トド!北海道積丹半島、幌武意 part1 かいじゅうのすむ海

Hokkaido / 北海道

北海道のウェブマガジン、第1弾はトド!

Text
寺山 英樹
Photo
越智 隆治
取材協力
Avii Wave(アビイウェーブ)
Special Thanks
商船三井フェリー、ゼムハウス
Design
Panari Design
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北海道のウェブマガジン、第1弾はトド!

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寺山 英樹
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越智 隆治
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Avii Wave(アビイウェーブ)
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この記事は約3分で読めます。

クライマックスは、何の前触れもなく訪れた

トド・ダイビング2日目は、青空高く、水面穏やかな絶好のコンディション。
港から5分、マッカ岬を回り込み、トドの通り道となる湾へ早速エントリー。

ゴロタを下り、水深15m付近の砂地の際でトド待ちしてみても、自分に大物運がないこともあり、まだどこか現実感がない。

待つこと5分。
早くも「本当に出るのだろうか……」と期待を不安が追い越しそうになり始めてきたその瞬間。

出た!

好奇心旺盛で、警戒しつつも自らダイバーに寄ってくる。上目遣いの瞳がキュート

好奇心旺盛で、警戒しつつも自らダイバーに寄ってくる。上目遣いの瞳がキュート

なんの前触れもなく登場した体長2mはあろうかというトドは、こちらを遠巻きに見つめながら徐々に距離を詰めはじめ、最後はカメラを覗き込むぐらい接近したかと思うと、プイっと踵を返して去っていたのでした。

これを皮切りに、2頭、3頭、3頭、1頭と次々とトドが姿を現し、その黒目がちでクリンとした瞳で、上目づかいにこちらを見つめては、去っていくという繰り返し。

いきなり訪れたクライマックス。
と思いきや、2本目はさらに圧巻。

今度はドリフトでトドの通り道を流していると、砂地の奥からトド、トド、トド。
なんと11頭の群れが、編隊を組んで目の前に登場!

猛スピードでこちらへやって来て、目の前でピタッと止まり、こちらの様子をうかがっているので、こちらがくるくる回転してみると、トドもマネしてく~るくる。

ボートの誘導と水中の位置取りの連携で、11頭ものトドの群れと遭遇

ボートの誘導と水中の位置取りの連携で、11頭ものトドの群れと遭遇

「アザラシやオットセイ、イルカ、ミンククジラ、シャチといろいろな海獣を見るけど、トドが一番友好的で知能も高い」と言われるように、好奇心旺盛で人間の真似をするほどの知性を持つトド。
分類学上、犬の仲間とされるのも納得。

そんなトドの群れを見て、越智カメラマンはオーストラリアのシーライオンを重ね、優しい気持ちになって顔がにやけていた様子。

「初めて海中で姿を見せたトドたちの、僕らに対して好奇心を寄せる滑稽な動きは、毎年のようにオーストラリアのパースに撮影に行くオーストラリアシーライオンとそっくりでした。
(あ~、オーストラリアシーライオンとそくりだ~、ゴールデンリトリバーみたいだ~)。
遭遇した直後には、そんな事を思いながら、冷たさも忘れて、ついつい顔がにやけてしまいました」

結局、この日は3本潜って3本ともトドと遭遇。
まさにこの日が取材班のThe dayとなったのでした。

ピンとした姿勢で、滑るように旋回するその姿はまるで海のワルツ

ピンとした姿勢で、滑るように旋回するその姿はまるで海のワルツ

準絶滅危惧種のトド

ダイバーにとっては可愛い存在でも、害獣としての駆除も盛んに行なわれ、今や世界で10万頭もいないトド。
アシカやアザラシなど、鰭脚類(ききゃくるい)と呼ばれる仲間の中でも絶滅が危ぶまれていて、今や準絶滅危惧種。

あまり可愛い・可愛くないと情動的に考えることは危険ですが、保全という意味でも、ダイバーを幸せにしてくれるという意味でも、トドの本来の姿を知り、伝え、観光資源としての価値を高めることがダイバーにできることなのかもしれない。

海獣カメラマン越智隆治の撮影後記

海獣類ってやっぱり魚よりも感情があって、海中で出会うとそれだけで、なんだか意思の疎通ができそうな気持ちになる。
優しい気持ちになれるんだよね。

もちろん「危険なのかもしれない」という警戒心も必要だけど、出会えると、なんだかやっぱり顔がにやけてしまう。
だから、海獣類撮影にハマってるのかもしれない。

今回の取材のおかげで、寒冷地の海獣類にも会いに行くきっかけがつかめたかなと思うので、今後はもっと広範囲に海獣類を求めて取材に行きたい。
それ以前に、また何度か積丹の海を訪れて、時間をかけてあのトドたちをしっかり撮影してみたいかな。

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