ダイビング器材の中身は見えない。だから伝えねばならない~オーバーホールの現場から~

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オーバーホール特集

本当の意味でのダイビング器材選び

はじめまして。
オーシャナのオーバーオールを担当する職人のもとで、作業や事務をさせていただいている高尾珠実(たかおたまみ)と申します。

高尾珠実プロフィール

私自身も数メーカーのメンテナンス講習を受けたため、オーバーホールの全行程を行うことはできるのですが、専門的な調整や個々の器材の特性を把握して対応できるようになるために、さまざまなことを教わっています。

私がダイビングと出遭ったのは18年前。
グアムで体験ダイビングをしたのを機にライセンスを取り、大学卒業と同時にダイビングの会社に就職。

それから数店舗の都市型ダイビングショップで、スクールや器材販売、ツアーの企画・引率をし、2000年にインストラクターになりました。

一人ひとりのお客様がダイビングを始めるところからずっとサポートをする、という仕事の中で、器材選びのアドバイスや使用方法の説明はとても重要。

ですが、当初は器材選びとはサイズやカラーを選ぶことだと思っていました。
お店が取扱うメーカーの商品の中からチョイスして販売しなければならず、何の疑問も持つことがありませんでした。

ですが後に、ダイビング器材には数多くのメーカーの多種多様な機種があることを知り、本当の意味での器材選びとは何かを考えるように。

個々の体型、体力、ダイビングスキル、主なダイビングエリア、嗜好、それに適合するものをチョイスするためには、多種多様な商品の取り扱いとそれらの商品知識が必要。

もともと機械ものは苦手だったのですが、人が大好きなので、お客様のニーズに応え、より快適なダイビングをしていただきたいという想いから、器材について勉強を始めました。

オーバーホール特集

オーバーホールがネガティブなイメージにならないために…

器材のオーバーホールもその一環。
部品どうこうの前に工具もろくに使ったことがなく、最初は戸惑いました(笑)。

都市型ダイビングショップから器材・オーバーホール専門店の仕事に転向してから、今年で8年目になります。

日々、全国からな様々なダイビング器材が作業現場に到着します。
レジャーダイバーの方から、インストラクターの方から、ショップや現地サービスから、官庁系(消防等)のもの、時にはメーカーのオーバーホールを臨時で任せていただくことも。

どんな器材でもそうですが、所有者の方がご自身の器材の中身をご覧になられることはまずないですよね。

「オーバーホールに出して、実際に何をしてもらったのかよくわからない」
「表面的に器材がきれいになっているしオーバーホールが済んだんだろう」

その程度の認識しか持っていただけないのが一般的かと思います。
そのため、交換部品を多く必要とし、費用が高額になった場合、トラブルになりがちです。

そんな背景から、オーバーホールはネガティブなイメージを持たれがちです。

そこで私共は、まずオーバーホールはどういう工程で行われ、実際作業現場でどのように行われているかを知っていただきたいと思いました。
オーシャナさんのサイトでも詳しくご紹介くださっているので、ぜひご参照ください。

それから、器材がどのような状態なのかを専門機器を使って数字化することで、作業者のみでなくユーザーの方にもわかりやすく表現し、また、どんな部品を交換したのか、部品の名称や品番、単価といった明細を可能な限り詳細表記した伝票を発行するようにしました。

オーバーホール特集

器材の中身は見えない。だから伝えねばならない

ただ、全国にはオーバーホールをするお店がたくさんあります。
1店舗頑張ったところで、なかなかオーバーホールに対するマイナスイメージは払拭されません。

そこで、オーバーホールの作業現場から、様々な情報発信をしていきたいと思い、オーシャナの連載を引き受けることにしました。
器材の使用や管理にともなうプラスイメージのものはもちろん、マイナスイメージを増進させてしまう可能性のある被害事例も書いていこうと思います。

例えば、過去にオーバーホールされた器材を分解してみて明らかになったこと。
その器材に適合していない部品が取り付けされていたり、過去1年以内にオーバーホールした証であるシールが貼付されているにも関わらず、何年も前に製造終了して今はもうないはずの部品がそのまま入っているといった事例。

そのようなことを情報発信すればまたオーバーホールのイメージが悪くなってしまう、そう懸念もしたのですが、隠し続けることでは何も改善されない。
だったらありのままを包み隠さず書くことで、事実を広く知ってもらおう、それを続けていくことで被害が減ることに繋がるかもしれないと思いました。

器材の中身は見えない。
だから伝えなければ、お客様はわからないと思います。
お店に委ねるのみですよね。
だけど、決して受け身ではなく、環境をつくるのは私たちダイバーだと思います。

ぜひ、自分自身がよりよいサービスを受けれるように、器材のことやオーバーホールのことをもっと知っていただいたいと思います。

よりたくさんの情報を得て、厳しい目で判断し、選択をしてください。
そうすることで、選ばれる側は切磋琢磨し競い合い、結果、サービスの質は自然と向上していくと思います。

私は海に出るよりも作業現場にいることが多いです。
ですが海に出ることにこだわっているのは、オーバーホールをするのは器材を使うため、そして器材を使う場所は海だからです。
海で、みなさまの声を聞きたいのです。

昨年は宮古島の現地サービスで1カ月という短い間でしたが、現地スタッフの仕事を経験させていただいたり、小型船舶1級も取得しました。

偏った視点からの情報発信はしたくないので、今年も作業現場と海を行ったり来たりしながら勉強していきたいと思います。
私も学生の頃からダイビングを愛する一ダイバーなので、よりより環境が整うことを切に望みます。

そんな想いを込めて、作業現場より様々なレポートをしていきます。
ご一読いただけたら幸いです。

(画像提供:アイバディ)

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PROFILE
大学在学中、グアムで体験ダイビングをしたのを機にライセンスを取り、卒業と同時にダイビングの会社に就職。
その後、数店舗の都市型ダイビングショップで、スクールや器材販売、ツアーの企画・引率をし、2000年にインストラクターに。

数メーカーのメンテナンス講習を受けた後、ダイビング器材オーバーホール専門店「アイバディ」に10年間勤務。
現在はフリーインストラクターとして活動する傍ら、ダイビング器材・オーバーホールについて執筆活動中。

「器材の中身は見えない。だから伝えねばならない」がモットー。

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