Text Suika Tsumita
Edit Suika Tsumita, Tatsuya Nakamura
なぜ私たちはダイビングやシュノーケリングをするのか。
無重力感
美しいサンゴや不思議な地形などの景観
陸上では見られない生き物たちとの出会い。
答えはきっと、人それぞれだろう。
「海」という自然の中で遊ぶことは
日常とは違うことをたくさん感じさせてくれる。
しかし今、多くの海洋生物の住みかであり
重要な生態系の一部であるサンゴ礁が絶滅の危機に瀕している。
海を愛し、海で遊ぶ私たちにとって無関心ではいられない問題だ。
そこでもう一度、今できることは何か?
と立ち止まり、考えた時
サンゴを守るダイビング・シュノーケリングのベストプラクティス
「Green Fins」の実践、それに取り組むショップを選択することを私たちは推奨する。
今サンゴに起きていること
Green Finsのことを
海遊びの前に知ってほしい。
現在、世界中のサンゴ礁の約75%が絶滅の危機に瀕していると言われている。水温の上昇や海洋酸性化、そして乱獲や観光といった私たち人類の活動など原因はさまざまだ。世界資源研究所によると、このまま何も対策を打たなければ、2030年代までに90%以上のサンゴ礁が危機に晒されるとも。
サンゴ礁は地球の表面積のうち約0.1%しかない。しかし全世界の海の生き物の約4分の1の種類はサンゴ礁を住みかにしている。またサンゴ礁に棲む小さな生き物たちを餌に、中型・大型の魚も集まってくる。それは私たち人間にとっても豊かな漁場であり、ダイバー・シュノーケラーにとっては魅力的なポイントということ。The Nature Conservancyによるとサンゴ礁での経済効果は年間約1900万ドルとも言われている。それだけでなく防波堤として津波から守ってくれたり、新薬の開発に成分が使用されたりもしている。
食料、雇用、安全、遊び…サンゴ礁はさまざまな面から人間の生活にとって大切なものなのだ。
毎年、世界中で推定100万人の新しいダイバーが誕生しており、何百万人もの人がサンゴ礁でシュノーケリングを行っている。しかし、どんな行動がサンゴを傷つけてしまうのか知らずに楽しんでいる人も多いのではないだろうか。
サンゴを踏んだり蹴ったりしていないか?
魚に餌付けをしていないか?
ダイバーやシュノーケラーが増えるのは喜ばしいことだが、サンゴ礁を破壊しない遊び方を一人ひとりが理解し、実践していく必要があるのではないだろうか。
ダイバー・シュノーケラーが海遊びで守るべきルール
とはいえ、ダイバーやシュノーケラーがサンゴを守りながら遊ぶためには具体的にはどうしたらいいのか悩む人も多いだろう。そこで、「Green Fins」の行動規範やベストプラクティスに沿って海で遊ぶことが1番の近道と私たちは考える。「Green Fins」は、サンゴ礁への観光による脅威を減らすために、国連環境計画(UNEP)とサンゴ礁保全を行うリーフワールド財団が定めたダイビング・シュノーケリングの国際基準だ。
サンゴを守り、ダイビングやシュノーケリングを楽しめる環境を持続可能にするには、多くの人が意識して行動をする必要がある。ショップを運営する側ももちろん、ショップを選ぶ側も責任を持って選び、遊ぶことが大事だ。
Green Finsのルールや行動規範は、世界15カ国でその国の標準ルールとして導入されており、公式サイトでは、各国のGreen Finsの認定ショップを検索することができる。日本では沖縄県の恩納村から 2019年より導入、2022年よりダイビングショップの認定が始まっており、現在少しずつ認定店が増えている。
Green Finsの取り組みは、日本では恩納村からスタートしており、今後他の地域へ広がっていく予定だ。恩納村は、世界一、人とサンゴにやさしい村を目指し「サンゴの村宣言」を掲げている。サンゴを守ることで、そこに住む人々の産業(観光業や漁業)を発展させ、豊かな村を持続可能にしたいという想いがそこにはあり、その具体的な取り組みのひとつが「Green Fins」だ。村やダイビング事業者、漁業者、宿泊業が一体となり、訪れる観光客へサンゴの重要性や守り方を広げている。
サンゴはこの地球上に少なくとも約4億年前から存在しているという。つまり多くの地球の変化を乗り越え生き残ってきた生き物だ。しかしこれまでにないスピードでCO2の排出量が増え、気候変動など大きな変化が起こる現代。回復に時間がかかるサンゴがこの先も生存していくためには、少しでもサンゴへの脅威を減らさなければならない。私たちが行動を起こすことで未来にサンゴを残し、豊かな海を持続可能にするのだ。