Black Water Dive®Produced by Ryo Minemizu

ナイトダイビングの新スタイル
“ブラックウォーターダイブ®”

Black Water Dive®は、潮や時間、場所をよんだ上で、夜の海にライトを仕掛け、
そこに訪れるクラゲなどの浮遊系生物を観察するスタイルのダイビングです。
主役は、通常のダイビングで出会う生物とは異なる姿の幻想的な生物たち。
浮遊系生物を見つめてきた写真家・峯水氏がプロデュースする“新世界”へようこそ。

Situation シチュエーション

30個以上のライトで広い光の空間を作る

 水中ライトを手に夜の海を探索する通常のナイトダイビングとは異なり、複数の水中ライトで作り出したぼんやり青く光る空間で浮遊系生物たちとの邂逅を楽しむブラックウォーターダイブ®。ダイバーたちは、ゆらり、ゆらりと漂う浮遊系生物たちとともに中層に漂いながら、60〜90分間程度、観察・撮影に興じます。
 水深5〜15mほどの海底に仕掛けられるライトは、30個以上。水深や明るさによって出現する生物が変わるため、ライトは光の密度や角度を計算して仕掛けられています。

主役となる生物は昼の脇役たち

 このブラックウォーターダイブ®、実は開催地がものすごく限られます。浮遊系の生物は、例えどんなに性能のいいライトを使ったとしても、潮があたる場所でなければ出会えません(ただし、イカ・タコは別。出会う生物の中で光に集まる性質を持つものは2割程度)。そのため、峯水氏の長年の経験に基づいた綿密な調査ダイブのもとで行われています。
 日中は、透明な体で目につきづらかったり、沖合で暮らしている浮遊系生物たち。同じ海でありながら、昼と夜で違う生物と出会える不思議を体感しましょう。

Creatures 生物たち

浮遊系生物とは、海流に流されながら水中を漂って過ごすプランクトンのことを指します。ここでは、ブラックウォーターダイブ®で見られる代表的な生物を4種類に分けてご紹介します。数mmの微小な生物も無数に存在しますが、意外にも数cm〜数十cm以上のものも。観察するだけなら、老眼ダイバーでも大丈夫なのでご安心を。

※漂っている生物をクリック!生物のディティールと実物の大きさを見てみましょう。

01,稚魚

浮遊生活から着底生活へと移行する際に沿岸に寄ってくる沿岸魚の稚魚たち。まだ色もなく透き通り、親と似ても似つかない姿は見る者を虜に。また、めったに出会えない深海性の魚たちにも、表層で暮らす稚魚期なら沿岸で出会うことができます。数少ないチャンスです!

02,イカ・タコ

ライトの光に誘われて、普段は見ることがない外洋性のイカ・タコがやってきます。中には、ホタルイカモドキ類のような発光器を備えたものや、ユウレイイカ類やホウズキイカ類のような深海性のものまで。そして、それらを含むさまざまなイカ・タコ類の幼生も現れます。

03,クラゲやサルパ

ゼラチン質プランクトンの代表格であるクラゲやサルパなどは、出会える種類も多く、また、地域やシーズンごとに変化があります。さまざまな浮遊生物が生息するための拠り所として利用されることも多いです。夜間に活発に活動し、光に集まる性質の種類のクラゲもいます。

04,幼生

成体とは異なるユニークな姿形をしている幼生たち。エビ・カニなどの甲殻類やヒトデ・ウニ・ナマコなどの棘皮動物、ギボシムシなどの半索動物、浮遊性のゴカイ類、貝類、その他イソギンチャクなど、これらを含むさまざまな無脊椎動物の幼生に出会うことができます。

Story ストーリー

ブラックウォーターダイブ®に至るまで

 20年以上前、西伊豆・大瀬崎でダイビングガイドをしていた峯水氏は、夜の海に潜った際にライトの光に集まってくる生物がいることに気づきました。そこに集まってくる稚魚や幼生などの浮遊系生物の情報収集を地道に続け、また、撮影にも精を出していたそうです。「フィルムカメラでの撮影は容易ではありませんでしたが、カメラと水中ライトの飛躍的な進化に助けられました」とブラックウォーターダイブ®の黎明期を振り返ります。
 夜の海という環境下では、機材の性能がものをいいます。峯水氏がメインで使用しているライトは、水中の色を自然に再現することに長けたRGBlueのものです。「生物は明るいライトよりも自然光に近い“演色性”に優れたライトに寄ってきます」と生物の集まり方に違いがあることを実感しているそうです。

写真家・峯水亮の思い

 さらに、「だいたい最大光量の3/5(1500ルーメン程度)に調整しています。フル発光はさせず、“薄暗い”程度の空間を作るんです。闇に紛れて接岸する生物にとって、明るすぎる状況は必ずしもよくないでしょうから。また、同じ場所で行う際は、2ヶ月は空けます。ライトに生物が集まってくることを捕食者は学習するので」と生物、そして、生態系になるべくインパクトを与えないように配慮していることを教えてくれました。
「近年、マイクロプラスチック(微小なプラスチック粒子)による海洋汚染が話題にのぼるようになりましたが、かねてからビニール袋やプラスチック片が、浮遊系生物と一緒に漂っている様を見てきました。マイクロプラスチック同様に普段気づかないぐらい小さな生物たちも、この海を構成している一員です。この美しい浮遊系生物たちの姿が、自然環境に思いを巡らせるきっかけになることを願ってやみません」

  • 峯水 亮

Profile

峯水 亮(みねみず りょう)

西伊豆大瀬崎でダイビングガイド・インストラクター経験後、フリーランスフォトグラファーへ。著書に「世界で一番美しいイカとタコの図鑑」(エクスナレッジ)、「日本クラゲ大図鑑」(平凡社)など。2016年には、第5回日経ナショナルジオグラフィック写真賞グランプリ受賞。

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