秘匿のパプアニューギニア
マダン・キンベが魅せる底力
Model & Text:Kaoruko Inou
Special Thanks:Papua New Guinea Tourism Promotion Authority
Edit:Harumi Yamamoto
600以上の島々と800以上の部族をもつ、人種のるつぼパプアニューギニア。それぞれに固有の文化があり、言語がある。
子どもたちは、父親と母親が使う部族言語と公用語であるピジン語に英語など、複数言語を話す。
様々な部族や言語が共存していることが彼らの当たり前だ。
そんな彼らの住むエリアだからだろうか、海の中もまた、それが当たり前のように、様々な生き物たちが共存している。
ごちゃっと、しかし、それでいて心地いい。共存が生み出す、パプアニューギニアの奇跡の海を紹介していきたい。
パプアニューギニアの中でも比較的北に位置し、古くからリゾート開発の進むマダン。近年では日本人ガイドが常駐したことで、さらに日本人ダイバーには馴染みの土地になったことだろう。マダンリーフに囲まれた海は、穏やか。白砂は光り、特に浅瀬はターコイズのマダンブルーが美しい。ダイビングでは、レアなフーデッドカーペットシャークと出会ったり、一面に広がるキャベツコーラルの上を泳いだり、珍しい体験ができる。
パプアニューギニアの中でも比較的北に位置し、古くからリゾート開発の進むマダン。近年では日本人ガイドが常駐したことで、さらに日本人ダイバーには馴染みの土地になったことだろう。マダンリーフに囲まれた海は、穏やか。白砂は光り、特に浅瀬はターコイズのマダンブルーが美しい。ダイビングでは、レアなフーデッドカーペットシャークと出会ったり、一面に広がるキャベツコーラルの上を泳いだり、珍しい体験ができる。
世界で一番ホタルがきれいな村、これがキンべのリゾート周りの印象だ。首都ポートモレスビーから国内線に乗り換えて約1時間。ダイビングショップの入るワリンディプランテーションリゾートまでは、ホスキンス空港から車で約1時間の距離。パームオイル産業が有名で、あたり一帯には見渡す限りヤシの木が並んでいる。リゾート近くには最大級のホタルの生息地や、温泉の川もある。今回は、これまでに見たこともないようなバラクーダの大群に出会うことができた。
世界で一番ホタルがきれいな村、これがキンべのリゾート周りの印象だ。首都ポートモレスビーから国内線に乗り換えて約1時間。ダイビングショップの入るワリンディプランテーションリゾートまでは、ホスキンス空港から車で約1時間の距離。パームオイル産業が有名で、あたり一帯には見渡す限りヤシの木が並んでいる。リゾート近くには最大級のホタルの生息地や、温泉の川もある。今回は、これまでに見たこともないようなバラクーダの大群に出会うことができた。
生命の共存という言葉はよく耳にすると思うが、パプアニューギニアほど生き物が共存している海はないと何度訪れても感じる。
今回、取材に同行しているカメラマンの中村卓哉さんも「絶対にここでこれだけを見る!というのがない、ある意味すごく特徴的でおもしろい海」と語っていた。
マダン、キンべ、それぞれの共存を紹介していく。
“共存”が織り成す
類稀なる海中景観
生命の共存という言葉はよく耳にすると思うが、パプアニューギニアほど生き物が共存している海はないと何度訪れても感じる。
今回、取材に同行しているカメラマンの中村卓哉さんも「絶対にここでこれだけを見る!というのがない、ある意味すごく特徴的でおもしろい海」と語っていた。
マダン、キンべ、それぞれの共存を紹介していく。
まずは、マダンでも人気の高い、マジックパッセージとプラネットロックをご紹介しよう。
多岐にわたる種類のサンゴ、そして、サンゴに棲みつく魚、その上にウメイロモドキをはじめとする魚群……と、まるで重箱に詰められた正月の御節料理かのごとく、多種多様な生物が一箇所にひしめき合う。
マジックパッセージは水路になっており、島と島の間の流れのある場所に魚が集まる。
プラネットロックは船の真下水深約5mのところが“絵”になる。安全停止をする場所があまりにもフォトジェニックすぎて、30分以上その場に留まってしまった。
まずは、マダンでも人気の高い、マジックパッセージとプラネットロックをご紹介しよう。
多岐にわたる種類のサンゴ、そして、サンゴに棲みつく魚、その上にウメイロモドキをはじめとする魚群……と、まるで重箱に詰められた正月の御節料理かのごとく、多種多様な生物が一箇所にひしめき合う。
マジックパッセージは水路になっており、島と島の間の流れのある場所に魚が集まる。
プラネットロックは船の真下水深約5mのところが“絵”になる。安全停止をする場所があまりにもフォトジェニックすぎて、30分以上その場に留まってしまった。
ボミーが多いキンべ。ボミーとは隠れ根のことで、水面から見てもそこに根があるとわからないことが多く、魚にとっては都合のいい隠れ家だ。
根の上から人の大きさほどに成長した真っ赤なムチヤギは、時にはサンゴの間から伸びていることもある。
ヤギの周りには、小さな魚だけでなく、バラクーダのような大物海洋生物も遊びにくることもあり、“何と何を掛け合わせようか”という掛け算の撮影を楽しむことができる。
ボミーが多いキンべ。ボミーとは隠れ根のことで、水面から見てもそこに根があるとわからないことが多く、魚にとっては都合のいい隠れ家だ。
根の上から人の大きさほどに成長した真っ赤なムチヤギは、時にはサンゴの間から伸びていることもある。
ヤギの周りには、小さな魚だけでなく、バラクーダのような大物海洋生物も遊びにくることもあり、“何と何を掛け合わせようか”という掛け算の撮影を楽しむことができる。
まるで竜巻のように水中を駆け巡るバラクーダの群れ。正直こんな動きを見せた群れには初めて出会った。
なぜ彼らはここに集まるのか、何が彼らをそうさせるのか。
パプアニューギニアの中でも群れ、特に大物海洋生物の群れに遭遇できるエリアはとても貴重だ。
数、密度、動き……
“群れ”が見せる凄み
まるで竜巻のように水中を駆け巡るバラクーダの群れ。正直こんな動きを見せた群れには初めて出会った。
なぜ彼らはここに集まるのか、何が彼らをそうさせるのか。
パプアニューギニアの中でも群れ、特に大物海洋生物の群れに遭遇できるエリアはとても貴重だ。
マダンではセックパッセージ、キンべならブラッドフォードやキンベボミーが大迫力で魅力的だ。
エントリーすると、銀色のボディに太陽光を反射させたギンガメアジの大群も姿を見せたが、今回キンベボミーで出会ったバラクーダの大群は、私が過去にみたバラクーダの集合体の中でも群を抜いた迫力があった。
はじめ、彼らに遭遇したのは、水面にほど近い場所であった。大きな渦を巻きながら水深10mほどを回遊していたので、群れを割らないように中に入ってモデルとなり、中村カメラマンが撮影した。
突然、何かが起こったのだろう。
彼らは一気に水深の深いところへ潜っていってしまったが、次の瞬間海底で竜巻でも起きたかのようにどばーっと渦を巻きながら一気に何十mも浮上した。
人間ではついて行くことのできないスピードと水深の変化。はじめてのバラクーダの動きに、何度もパプアニューギニアに通う中村カメラマンも興奮を隠せない様子だった。
マダンではセックパッセージ、キンべならブラッドフォードやキンベボミーが大迫力で魅力的だ。
エントリーすると、銀色のボディに太陽光を反射させたギンガメアジの大群も姿を見せたが、今回キンベボミーで出会ったバラクーダの大群は、私が過去にみたバラクーダの集合体の中でも群を抜いた迫力があった。
はじめ、彼らに遭遇したのは、水面にほど近い場所であった。大きな渦を巻きながら水深10mほどを回遊していたので、群れを割らないように中に入ってモデルとなり、中村カメラマンが撮影した。
突然、何かが起こったのだろう。
彼らは一気に水深の深いところへ潜っていってしまったが、次の瞬間海底で竜巻でも起きたかのようにどばーっと渦を巻きながら一気に何十mも浮上した。
人間ではついて行くことのできないスピードと水深の変化。はじめてのバラクーダの動きに、何度もパプアニューギニアに通う中村カメラマンも興奮を隠せない様子だった。
パプアニューギニアでは、サンゴが生活に密着している。
目の前の海にサンゴがあるのが当たり前の環境で、彼らにとってサンゴは、わざわざ見に行くものではない。しかし、これこそが本当の豊かさなのだろう。
そのサンゴの生き生きとした姿は、訪れた私に“世界のサンゴのほとんどがここに生息しているのではないか”と思わせるほどだった。
尊さ宿る
“サンゴ”の群生
パプアニューギニアでは、サンゴが生活に密着している。
目の前の海にサンゴがあるのが当たり前の環境で、彼らにとってサンゴは、わざわざ見に行くものではない。しかし、これこそが本当の豊かさなのだろう。
そのサンゴの生き生きとした姿は、訪れた私に“世界のサンゴのほとんどがここに生息しているのではないか”と思わせるほどだった。
サンゴと一口にいっても世界には600~800種のサンゴがあるが、その中でも今回紹介したいのは、マダンのバナナリーフにあるキャベツコーラル(通称)。
エントリーすると水深10mを過ぎた頃からだんだんとキャベツコーラルが姿を現し、40m以上も深いところまでなだらかに続いている。こんなにキャベツコーラルの続いている海域ってほかにあるのだろうか、私はここまでの大群生は見たことがない。
中村カメラマンも「水深は深いけどいつまででもいたいと思ってしまう魅惑的なポイントでとても危険」だと語った。
サンゴと一口にいっても世界には600~800種のサンゴがあるが、その中でも今回紹介したいのは、マダンのバナナリーフにあるキャベツコーラル(通称)。
エントリーすると水深10mを過ぎた頃からだんだんとキャベツコーラルが姿を現し、40m以上も深いところまでなだらかに続いている。こんなにキャベツコーラルの続いている海域ってほかにあるのだろうか、私はここまでの大群生は見たことがない。
中村カメラマンも「水深は深いけどいつまででもいたいと思ってしまう魅惑的なポイントでとても危険」だと語った。
キンべのノースエマのサンゴは本当に素晴らしかった。
水深5mの海域にエダサンゴにテーブルサンゴと、様々なサンゴが所狭しと並んでいる。しかも全てのサンゴが、発色良く生き生きとしているのだ。
1ダイビングで隅から隅まで行くことは不可能だろう。浅瀬にも関わらずタンクの空気の方が先になくなってしまう……それほどまでに広域に渡ってサンゴが生きている。
ノースエマはパプアの中でも上位のお気に入りポイント。ぜひ潜ってもらいたい。
キンべのノースエマのサンゴは本当に素晴らしかった。
水深5mの海域にエダサンゴにテーブルサンゴと、様々なサンゴが所狭しと並んでいる。しかも全てのサンゴが、発色良く生き生きとしているのだ。
1ダイビングで隅から隅まで行くことは不可能だろう。浅瀬にも関わらずタンクの空気の方が先になくなってしまう……それほどまでに広域に渡ってサンゴが生きている。
ノースエマはパプアの中でも上位のお気に入りポイント。ぜひ潜ってもらいたい。
どこの海にでも、その海域にしか生息しない珍しい生き物はいる。
パプアニューギニアで近年有名なのは、「歩くサメ」として注目されている、フーデッドカーペットシャークだろうか。
今回、マダン・キンべと巡る中、ぜひ紹介したい生き物に数々出会った。
その中でも、格段気に入ったものを紹介していく。
パプアならではの
“レア”生物
どこの海にでも、その海域にしか生息しない珍しい生き物はいる。
パプアニューギニアで近年有名なのは、「歩くサメ」として注目されている、フーデッドカーペットシャークだろうか。
今回、マダン・キンべと巡る中、ぜひ紹介したい生き物に数々出会った。
その中でも、格段気に入ったものを紹介していく。
マダンでは、とても貴重なエポレットシャークの仲間、フーデッドカーペットシャークにも出会える。
このフーデッドカーペットシャークの見られる場所は、元ニューギニダイブアドベンチャーズの日本人ガイド・TAKA(山口高宏)さんが在籍当時、必死に発掘した秘密のエリアだ。
フーデッドカーペットシャークは夜行性のため、日が落ちて暗くなったころから私たちの前に姿を表す。見るには条件がいくつかあり、まず、人の生活域が近くにないことが条件のひとつ。とても臆病な性格だ。
今回は2日間フーデッドカーペットシャークを探し、1日目には驚きの15個体発見した。2日目には数は少なかったものの、おそらく世界でも希なフーデッドカーペットシャークと人とがかなり接近した2ショット写真を撮影することに成功した。
マダンでは、とても貴重なエポレットシャークの仲間、フーデッドカーペットシャークにも出会える。
このフーデッドカーペットシャークの見られる場所は、元ニューギニダイブアドベンチャーズの日本人ガイド・TAKA(山口高宏)さんが在籍当時、必死に発掘した秘密のエリアだ。
フーデッドカーペットシャークは夜行性のため、日が落ちて暗くなったころから私たちの前に姿を表す。見るには条件がいくつかあり、まず、人の生活域が近くにないことが条件のひとつ。とても臆病な性格だ。
今回は2日間フーデッドカーペットシャークを探し、1日目には驚きの15個体発見した。2日目には数は少なかったものの、おそらく世界でも希なフーデッドカーペットシャークと人とがかなり接近した2ショット写真を撮影することに成功した。
ブルーハンギングスポンジは聞いたことがあるだろうか。私自身は、今回初めて出会った生き物だ。
インターネットで画像検索をかけても1件も出て来なかった。つまり、普段ダイバーにはあまり着眼されないのかもしれないけれど、個人的には見ることをかなりおすすめしたい。
オーバーハングのところに暖簾状に垂れ下がっていて、その中を縫うようにして泳ぐのはとても楽しかった。撮影すると薄いブルーで少しおどろおどろしくも見えるかもしれないが、私には、とてもおしゃれに見えた。
ブルーハンギングスポンジは聞いたことがあるだろうか。私自身は、今回初めて出会った生き物だ。
インターネットで画像検索をかけても1件も出て来なかった。つまり、普段ダイバーにはあまり着眼されないのかもしれないけれど、個人的には見ることをかなりおすすめしたい。
オーバーハングのところに暖簾状に垂れ下がっていて、その中を縫うようにして泳ぐのはとても楽しかった。撮影すると薄いブルーで少しおどろおどろしくも見えるかもしれないが、私には、とてもおしゃれに見えた。
もうひとつキンべでおすすめしたいのは、ホタル。
陸上のものではあるが、正直これ以上すごいホタルは見たことがなかった。
山奥に棲むローカルの人の庭なのだが、途中から車のライトは一切消し、携帯の画面の明かりすらもつけてはならない。なぜかって、感動的なホタルを見るためだ。
秘密の場所に着くと、小さなペンライトが渡される。それをカチッカチッとつけたり消したりしていると、ホタルがライトにシンクロして、同じタイミングで光り始める。
気がつけば、大木についたホタルが、クリスマスツリーの電飾のように輝いていた。
それが、自然の森一面で光っているのだから、思い出しただけでも鳥肌が立つ。
また近くには、水温40度くらいの温泉の川がある。この2箇所は、キンべに行ったら絶対にリクエストしてもらいたいアフターダイビングのアクティビティだ。
もうひとつキンべでおすすめしたいのは、ホタル。
陸上のものではあるが、正直これ以上すごいホタルは見たことがなかった。
山奥に棲むローカルの人の庭なのだが、途中から車のライトは一切消し、携帯の画面の明かりすらもつけてはならない。なぜかって、感動的なホタルを見るためだ。
秘密の場所に着くと、小さなペンライトが渡される。それをカチッカチッとつけたり消したりしていると、ホタルがライトにシンクロして、同じタイミングで光り始める。
気がつけば、大木についたホタルが、クリスマスツリーの電飾のように輝いていた。
それが、自然の森一面で光っているのだから、思い出しただけでも鳥肌が立つ。
また近くには、水温40度くらいの温泉の川がある。この2箇所は、キンべに行ったら絶対にリクエストしてもらいたいアフターダイビングのアクティビティだ。
Supported
Walindi Plantation Resort(ワリンディプランテーションリゾート)
Madang Resort(マダンリゾート)
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