ダイビングガイドの新局面。 急激に増す、ガイドという職業の法的リスクとは?

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4.ダイビング業界内ガイドライン作成の急務

こうやって書くと、まるで中田さんが敵のように思えてきますが、僕は中田さんをとても尊敬しています。
ダイビング界にただ一人存在するジャーナリストと言ってもよいかもしれません。

問題は、中田さんの論に対してカウンターとなるべきダイビング業界の論、あるいはガイドラインがなかったこと、そして、没交渉だったことではないでしょうか。

正直申し上げて、僕自身も中田さんのおっしゃることに賛同できない部分もあり、変えるべきは変えるのはもちろんですが、もっと議論を深め、ソフトランディグでいきましょう、と思っています。
しかし、なぜ中田さんのご意見がこうも劇薬のようになったのかと言えば、それは、ダイビング業界から受けた仕打ちに対する、執念にも似た思いだったのではないでしょうか。

いずれにせよ、俯瞰する立場にいる自分からすると、リスクと責任の配分がどうもバランスが悪いというのが印象で、ファンダイビングにおけるガイドラインを作る必要性を強く感じます。

昨年、H.I.S.のダイビングツアーと関わったとき、H.I.S.のダイビング担当者からダイビング業界内にガイドラインがないことに驚かれました。
旅行業界を取り巻く状況の中で、ガイドラインもないのにダイビングツアーをするわけにはいかないという話になり、それならばと識者を集めて、H.I.S.独自のガイドラインを作成することのお手伝いをさせていただきました。
安全なダイビングツアーを求めて~H.I.S.の新ブランド @グアム 前編~ | オーシャナ

現状に即していなかったり、現場にとって厳しめだったりと、いろいろな不満はあったものの、とにかく基準もないことには始まらないというのが、世間の常識ということでしょう。

台風直撃直後のブルーコーナーのツノダシ(撮影:越智隆治)

潜水(ダイビング)事故を起こして初めて知るリスク

以上、ご指摘したようなダイビングガイドのリスクは、事故を起こして初めてわかることなのかもしれません。
しかし、その時には、一生を棒に振るような罪を背負わされる可能性があるということです。

こういうと、一般ダイバーの側からは、「“背負わされる”というより、背負ってしかるべきなんじゃないの?」というご意見も出てくるでしょう。

もちろん、過失があれば、その職責に置いて罪は背負うべきでしょうが、その過失認定がダイビングガイドにとって厳しすぎる、バランスが悪い、というのが僕の印象です。

例えば、ガイドがエアに給気する指示をしなかったとか、目を数秒間離したとか、バディと離れた時に注意しなかったとか、自己責任を前提とすれば「知らんがな!」というはずだったことまで責任に問われる時代になってくる予感がしています。
今度の予感は外れてほしいと願っています。

ダイビングを知らない裁判官が判断する訴訟の現場。
弁護士の先生も「バディは手の届く範囲にいなければならない」金科玉条のように言われ、バディ同士が離れていたことも、ガイドの責任とされかねない状態を危惧なさっていますが、そこまでガイドが責任を負うのかどうかは、議論の余地があるでしょう。

潜水(ダイビング)事故や裁判が表面化しない現状、ダイビングガイドは自分たちの増加するリスクを認識しづらい状況かもしれません。しかし、

事故が起きてからでは遅いと思いませんか?

ダイビングガイドの新局面。 急激に増す、ガイドという職業の法的リスクとは?

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