慶良間諸島
Model & Text:Kaoruko Inou
Special Thanks:Marine House SEASIR Aka-Island
Edit:Naoko Machida
信号機0、騒音0、自然100――。
慶良間諸島は座間味村と渡嘉敷村からなることから、阿嘉島はいまだにその名を広く知られず、
慶良間諸島の一部だということさえ知らない人も多い。
知る人ぞ知る、シークレット島。
そんな秘密の島の海中は、生命力と躍動感、そして静寂で溢れていた。
ケラマブルーと呼ばれる透き通った海の底に、ぽつりと佇む根。
その根を覆い尽くすように群がる、パステルカラーのかわいいスズメダイたち。
近くで観察しようと近づくと、サンゴの隙間にシュッと入ってしまう、結構シャイな性格だ。しかし、根のそばでしばらく静かに待っていると、隠れていた小魚たちがふわっと湧き上がってくる愛らしい姿を見ることができる。
さまざまな生物の棲み家となるサンゴは、まさに生命を育む“ゆりかご”だ。生物多様性の宝庫は、ダイバーだけが覗ける特別な場所なのかもしれない。
阿嘉島を代表するポイント「ニシバマ」での風景。
島随一の美しいビーチ「ニシバマビーチ」の沖にあるポイントで、潮の流れも少なく、初心者も潜りやすい。
そこには穏やかな海に真っ白な砂地とサンゴの根が点在する、“This is THE慶良間”な風景が広がっていた。
ケラマブルーと呼ばれる透き通った海の底に、ぽつりと佇む根。
その根を覆い尽くすように群がる、パステルカラーのかわいいスズメダイたち。
近くで観察しようと近づくと、サンゴの隙間にシュッと入ってしまう、結構シャイな性格だ。しかし、根のそばでしばらく静かに待っていると、隠れていた小魚たちがふわっと湧き上がってくる愛らしい姿を見ることができる。
さまざまな生物の棲み家となるサンゴは、まさに生命を育む“ゆりかご”だ。生物多様性の宝庫は、ダイバーだけが覗ける特別な場所なのかもしれない。
阿嘉島を代表するポイント「ニシバマ」での風景。
島随一の美しいビーチ「ニシバマビーチ」の沖にあるポイントで、潮の流れも少なく、初心者も潜りやすい。
そこには穏やかな海に真っ白な砂地とサンゴの根が点在する、“This is THE慶良間”な風景が広がっていた。
今から約9000万年前。慶良間諸島だけでなく、沖縄列島もまだ陸続きだったころ。
現在のニューギニア付近で大規模な海底噴火があり、大東諸島の基盤(火山島)が形成され、プレートに乗り北へ移動しながら厚いサンゴ礁が形成された。
その後時を経て300万年前頃になると、陸地の一部は陥没。
今の久米島、宮古島などが誕生したことで島尻海ができ、反対に隆起したのが慶良間諸島誕生の始まりとされる。
阿嘉島はダイビングの途中にそんな“奇岩帯”も通ることから、海だけでなく陸からも、その歴史と力強い生命力を垣間見ることができる、とても興味深い島だった。
生 命 力Power
今から約9000万年前。慶良間諸島だけでなく、沖縄列島もまだ陸続きだったころ。
現在のニューギニア付近で大規模な海底噴火があり、大東諸島の基盤(火山島)が形成され、プレートに乗り北へ移動しながら厚いサンゴ礁が形成された。
その後時を経て300万年前頃になると、陸地の一部は陥没。
今の久米島、宮古島などが誕生したことで島尻海ができ、反対に隆起したのが慶良間諸島誕生の始まりとされる。
阿嘉島はダイビングの途中にそんな“奇岩帯”も通ることから、海だけでなく陸からも、その歴史と力強い生命力を垣間見ることができる、とても興味深い島だった。
取材に訪れる前、マリンハウスシーサー阿嘉島店の店長・三浦陽さんと話をしていると「とにかくサンゴを見てほしい。阿嘉島のサンゴは大復活を遂げているんですよ!」と言われた。
沖縄エリアのサンゴは海水温の上昇やオニヒトデなどにより、一時ほぼ壊滅状態にあったのは記憶に新しい。
しかし、今、慶良間の海で特筆すべきは“サンゴ”だという。
そう話を聞いていて、期待を胸に「屋嘉良(ヤカラ)」というポイントにエントリーした。
するとそこには、目を見張るほど生き生きとしたサンゴが、ところ狭しと生息していた。
太陽の光をたくさん浴びたいと大手を広げるテーブルサンゴ、その隙間を縫うように手を伸ばす枝サンゴ。
感動的な生命力を、阿嘉島で感じることができた。
取材に訪れる前、マリンハウスシーサー阿嘉島店の店長・三浦陽さんと話をしていると「とにかくサンゴを見てほしい。阿嘉島のサンゴは大復活を遂げているんですよ!」と言われた。
沖縄エリアのサンゴは海水温の上昇やオニヒトデなどにより、一時ほぼ壊滅状態にあったのは記憶に新しい。
しかし、今、慶良間の海で特筆すべきは“サンゴ”だという。
そう話を聞いていて、期待を胸に「屋嘉良(ヤカラ)」というポイントにエントリーした。
するとそこには、目を見張るほど生き生きとしたサンゴが、ところ狭しと生息していた。
太陽の光をたくさん浴びたいと大手を広げるテーブルサンゴ、その隙間を縫うように手を伸ばす枝サンゴ。
感動的な生命力を、阿嘉島で感じることができた。
慶良間といえば、ゆったりまったりのんびり、穏やかな癒しの海というイメージがある。
しかし、初夏の訪れを告げるキンメモドキやスカシテンジクダイの大群、さらにはイソマグロやツムブリなど大型回遊魚に出会える場所がある。
今回は海況に恵まれ、阿嘉島の大物系一番の人気のポイントに入ることができた。
そこには慶良間のイメージを覆す、躍動感に満ちたダイナミックな光景が広がっていた。
躍 動Dynamic
慶良間といえば、ゆったりまったりのんびり、穏やかな癒しの海というイメージがある。
しかし、初夏の訪れを告げるキンメモドキやスカシテンジクダイの大群、さらにはイソマグロやツムブリなど大型回遊魚に出会える場所がある。
今回は海況に恵まれ、阿嘉島の大物系一番の人気のポイントに入ることができた。
そこには慶良間のイメージを覆す、躍動感に満ちたダイナミックな光景が広がっていた。
マリンハウスシーサー阿嘉島店のポイントマップには、店長の三浦さんが厳選した「三浦セレクション」というカテゴリーがあり、大物ポイントやダイナミックなダイビングが楽しめるポイントもいくつか掲載されている。
その中でもおすすめなのが「下曽根(しもぞね)」。
下曽根の魅力は切り立った根の周りの豪快なドロップオフと、そこに流れてくる大物たち。
しかしこの下曽根、西表島のオガンのように、タイミングを合わせてエントリーすることが難しい。
そもそも、ポイントに向かえる天候なだけでもラッキーだといい、向かえたとしてもエントリーできるかはまた別の話。
下曽根を潜りたくて阿嘉島に通うゲストは後を絶たないという。
マリンハウスシーサー阿嘉島店のポイントマップには、店長の三浦さんが厳選した「三浦セレクション」というカテゴリーがあり、大物ポイントやダイナミックなダイビングが楽しめるポイントもいくつか掲載されている。
その中でもおすすめなのが「下曽根(しもぞね)」。
下曽根の魅力は切り立った根の周りの豪快なドロップオフと、そこに流れてくる大物たち。
しかしこの下曽根、西表島のオガンのように、タイミングを合わせてエントリーすることが難しい。
そもそも、ポイントに向かえる天候なだけでもラッキーだといい、向かえたとしてもエントリーできるかはまた別の話。
下曽根を潜りたくて阿嘉島に通うゲストは後を絶たないという。
4月末の取材時も、大物回遊魚に遭遇することができた。
まるで美しい編隊を組んで水中を飛んでいるかのようなイソマグロ。季節柄、鯉のぼりならぬ、マグロのぼりのように見えておもしろかった。
さらにはグルクンやツムブリの大群が、目の前を通り過ぎていく。ほかにも、ロウニンアジやマンタなどが出現することもあるそうだ。
ガイドの三浦さんも「一番好きなポイントです。阿嘉島滞在中に一度は行ってもらいたいですね!」と賞賛していた。
大物ポイントの中では一番人気の下曽根だが、カレントの強い時も多く、基本的には中〜上級者向けとされている。
具体的には経験本数100本以上、3ヶ月以上のブランクがないこと。個人的には万が一に備えて、フロートも上げられるとなお良いのではという印象だ。
4月末の取材時も、大物回遊魚に遭遇することができた。
まるで美しい編隊を組んで水中を飛んでいるかのようなイソマグロ。季節柄、鯉のぼりならぬ、マグロのぼりのように見えておもしろかった。
さらにはグルクンやツムブリの大群が、目の前を通り過ぎていく。ほかにも、ロウニンアジやマンタなどが出現することもあるそうだ。
ガイドの三浦さんも「一番好きなポイントです。阿嘉島滞在中に一度は行ってもらいたいですね!」と賞賛していた。
大物ポイントの中では一番人気の下曽根だが、カレントの強い時も多く、基本的には中〜上級者向けとされている。
具体的には経験本数100本以上、3ヶ月以上のブランクがないこと。個人的には万が一に備えて、フロートも上げられるとなお良いのではという印象だ。
海の中ではさまざまな音が聞こえるが、洞窟の中に入ると一変して音がしなくなる。
そんな風に感じたことはないだろうか?
本当は、音は同じように聞こえているのかもしれない。
しかし、天から降り注ぐ光、迷路のゴールでも示しているかのような光の出口に気を取られるからなのか、
いつも一瞬にしてその音が聞こえなくなってしまうのだ。
地形ポイントとして人気の「ウナン崎先端」の洞窟もまた、音のない静寂の世界で包まれていた。
夏の時期は光のシャワーがさらに美しく、多くのダイバーを魅了するポイントだ。
静 寂Silence
海の中ではさまざまな音が聞こえるが、洞窟の中に入ると一変して音がしなくなる。
そんな風に感じたことはないだろうか?
本当は、音は同じように聞こえているのかもしれない。
しかし、天から降り注ぐ光、迷路のゴールでも示しているかのような光の出口に気を取られるからなのか、
いつも一瞬にしてその音が聞こえなくなってしまうのだ。
地形ポイントとして人気の「ウナン崎先端」の洞窟もまた、音のない静寂の世界で包まれていた。
夏の時期は光のシャワーがさらに美しく、多くのダイバーを魅了するポイントだ。
真っ白い砂地もまた変わった音がする。しん―――とした音だ。
「ニシバマ」に潜った際、真っ白な砂地にぽっと置かれたようなサンゴと、その周りをくるくると回る子ガメに出会った。
逃げるわけでもなく、とどまるわけでもなく、ただくるくるくるくると人の周りを回った。
真っ白な砂地とサンゴ、そしてウミガメ。
「癒しの三大コラボそこが、逆に阿嘉島の特徴。わざと中層を泳いでみたりして、この特別な浮遊感を自分でも味わいますよ」と三浦さん。
私が潜ったときには少し曇り空ではあったが、それでもなお、沖縄エリアの中ではトップを争う美しさだった。
真っ白い砂地もまた変わった音がする。しん―――とした音だ。
「ニシバマ」に潜った際、真っ白な砂地にぽっと置かれたようなサンゴと、その周りをくるくると回る子ガメに出会った。
逃げるわけでもなく、とどまるわけでもなく、ただくるくるくるくると人の周りを回った。
真っ白な砂地とサンゴ、そしてウミガメ。
「癒しの三大コラボそこが、逆に阿嘉島の特徴。わざと中層を泳いでみたりして、この特別な浮遊感を自分でも味わいますよ」と三浦さん。
私が潜ったときには少し曇り空ではあったが、それでもなお、沖縄エリアの中ではトップを争う美しさだった。
復活を遂げた、色とりどりのサンゴの大群生。癒しの砂地に、音のない静かな洞窟。
「何にもしないために、ここに毎年数回帰ってくるんですよ」というリピーターの方と、今回話をする機会があった。
「何もない、何もしない。ダイビングが良いのはもちろんのこと、アフターダイビングは夕日を眺めて、天然記念物のケラマジカを見て、星を見て、本を読む。なんだかセレブな感じ、しませんか?」
確かに、ものすごい贅沢だ。
格別、阿嘉島の夕日はめちゃくちゃ美しかった。
普段の慌ただしさで忘れてしまっていた“何か”を、取り戻してくれた気がした。
復活を遂げた、色とりどりのサンゴの大群生。癒しの砂地に、音のない静かな洞窟。
「何にもしないために、ここに毎年数回帰ってくるんですよ」というリピーターの方と、今回話をする機会があった。
「何もない、何もしない。ダイビングが良いのはもちろんのこと、アフターダイビングは夕日を眺めて、天然記念物のケラマジカを見て、星を見て、本を読む。なんだかセレブな感じ、しませんか?」
確かに、ものすごい贅沢だ。
格別、阿嘉島の夕日はめちゃくちゃ美しかった。
普段の慌ただしさで忘れてしまっていた“何か”を、取り戻してくれた気がした。