ニッポンの海と文化第1話

広島県 広島湾・宮島

~豊かな海藻の森に、神の島。すぐに帰りたくなる海~

オーシャナ代表であり、オーシャンコミュニティデザイナーとしても活躍する河本雄太と、水中写真家・鍵井靖章さん、中村卓哉さん、オーシャナカメラマンの坪根雄大が日本各地の海を旅して「日本の海の本当の魅力と価値、そして海から生み出された文化の素晴らしさを紹介していく」という企画「ニッポンの海と文化」。私たちの旅は、いよいよ広島県から始まる。今回のメインフォトグラファーは鍵井靖章さん。どんな海が、文化が、そして人々との出会いが待っているのだろうか。

  • 撮影:鍵井靖章、坪根雄大
  • ナビゲーター:河本雄太
  • 動画撮影:鈴木智美
  • 構成・文:山崎陽子
  • 編集:中西美樹
  • デザイン:田中佑季
  • 監修:中村竜也
  • 取材協力:L・M・マリン
  • 器材協力:(株)キヌガワ、(株)タバタ、ワールドダイブ(株)(五十音順)

「ニッポンの海と文化」の旅は、
世界で一番平和を願う広島から始まる

広島市内には6本の川がある。原爆ドームのある平和記念公園の脇にも川が流れている(撮影:鍵井靖章)

2022年9月に第0話としてスタートしたオーシャナの新企画「ニッポンの海と文化」。そして今回の第1話を皮切りに日本各地の海と文化を取材していくが、最初の旅先に河本が選んだのは、日本で最も大きな内海、瀬戸内海に面した広島県。広島県といえば、原爆ドーム、嚴島神社という2つの世界遺産を有し、多くの観光客が訪れる場所だ。しかしダイビングエリアとしては、広島周辺のダイバー以外には実はあまり知られていない。

ロシアのウクライナ侵攻で、戦争というものが目の前にある現実として突き付けられた2022年春。そんな世界情勢も鑑みたオーシャナ・河本は、5歳になる娘・陽海(以下、ひみちゃん)を広島へ連れていくことを決意。まだ幼い娘と、広島の地を共に旅することで、平和の大切さを少しでも伝えられればと思ったのだ。河本親子、水中写真家・鍵井靖章さん、オーシャナカメラマン坪根雄大たち取材チームは、第一回目のロケ地・広島へと旅立った。

ダイビングの目的地は、
ブルーカーボンで注目の
海藻豊かで穏やかな海、広島湾

)海藻が繁茂する「小黒神島」()ベタ凪の広島湾では、エントリーやエキジットも楽にできる(撮影:鍵井靖章)

河本や坪根はもちろん、日本各地を撮影している鍵井さんすらも「広島の海」は今回初ダイブ。正直、どんな海なのか、具体的なイメージはあまりない状態で取材へ向かった一行。広島に到着し、まずはダイビング取材へ。広島市内にあるダイビングショップ「L・M・マリン」の案内で、ボートダイビングへと出発。ボートはダイビングポイントのある小黒神島(こぐろかみしま)へ向かう。

春の広島湾は、穏やかなベタ凪だ。「台風が来ても、潜れないことはめったにないんですよ」とスタッフのサクラさん。エントリーしてみると、そこには何とも見事な海藻の森が。アカモク、ホンダワラ、ワカメの群生、浅瀬にはアマモ場が広がる。ちょうど2月頃から海藻が多くなる時期とのことで、最初の取材の4月上旬は海藻の最盛期だった。

ウミウシに生えもの、交接シーン…
シャッターを押す手が止まらない

一番上)アオウミウシのペアや(下段左下から二段目)ヒカリウミウシ、(中段左上から二段目)コウイカに(下段右一番下)ウメボシイソギンチャクと被写体豊富な広島湾。ウミシダなどの生えものも見られ、鍵井さんはマクロ撮影に熱が入る(撮影:鍵井靖章)

7月の広島湾では、
生命が躍動する産卵シーンに遭遇

「白石灯台」では、()スズメダイや(中央)マダコの卵を発見。()また「小黒神島」では、緑色の目がきれいなカエルアンコウが格好のモデルになってくれた(撮影:鍵井靖章)
まだ水温の低い4月の撮影では愛らしいスナビクニンと出会えた。メカブなどの海藻の上にいるので探してみよう(撮影:鍵井靖章)

季節によって変わる海の豊かさを感じたくて、4月のロケの後、再度7月に広島湾を潜ってみた。そこでは卵に水を送りお世話するスズメダイや、蛸壺の中に卵を産み付けているタコ、そして宝石のような目をしたカエルアンコウなど、さらにたくさんの生き物たちと出会うことができた。

「こんなにウミイチゴが群生してるの初めて見るわ!」
鍵井さんを驚かせた広島湾の海が持つポテンシャルの高さ

岩を覆うようにウミイチゴが群生している場所がある「小黒神島」。日本各地を潜って撮影している鍵井さんも、こんな風景はめったに見たことがないという(撮影:鍵井靖章)

広島市から潜りに行くエリアは、大小さまざまな島々が浮かぶ「広島湾」。瀬戸内海の一部ではあるが、その海の成り立ちは独特だ。太平洋や日本海に面したダイビングエリアと違い、ここの海は外洋からの潮流の影響を受けにくい。

海水の入れ替わりが少ないため、正直取材チームは海の透視度について不安を感じていた。潮の流れに乗って、大物や巨大な魚群が現れるといった機会は少ないかもしれない…。しかし4月と7月の2回にわたって潜り、撮影を行い、河本も鍵井さんもこの海の豊かさを実感した。海を彩る真っ赤なウミイチゴ、砂地ではツバクロエイがホバリングし、海藻の森にじっくり目を向ければたくさんの生き物たちがそこで暮らしている様子が見て取れる。これこそが日本の海ならではの豊かさ。最初のロケで取材チームはそれを肌身で感じることができた。

)「白石灯台」では、砂地にツバクロエイが隠れていた。河本が近づくと、砂地から浮き上がり、泳ぎ出していった。ツバクロエイが広島湾で見られるのは珍しいという()スズメダイの群れに「小黒神島」で遭遇。栄養豊富な広島湾は魚影も濃い(撮影:鍵井靖章)

取材チームが潜った
ダイビングポイント

広島市内に店舗を構える「L・M・マリン」では、広島湾への日帰りダイビングや1943年に沈んだ戦艦・陸奥を潜るツアーなどを行っている。今回、取材チームが潜ったのは広島湾のボートポイント。L・M・マリンから車で約20分の五日市港からポイントへ出発する。それぞれどんなポイントだったのか、見どころを紹介しよう。

  • 小黒神島こぐろかみしま
    (撮影:鍵井靖章)
    島周りに多数のポイントがあり、浅瀬から深場までさまざまな根が点在。岩でできたアーチやトンネルもあり、地形好きなダイバーにおすすめ。岩についたウミイチゴも見どころ。浅場は穏やかで、講習にも使われている。港から船で20~30分。
  • 白石灯台しらいしとうだい
    (撮影:坪根雄大)
    黒と赤のインパクトある灯台の周辺を潜る。2mくらいの浅場には海藻が多く、メバルの子どもやチヌ(クロダイ)などの魚の群れが見られる。たくさんの根があり、人が通れるほどの穴もある。港から船で30~40分。
  • しま
    (撮影:鍵井靖章)
    美しいビーチがある無人島の周囲を潜る。南の沖に向かって、アカモク、ホンダワラなどの海藻が繁茂。湾内にはアマモ場が広がり、イカや稚魚のすみかになっている。岩場ではウミウシが多く見られる。港から船で15~20分。

100万人都市の広島市から
1時間でダイビングポイントへ

「L・M・マリン」は自社ボートを所有。その日にベストコンディションのポイントに潜りに行ける(撮影:鍵井靖章)

今回、取材チームをアテンドしてくれたダイビングショップ「L・M・マリン」は、広島市の街中にある。初心者向け講習などを行う都市型ショップではあるが、毎日のようにファンダイブを開催していて、現地サービス的な活気にあふれている。都市型ショップと現地サービスの「いいとこ取り」をしているお店、という印象だ。訪れているゲストの皆さんを見ていると、自立してセルフダイビングを楽しんでいる方が多いのも特徴的。

河本は「100万人都市で、1時間以内でダイビングポイントへ行けるところって、限られているけれど、広島市はまさにその中の貴重な一都市」と言う。日帰りで2ダイブして、夕方早めには家に帰ってゆっくりできるなんて、とてもうらやましい環境だ。そして鍵井さんは「お店の方もゲストの方も、広島湾へプライドを持っていると感じた」と言う。

正直、大物狙いのポイントがあるわけでなく、透視度が良くないときもある。しかし潜っている皆さんが、本当にダイビングを心から楽しんでいる。手軽に行ける環境の良さ、そして和気あいあいとしたダイビング仲間の存在。広島市のダイビング事情は、とても恵まれていることを実感した。

LエルMエム・マリン

2022年で創立38周年を迎える老舗ダイビングショップ。広島市中区、広電小網町駅の目の前にあるのでアクセスもとても便利。オーナーの守家善治さん、店長の桜石季弥江(サクラ)さん、スタッフの前田晃子(ニモ)さんが初めてのゲストも温かく迎えてくれる。

広島市中区小網町3-16レ・モーリアビル1/2BF
広島市の中心街からやや南にある店舗には、アフターダイブにはゲストが集まり、和気あいあいとした時間が流れる
左から鍵井さん、「L・M・マリン」オーナー守家善治さん、河本(撮影:坪根雄大)
※さらに詳しいL・M・マリンのダイビング情報はこちら

日本唯一の海上社殿が鎮座する
“神の島”宮島へ

宮島へは、広島市街の宮島口からフェリーで10分ほどと近い。15分間隔で運航されているのでとても便利だ(撮影:鍵井靖章)

海の上に造られた嚴島神社があることで知られる宮島。宮島口からフェリーで島へ近づいていくと、島自体から何ともいえない神秘的なオーラが発せられているのを感じる。深い緑に包まれたこの島には、どんな出会いが待っているだろうか。

江戸時代から旅人が憧れた
日本三景・嚴島神社
「70年に一度の大鳥居の修理工事」
に出くわす

(上)潮の満ち引きによって、嚴島神社の風景や雰囲気は大きく変わる(下段左中央)朱塗りの柱が連なる廻廊を進みながら、参拝していく(撮影:鍵井靖章)(下段右)70年に一度の工事中の大鳥居も、旅のいい思い出になった。とは言え、鍵井さんはバッチリ大鳥居を撮りたかったに違いない…(撮影:坪根雄大)

「海に浮かぶ朱塗りの大鳥居」。嚴島神社と聞くと、その景観を思い起こす人は多いことだろう。時は飛鳥時代、6世紀末に創建されたこの神社は、1996年に背後に広がる弥山原始林とともに世界遺産に登録されている。取材チームは「ニッポンの海と文化」の初回ロケ、嚴島神社の大鳥居を撮りたいと思っていた。しかしなんと、「70年に一度の大鳥居の修理工事」が行われている最中だった。その工事は12月に終了予定とのこと。

しかし大鳥居は工事中でも、海の上に建てられた朱塗りの神社はフォトジェニックだ。カメラを片手にした鍵井さんは、約270m続く長い廻廊の途中のあちこちでシャッターを切る。波の音がかすかに聞こえ、潮風が吹いてくる。河本もあちこちで足を止め、その景色や空気感を味わっていた。

嚴島神社ゆかりの社寺を巡り、
悠久の時に思いを馳せる

嚴島神社の背景にそびえる五重塔。桜の季節は、特にフォトジェニック(撮影:鍵井靖章)

嚴島神社の参拝を終えた取材チームは、周囲に点在する社寺へと足を延ばした。豊臣秀吉が建立した豊国神社(千畳閣)、空海が開創した大聖院、高台に建つ嚴島神社五重塔、日本三大弁財天を祀る大願寺。大聖院では、河本と鍵井さんが願いを込めて蝋燭を奉納。河本の蝋燭には「ニッポンの海と文化」の成功を願う言葉。そして鍵井さんの蝋燭には「世界平和」の文字が…。

(左上)大聖院へ向かう階段の中央には筒状の車が付いていて、手で回しながら上がっていくと功徳が得られるという(中央上右上)大聖院の入り口・仁王門。参拝客を見下ろすように仁王様が立っている(撮影:坪根雄大)(右上中央)豊国神社に飾られた巨大絵馬。嚴島神社に奉納されたものだという(撮影:鍵井靖章)(下)大聖院で蝋燭を供える河本(撮影:坪根雄大)

豊国神社からは、嚴島神社を見下ろす風景画のような景観が印象的だったし、4月に訪れた際に見られた桜の花に彩られた五重塔はまさに絶景。日本らしい神社仏閣の建造物と、海、弥山の山々といった自然が織りなす美しい景色を、いつまでも眺めていたいと思った。

豊臣秀吉も眺めたに違いない、
嚴島神社を臨むこの風景

豊国神社からは嚴島神社や大聖院を一望できる。壁がなく、風通しのいい造りなので、海から吹いてくる風が気持ちいい(撮影:鍵井靖章)

観光地情報

  • 嚴島神社いつくしまじんじゃ
    厳島神社
    (撮影:鍵井靖章)
    飛鳥時代の593年に創建され、平安末期の1168年に平清盛が修造し、今の姿が完成。海の上に建てられた朱塗りの建物、海にそびえ立つ大鳥居は圧巻。1996年に弥山とともに世界文化遺産に登録された。宮島桟橋から徒歩約15分。
    廿日市市宮島町1-1
  • 豊国神社ほうこくじんじゃ千畳閣せんじょうかく
    豊国神社(千畳閣)
    (撮影:鍵井靖章)
    1587年に豊臣秀吉の命で建立した大経堂。建物には天井がなく、梁がむき出しになっている。神仏分離令により、秀吉を祀る神社となった。嚴島神社入口から徒歩3分。
    廿日市市宮島町1-1
  • 大聖院だいしょういん
    大聖院
    (撮影:鍵井靖章)
    空海が開創した弥山のふもとにある寺院で1,200年以上の歴史を誇る。境内では平清盛や豊臣秀吉も信仰したさまざまな仏像や石仏などを拝観できる。嚴島神社出口から徒歩10分。
    廿日市市宮島町210
  • 嚴島神社五重塔いつくしまじんじゃごじゅうのとう
    嚴島神社五重塔
    (撮影:鍵井靖章)
    1407年に建立された、和様と唐様を巧みに調和させた建築様式の塔。桧皮葺きの屋根と朱塗りの柱や垂木のコントラストが美しい。高さは約28m。外観のみ見学可能だ。嚴島神社入口から徒歩3分。
    廿日市市宮島町1-1
  • 大願寺だいがんじ
    大願寺
    (撮影:鍵井靖章)
    明治期まで嚴島神社の修理や造営を担ってきた由緒ある真言宗の寺。神仏分離令によって嚴島神社から還された嚴島弁財天が安置されている。入堂は不可。嚴島神社出口からすぐ。
    廿日市市宮島町3

宮島をぶらり散策し、
水中写真家・鍵井靖章が
海の魅力に目覚めた水族館へ

)4月に最初のロケで宮島を訪れた際、あちこちで桜の花がきれいに咲き誇っていた(中央)表参道から一本路地に入ると、とても静かだ(撮影:鍵井靖章)()宮島の鹿たちは観光客を怖がらない。カメラを向けても、堂々たる態度だ(撮影:坪根雄大)

神社仏閣をひとしきり巡った後は、宮島をぶらり散策することに。歩き始めると、いつの間にか鹿が真後ろに来ていて、筆者が手にしていた地図がかじられる(笑)。宮島には約500頭の鹿が生息していて、約200頭は街中で暮らしているという。あちこちで見られる鹿たちは、観光客をものともせず、落ち着いていて風格がある。

まずは宮島のメインストリート・表参道商店街へ。名物のもみじまんじゅうやあなご飯、牡蠣(かき)を食べさせる店が立ち並ぶ。またジェラート専門店や宮島珈琲の店など、足を止めたくなるスポットがいっぱいだ。もみじまんじゅうやジェラートで小腹を満たし、しばし休憩タイム。

「瀬戸内のくじら」の展示水槽では、スナメリが優雅に泳ぐ。河本の娘・ひみちゃんも、かわいいスナメリに興味津々(撮影:鍵井靖章)

そして今回、ある理由からぜひ訪れることにしていた場所があるので、そこへと向かう。「宮島水族館みやじマリン」だ。ここは鍵井さんが子どもの頃訪れて、海への興味をもつきっかけになった場所だというのだ。「展示室の後ろ側に入って見たサメが印象的だったんだけど、同じ場所を見られるかな?」と鍵井さん。期待に胸を膨らませて水族館へ向かう。

残念ながら建物は建て替えられ、鍵井少年が訪れた頃とはまったく造りが変わってしまっていた。しかし改装前から勤務しているという主幹の三浦和伸さんが館内を案内してくださって、瀬戸内海にすむ海の生物などの展示をじっくり楽しむことができた。

観光地情報

宮島水族館みやじマリン

(写真提供:宮島水族館)
(撮影:坪根雄大)

瀬戸内海の生きものを中心に380種15,000点以上を「いやし」と「ふれあい」をコンセプトに展示。牡蠣の養殖いかだを再現した展示など、宮島ならではの水槽も。海獣エリアではペンギンをはじめ、トドやアザラシ、コツメカワウソなど愛らしい動物が見られる。ライブプールでは毎日アシカライブを開催。

廿日市市宮島町10-3

海遊びが好きすぎて宮島に移住した
「メイドイン宮島」の職人に出会う

「宮島帆布」では縫製もすべて沖野さん一人で、ミシンがけして行っている(撮影:鍵井靖章)

宮島の文化を感じたくて、取材チームは宮島ならではの工芸品を取材することに。表参道商店街の土産物店でもさまざまな工芸品が手に入るが、実際に作っている工房を訪ねたいと思い取材に伺ったのが路地裏にある「宮島帆布」。古民家をリノベーションした店内に入ると、帆布職人の沖野比呂海さんが出迎えてくれた。

)ちょうどいいサイズ感のミニトートバッグは一番人気がある。3,500円。キーリングは手軽なお土産にぴったり。800円(中央右上)宮島の風景が彫り込まれた宮島彫りの逸品。宮島桟橋の目の前に建つ「宮島伝統産業会館みやじまん工房」で見学可能。ここでは杓子づくりや宮島彫り体験もできる(要予約)(右下)宮島の定番お土産の杓子もいろいろな素材のものが販売されている(撮影:坪根雄大)

デザインから縫製まで沖野さんが一人で作るという一点もののトートバックやポーチなどは、シンプルなデザインときれいな色の生地が特徴的だ。もともとは家具デザイナーだったという沖野さんは、故郷の広島に戻ってきてから縫物を始めたという。店内にSUPのボードがあるのを見つけて河本が「海遊び、お好きなんですか?」と声をかけたところ、「宮島の人は海遊びをするのが当たり前だし、それくらいしか遊ぶことないでしょ(笑)」と沖野さん。

裏庭に作られたバースペースで語りあう沖野比呂海さん(左)と河本(撮影:坪根雄大)

「裏庭に仲間が集まって飲むバーがあるんですよ。夜、飲みに来ませんか?」と声をかけていただき、取材を終えた河本たちは夜に再度訪問。居心地のいい空間で、まったりと日本酒を酌み交わし、気がつけば宮島の夜はどっぷりと更けていた。

店舗情報

夜のとばりがおりてきて
雰囲気を変える嚴島神社は、
宮島に泊まってこそ出会える景観

嚴島神社は日没30分後くらいから午後11時まで、大鳥居、社殿、五重塔、多宝塔、参道及び西松原沿いの石燈篭などがライトアップされる。今回、取材チームは宮島に1泊したのだが、日帰り観光ではなかなか味わえない夜の宮島の厳かな空気感が心地良かった(撮影:鍵井靖章)

日本庭園が美しい
「宮島の海遊びの達人」が
もてなす宿に出会う

腹ペコで訪れた取材チームにあなご飯弁当をふるまってくださった「石亭」の支配人、上野純一さんと河本、鍵井さん。鯉が泳ぐ池もある日本庭園は、最高に居心地が良い(撮影:坪根雄大)

宮島へはフェリーで手軽に行けるので、広島市内の宿に滞在して、日帰りで訪れる観光客も多い。しかし見どころ豊富な島なので、泊りがけでゆっくり訪れることをおすすめしたい。というわけで、取材チームは、宮島への拠点に良い宿はないかと事前にリサーチ。2軒の宿を取材することにした。

まず1軒目が、宮島の対岸、宮浜温泉に位置する「庭園の宿 石亭」。緑豊かな日本庭園が特徴的な上質な旅館だ。取材チームが訪れると、支配人の上野純一さんが出迎えてくださった。「まずは旅でお疲れでしょう。うちのあなご飯を食べますか?」。朝から慌ただしく撮影に没頭し、昼ご飯を食べていなかったこともあり、「食べたいです!」と口を揃えて言う。木箱に入ったあなご飯弁当は、冷めても深い味わいがあり美味しい。かき込むようにいただきながら、上野さんのお話を伺う。

上野さんのご先祖は、旅館を営む以前に、明治30年から「上野商店」というあなご飯弁当の店をやっていたそうだ。上野さんで4代目になる。石亭はお父様が造られ、20年経ったタイミングで30歳の時に上野さんが引き継いだそう。「どうせやるなら楽しみながらやりたいから、隠れ家などを造り、遊び心のある宿を目指しているんです」。そしてさらに上野さんとお話ししていると、とても海好きな方であることがわかった。ご自分で船を出し、時間があれば海に出て、いつも海遊びを考えているという上野さんと河本は意気投合。話は尽きることがなかった。

そして2軒目は、宮島の表参道商店街に面して建つ「錦水館」。海側の客室からは瀬戸内海が眺められて、絶好のロケーションだ。大正時代には魚の卸問屋を営んでいて、そこに魚を卸しに来る漁師たちが泊まるようになったのが、旅館となるきっかけだったという。どちらも歴史の流れを受け止め、変化しながら発展を遂げてきた宿だということがわかった。

宮島周辺での滞在におすすめしたい宿

宮島や宮島対岸には温泉宿や老舗旅館、ゲストハウスなどさまざまな宿泊施設がある。中でも取材チームが訪れて、おすすめしたいと思った宿を紹介しよう。

  • ● 日本庭園と温泉に癒される
    庭園の宿 石亭せきてい

    宮島の対岸、宮浜温泉にある旅館。2000坪の敷地を有し、春は桜、秋は紅葉と四季折々の自然を楽しめる庭園が特徴的。庭園からは宮島と瀬戸内海が望め、背後には経小屋山(きょうごやさん)がそびえる。庭を囲むように本館3室、離れ7室、東屋2室の客室が配置されているが、それぞれしつらえが異なり、全室に檜の内湯が付いている。

    廿日市市宮浜温泉3-5-27
    (左)温泉は露天風呂と檜の内湯が用意されている。宮浜温泉は昭和39年に開湯され、宿の背後の山から引かれているそう(右)上野支配人がふるまってくださった「あなごめしうえの」のあなご飯弁当。宮島口に店舗があり、そこでも購入できる(撮影:坪根雄大)
  • ● ワーケーションにも最適
    錦水館きんすいかん

    宮島では数少ない天然温泉がある宿で、客室タイプも豊富。2022年7月にはルーフトップテラス「宮島テラス」が誕生。瀬戸内海、嚴島神社の大鳥居、宮島の町並みが一望できる。また館内には宮島唯一のブックカフェがあり、ここではネットも自由に使えるのでワーケーションしたい人にもおすすめの宿だ。

    廿日市市宮島町1133
    (左)ブックカフェには館主が集めた宮島に関する本や最新の話題作まで、さまざまな本が。ネットが自由に使え、フリードリンクのサービスもある(右)客室のタイプは豊富で「半露天温泉付特別室」では、半露天風呂から瀬戸内海の眺望を楽しめる(撮影:坪根雄大)

キッチン付きの宿での料理は旅の新定番
「NUB飯」で仲間と味わう至福のひととき

(左)河本の包丁さばきに鍵井さんがアドバイス。鍵井さんは自分のツアーでも、よく現地で調理をするそう(右)瀬戸内海産の魚介類を使ったアクアパッツァを作る鍵井さん。手際よく料理が出来上がっていく(撮影:坪根雄大)

旅の大きな楽しみであり、土地によって異なる食文化を体感できるのが旅行中の食事だ。現地の方におすすめの食事処を教えていただいたりすることでも、地元の味を味わうことはできる。しかし「ニッポンの海と文化」の取材では、地元の方が食べているものやお土産として自分たちが買ってみたいと思うものを現地で食べてみよう。河本のそんな提案から、キッチン付きの宿に泊まり、自炊する日を設けることにしてみた。名付けて「NUB飯」。「ニッポンの海と文化(Nippon no Umi to Bunka)」の頭文字を取ったネーミングだが、広島ロケで早速チャレンジしてみることに。

取材チームは市場やスーパー、土産物店、そしてデパ地下を巡り、さまざまな食材をゲット。ダイビング取材から帰ってきた河本、鍵井さんが早速キッチンに立ち、調理を始める。「野菜はもっと細かく切ったほうがええよ」と、鍵井シェフが河本にアドバイス。そう、水中写真家・鍵井靖章は、実は料理上手なのだ。鍵井さんと河本の2人がキッチンでやり取りしている様子は、なんだかとても新鮮だった。

今日出会った風景、潜った海、
そして仲間に乾杯!

鍵井さんと河本は2度目の広島ロケということで、すっかり打ち解けた雰囲気に。まさに「同じ釜の飯を食う」ことで、人と人の絆は深まっていくのだと実感(撮影:坪根雄大)

今回の取材チームは7人の大所帯だったので、料理の種類も量もかなりのボリュームに。初めて広島を訪れるメンバーも多かったことから、「広島と言えばこれ」と思いつく食材をあれこれと集めてみた。メインは広島牛のステーキ、殻付き牡蠣を蒸したもの。瀬戸内海産魚介類のアクアパッツァ、広島産の野菜のバーニャカウダー、イサキの刺身。主食には牡蠣の炊き込みご飯、広島菜の豆乳レモンパスタ。そのほかにも牡蠣のレモン漬けや広島産イワシのオイルサーディンなどのお土産物も、パッケージから出してお皿に盛りつけてみる。メニューを書き連ねると、手間がかかっている印象があるかもしれない。しかし実際には、どれも買ってきた食材にひと手間かけただけで、簡単にできるものばかり。

料理が出そろったところで、まずはビールで乾杯。2杯目、3杯目には、広島産の日本酒「酔心」や「奏(かなで)」を味わう。料理の中で特に皆が喜んでいたのが、殻付き牡蠣。これは宮島口のフェリー乗り場の土産物店で購入したものだが、冷凍された牡蠣が5個入り800円ととてもリーズナブル。電子レンジでチンするだけで、プリプリで香りもよい牡蠣が楽しめる。

「この牡蠣、お土産に買いたくなるおいしさだね」「バーニャカウダーはちょっと焦がし過ぎた!?(笑)」など皆で品評しながら、次々と料理を平らげる。翌日はまた朝からダイビング取材があるので深酒はせずに解散となったが、鍵井さんと一緒に広島の味を楽しみながら語らうひとときは、とても楽しく貴重な時間だった。

広島での「NUB飯」
~取材チームが舌鼓を打った簡単手作り料理の紹介~

今回は土産物屋や広島市内のデパ地下やスーパーなどで、食材を調達。東京に比べて物価は安く、魚介類はもとより肉類や野菜類も素材そのものが新鮮でとても美味しかったのが印象的だった。

  • ● 蒸し牡蠣
    殻付きの冷凍牡蠣をレンジで加熱。殻が開き、中から旨味の詰まったプリプリの牡蠣が出てくる。ポン酢をかけてそのまま食べるもよし、牡蠣ご飯にトッピングしてもよし。
  • ● 広島産魚介類のアクアパッツァ
    デパ地下で見繕った魚介類を、シンプルに塩とレモン、オリーブオイルとにんにくで味付け。瀬戸内レモンもたっぷり添える。素材のおいしさが秀逸だった。
  • ● イサキの刺身
    こちらもデパ地下にて購入。鍵井さんが「ダイビング中にこの時期、イサキが増えたなと思った」と言われていたが、旬の魚はやはり文句なく美味だ。
  • ● 広島菜の豆乳レモンパスタ
    広島名物・広島菜が入っている豆乳レモン味のパスタソースを土産物店で購入。パスタを茹でて、温めたソースをかけただけだが、なかなかのお味。
  • ● 広島牛のステーキ
    こちらの肉は、デパ地下の肉売り場で購入。販売員のおばちゃんに、ちょっとサービスしてもらったが、適度に脂がのっていてシンプルに塩で味付けしただけで、大満足の一品。

アフターダイブは路面電車に乗って、
広島市内の名所を散策

広島市内を走る「広電」と呼ばれる路面電車は、市民の足。車両はいろいろなタイプがあるが、やはり絵になるのはレトロな昔ながらのデザインだ(撮影:鍵井靖章)

広島市内のショップを拠点にダイビングを楽しむなら、アフターダイブは見どころいっぱいの広島市内の観光を楽しみたい。ボートダイブで2ダイブ潜っても、午後3時前には市内の宿に帰って来られる。原爆ドーム、縮景園などの主要観光スポットへは、情緒あふれる路面電車で行くのが便利だ。

広島に住む人たちから
歴史や文化の話を聞いたら、
この街がもっと好きになった

(左)ちょうど桜が満開の時期に広島を訪れた取材チーム。広島城と桜が織りなす風景がとても印象的だった(右)被ばくの惨禍を今に伝える原爆ドーム。間近で見ると、むき出しになった鉄骨や折れ曲がったらせん階段、崩れたレンガなどにひたすら圧倒される(撮影:鍵井靖章)

今回、広島へは2回ロケに行っているが、4月に初めて広島を訪れた取材チームは、まずは広島城、原爆ドームのある平和記念公園などの市内の主要観光スポットを訪れてみることに。これらの場所は、ボランティアガイドによる説明を受けられると知り、柴田武志さん(以下、たけちゃん)に同行をお願いする。

まずは桜の花に彩られた広島城へ。「お城と桜が咲いた感じが合わさって、すごくいいですね」と河本。「広島城は、広島県民にとって誇りなんですよ」とたけちゃん。天正17(1589)年、戦国武将の毛利輝元が築いたこの城は、原爆投下により天守閣が全壊する被害を受けた。しかし昭和33(1958)年に外観が復元された。城を囲むお堀には鯉が優雅に泳いでいる。広島城は別名「鯉城(りじょう)」と呼ばれるが、もともとはこの一帯が「己斐浦(こいのうら)」と呼ばれていたことが由来だとか。広島県民が愛してやまないプロ野球球団・広島東洋カープの「カープ=鯉」も、もちろんこの広島城の鯉から取られている。

二の丸の近くには、被ばく樹木のユーカリの木がある。爆心地から約740mの距離、二の丸の建物が炎上する中で生き残った貴重な樹木だ。「被ばく樹木の根の張り方に注目してください」とたけちゃん。被ばくによって細胞が壊されていて、根っこが弱っている方が原爆が投下された位置を指しているという。77年の歳月が経っても、未だ原爆投下の爪痕はひっそりと残り続けていることがわかる。

)ガイドのたけちゃん〈右〉のユーモアも交えた話で、広島の見どころや魅力をたくさん教えていただけた()坪根カメラマンが気に入った日本庭園・縮景園(しゅっけいえん)。四季折々の花、秋の紅葉が見事な癒しスポット。広島城から徒歩10分で行けるので、足を延ばしてみては(撮影:坪根雄大)

戦争が世界の多くの場所で
起こっている今こそ、
改めて平和への祈りを捧げたい

一行は原爆ドームへと移動。ドーム型の建物のむき出しになった鉄骨は、原爆投下による爆風や炎がいかに凄まじいものだったのか一目見ただけでわかり、胸に迫るものがある。たけちゃんは数少なくなりつつある戦時中を生きてきた方たちや、被ばく者の方たちの体験談をまとめているという。そしてその貴重な話を私たちに聞かせてくれた。

)平和の鐘をつく河本の娘・ひみちゃん。子どもたちの世代にも平和を願う想いを伝えたい。河本のそんな想いはきっと伝わったことだろう(中央右上)原爆死没者慰霊碑(広島平和都市記念碑)からは、原爆ドームが臨める。常に献花が途絶えることがない()原爆ドームに隣接する複合商業施設・おりづるタワーからは、平和記念公園や広島の街を一望できる(撮影:鍵井靖章)

1945年8月6日午前8時15分、アメリカ軍による人類史上初の都市に対する核攻撃。この攻撃により、当時の35万人と言われる広島市民のうち、約14万人が1945年12月末までに亡くなった。海外から日本に移り住んでいた人たちを加えると、原爆死没者の数は30万人を超える。当時植民地だった朝鮮や台湾、中国大陸からの人々など、さまざまな人たちが尊い命を一瞬の核攻撃で落としている。

「広島の方たちは、被ばくという体験を乗り越えてきているからか『生きる』ということに前向きなエネルギーを感じる」と河本は言う。平和記念公園を訪れることで、私たちは日本人として絶対に忘れてはいけないことを、改めて記憶に刻むことができた。地球のさまざまな場所で、今、この瞬間も起きている戦争。平和を実現することは、とても難しい。しかし諦めずに一人ひとりが平和を心から願うこと。そしてその思いを、未来を担う子どもたちに伝えていくこと。そのことが大切なのではないかと、強く感じた。

観光地情報

  • 広島城ひろしまじょう
    (撮影:鍵井靖章)

    1589年に毛利輝元が築城した「鯉城」とも呼ばれる城で、日本100名城®の一つ。原爆で倒壊した天守閣は復元され、現在は甲冑や刀剣などを展示する博物館として公開されている。

    広島市中区基町21-1
  • 平和記念公園へいわきねんこうえん
    (撮影:鍵井靖章)

    原爆投下により焦土と化した街を6年の歳月をかけて整備し、1955年に恒久平和を祈念する公園が完成。原爆ドーム、広島平和記念資料館のほか、60を超える慰霊碑や施設が点在する。

    広島市中区中島町1及び大手町1-10
  • 縮景園しゅっけいえん
    (撮影:坪根雄大)

    広島浅野藩の初代藩主・浅野長晟(ながあきら)が元和6(1620)年に別邸の庭として築いた。池を中心に小山や橋、茶室が配された池泉回遊式庭園。梅や桜、紅葉など四季折々の景観が楽しめる。

    広島市中区上幟町2-11
  • おりづるタワー
    (撮影:鍵井靖章)

    原爆ドームに隣接する複合商業施設。折り鶴をモチーフにしたデジタルコンテンツの体験スペース「おりづる広場」、カフェや広島の物産館なども充実。屋上展望台「ひろしまの丘」からは広島の街を一望できる。

    広島市中区大手町1-2-1

ダイビングショップとの打ち上げは
「会いに行きたくなる女将」
がいるお好み焼き屋へ

左上)尾道出身の女将は、昭和50(1975)年からお好み焼き屋をやっているという。この道50年近い大ベテラン(右上上から二段目)左から順にL・M・マリンのサクラさん、鍵井さん、ニモさん、河本(左下下から二段目)鉄板焼きもおつまみにおすすめ。青ネギたっぷりで、とても美味しい(右下)広島のお好み焼きは、生地と具を混ぜずに、どんどん重ねながら焼いていく。麺が入っているのがデフォルトで、食べ応えがある(撮影:坪根雄大)

広島で、河本をはじめ、取材チームがとても気に入った店がある。それが広島市の中心部・新天地にあるお好み焼き屋「水軍」だ。水軍はたくさんのお好み焼き屋が集まる「お好み村」の中、その一番奥に店を構える。カウンターメインのお世辞にも大きな店とは言えない広さだが、とにかくここの女将が魅力的なのだ。最初に「水軍」を訪れたとき、鍵井さんが女将に「水軍の名前は“村上水軍”の水軍からきているんですか?」と聞く。「おにいさん、よく知ってるわね!そうなの」と女将。村上水軍とは、中世の瀬戸内海で活動していた海賊衆。お店の女将は村上水軍の血を引くそうで、店名を水軍にしたという。

その後、ロケでお世話になったダイビングショップ「L・M・マリン」のスタッフ、サクラさんとニモさんを招いての打ち上げも、「水軍」で行うことに。まずはビールで乾杯し、お好み焼きと鉄板焼きを注文する。娘さんと女将の二人で切り盛りしているが、手際よくアツアツのお好み焼きが出てくる。鍵井さんと河本、サクラさん、ニモさんの会話も熱く盛り上がる。

店舗情報

―「今度はいつ帰ってくる?」―
そんな言葉が最高の見送り言葉になる
広島の夜

営業時間中は「合戦中」、営業が終わると「休戦中」。女将さん、娘さん、ごちそうさまでした!(撮影:坪根雄大)

最後は女将たちと一緒に記念撮影。「ごちそうさま。また来ます」と言う河本に、「また来るって言ったな!また絶対来なきゃあかんで!!」と言葉を返す女将。仕事の都合で翌日も広島に残った河本は、やはり水軍へ行ったらしい(笑)。「会いに行きたくなる女将がいる店」がある広島。きっとまた、私たちはここへ帰ってくるだろう。

旅の終わりに――
「もう一度来なくちゃ、近いうちにって思います(笑)」(河本)
「自分たちの海にポジティブな広島ダイバーって、いいですね」(鍵井さん)

「鍵井さんに撮られることに、ちょっと緊張しましたね」と河本(撮影:坪根雄大)

「ニッポンの海と文化」の広島ロケで、河本は鍵井さんと初めて一緒に潜り、旅をした。そんな二人が抱いた広島の印象や旅の感想を伺うべく、ロケの最後に鍵井さんと河本の対談を行った。「広島の人って、広島が最高!と思って、それをこちらにも伝えてきてくれる。なんかいいですよね」と河本。「今回4月と7月の2回、潜ってみましたが、正直透明度はあまりよくなかった。でも一緒に潜った地元ダイバーの皆さんは、コンディションに左右されない海の楽しみ方をよく知っていて。魚が少なめだったときも、ネガティブなことは言わない。会話がポジティブなんです。それって、とても大切なことだなって思わされました」と鍵井さん。

「日本人がまだ気づいていない、ニッポンの海の素晴らしい価値を証明する」。「ニッポンの海と文化」の連載では、そんなことを実現していきたいと思っているのだが、広島を訪れてみて、自分たちの潜る海を愛し、誇りを持っているダイバーたちと出会えた。きっと日本各地に、そんなダイバーたちがたくさんいるに違いない。

次の旅先では、どんな出会いが待っているだろうか。
そしてどんな海に出会えるだろうか。
「ニッポンの海と文化」第2話は、2023年1月に公開予定。お楽しみに!

関連記事