:鉄多加志) サビハゼの卵(撮影:鉄多加志)
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PROFILE
静岡の清水に生まれ、家業である潜水を通じて、海の素晴らしさを伝える事のできる、ダイビングの指導者となる。
更に、深く伝える事にこだわり、ガイドの技術を探求する。

2000年から非常勤講師として教壇に立っていた東海大学で、2014年4月から専任講師として、より専門的に海洋スポーツのダイビングを中心に講義や実習に携わる。

日本体育協会ダイビング上級指導者、1級土木施工管理技士、2級建築施工管理技士、1級港湾潜水技士、水産工学士。日本野外教育学会、日本海洋人間学会、日本水産学会の会員

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