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鍵井靖章が追った生命の物語の写真集「ダンゴウオ 海の底から見た震災と再生」閲覧無制限

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水中写真

水中写真家・鍵井靖章さんの写真集「ダンゴウオ 海の底から見た震災と再生」が2013年2月28日に刊行されます。

震災直後に岩手県宮古湾の瓦礫まみれの海底で出会った、一匹のダンゴウオ。
その出会いに希望を託し、その姿を追いながら、灰色だった海が鮮やかな生命の色彩を取り戻す過程を2年間、定期的に撮影した写真集です。

鍵井靖章写真集「ダンゴウオ 海の底から見た震災と再生」

以下、この写真集のご紹介です。
そのご紹介の後に、オーシャナから鍵井さんに宛てた簡単なインタビューがあります。
ぜひお読みください!

写真集「ダンゴウオ 海の底から見た震災と再生」とは?

震災直後の2011年4月から2012年の12月まで、宮古湾を中心に瓦礫にまみれた海が少しずつ復活していく姿を定期的に撮影した写真集。

最初に潜った2011年4月、瓦礫が折り重なり、魚はおろか海藻さえも消え、生命の気配が途絶えた海中で、写真家は奇跡的に1匹のダンゴウオに出会った。
ダイバーたちに「北の海のアイドル」と呼ばれるダンゴウオは、親指の爪ほどの小さな魚。
たった一匹、海底にじっとうずくまるその姿は、写真家になにかを必死に伝えようとしているようだった。

その後、2年間、計10回の撮影の中で、ダンゴウオに出会えた機会は限られているが、2012年の6月、孵化の撮影に成功。
その撮影の模様は、日本テレビ「未来シアター」でも放映された。

前半は瓦礫に埋もれた海中が中心。
沈んだもの(人間の生活の残滓)に秘められたドラマを中心に追い、後半は芽生えた海藻、産卵する魚など、再生する生命の息吹を捉える。

ハイライトはダンゴウオの孵化。
天敵の貝に襲われるなど、自然界の厳しさも捉えつつ、生まれたばかりの愛らしい幼魚の姿を捉えた。

そして2012年12月、真冬の海で成長したダンゴウオの姿を撮影することに成功。海に生きるものたちのたくましさと、確実に再生してゆく海中世界を象徴するように、その表情は晴れ晴れと微笑んでいた。

もうひとつ、この写真集の見所は、2年間という長期にわたる撮影の中で移り変わってゆく写真家の心理がはっきりと窺えること。

最初は人間(瓦礫)のせいで海を汚されたことに対する生物たちの憤りを代弁したいと考えていた写真家が、瓦礫の中でたくましく生きる生物たちの姿に感動、共感し、そしてそれまでは写真の背景にしか過ぎなかった海藻にも生命の息吹を感じ始める。

もともと東北の海は、密漁を防ぐため、ダイバーには解放されていない。
そんな誰も見たこともない海のありさまを、撮影に協力してくれた漁師さんはじめ、地元の人たちに伝えたいという思いが強くなってゆく。撮影を続ける中で、これまで生態写真にはあまり興味を示してこなかった写真家が、真正面から海の再生に向き合う中で、「生命を撮りたい」と決意する。
折々の写真に添えられた文章からはもちろん、1枚1枚の写真が、彼の心の動きを如実に語っている。

「ダンゴウオ」というタイトルをつけていながら、写真集全体の中で、ダンゴウオの写真が占める割合は決して多くはない。
タイトルに偽りあり、と思う人がいるかもしれませんが、もし最初の撮影の日にダンゴウオに出会っていなければ、この一連の写真は、「海中世界から見た震災と復興」という視点だけになっていたかもしれない。
しかし、ダンゴウオに出会い、その姿に希望を見出し、潜るたびにダンゴウオを捜し求め、数少ない遭遇の機会を大切にして最大限、撮り続けたことで、写真集に一本のテーマをしっかりと通すことができた。

この写真集は、海底から見た震災と復興の物語であると同時に、津波の海で生きる生き物たちの「生命の物語」である。

鍵井靖章、一問一答インタビュー

水中写真家・鍵井靖章

この写真集は、鍵井さんのこれまでの作品(写真集・写真展を含む)の中でも特にメッセージ性が強いものかと思います。その写真集を出すにあたって迷いなどはありましたか?

震災以降、定期的に岩手県宮古市で撮影を続けてきました。
色んな出会いが重なって宮古市の方と交流が深まり、撮影する機会を作って頂きました。

最初は何か形にするということなんて考えられなくて、とにかく撮影を続けました。
そんな中、2012年6月にグラントスカルピンの佐藤長明、凡子ご夫妻の協力のもと、ダンゴウオの孵化を撮影することができたんです。

被災地の海で撮影を続けるうちに、テーマが色々と変化して、そのうち被災地の海で「命が撮りたい」となっていました。
無事にダンゴウオの孵化が撮影できたときに、一連の写真を形にしたいと思いました。
それは、「光」になると思ったからです。

どんな状況であれ、私たちは生きていかなくてはいけない。
その生きるための希望みたいなものを少しでも作れると思ったから。
決めてからは、迷うことなく、一気にここまで来ました。

震災直後の4月4日に宮古市の海底で、葉山NANAの佐藤輝さんが1匹のダンゴウオを見つけてくれた。
あのダンゴウオに出会った時点で、この未来は決まっていたのだと今は思います。

この一連の撮影と出版を経て、鍵井さんにとって東北や被災地というものはどういった存在になりましたか?

今回の撮影で東北の方には、大変お世話になりました。
大切な友人も出来たし、お手本となる紳士にも出会えた。
この写真集が終わりではないので、これからもお付き合いをしていきたいです。

写真的には、これまで夢のような世界ばかり写真を撮ってきましたが、やっと人と繋がることができる写真を撮ることができた。
誰かのために写真を撮る、そんなことを今回、教えてもらいました。

最後に、この写真集を最も届けたい人はどんな人ですか?

すべての人に見て貰いたいです。
この地球は人間だけか住んでいるのではない。
もう少し共に生きる他の生き物の存在に気付き、思いやりを持って生きてきたい。
そうすれば、もっと安全な世界ができるのではないか、というメッセージを込めて。

鍵井靖章さんの写真集「ダンゴウオ 海の底から見た震災と再生」は、2013年2月28日発売です!

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