【第1話 広島 スピンオフ企画】
ナビゲーター・河本雄太×水中写真家・鍵井靖章 アフタートーク 「広島に誇りを持っている人たちとの出会いが印象的だった」
2022年12月に公開した「ニッポンの海と文化」第1話・広島編。2022年4月、7月と2回のロケを行い、すっかり広島に魅了されたオーシャナ代表の河本雄太(以下、河本)と水中写真家・鍵井靖章さん(以下、鍵井さん)。ロケの終わりに2人が広島で語った、アフタートークをお届けしよう。
出会ったダイバーたちの広島湾への思いを強く感じた
オーシャナ編集部(以下、――) 無事に2回目の広島ロケも完了しました。おつかれさまでした。まずは2回のロケを終えて、広島の海についてのご感想から伺いたいと思います。
河本
鍵井さん、広島の海はおもしろかったですか?
鍵井さん
最初に4月に撮影に来たときは正直魚が少なくて、7月はもうちょっと魚影が濃くなって見られる魚が倍増しているかなって期待していたんですけど、そうでもなかったかな…。でも、一緒になった地元のダイバーの皆さんは、ダイビングが終わってボートに上がってきてから「透明度が悪い」とか「魚がいなかった」とかそういうネガティブなことは一切言わないんですよ。広島湾の今ある状況の中で、良かったことをポジティブに会話しているんですよね。これはすごいいいことだなって思いました。
河本
地元の方って、最初に下げ合い合戦をするじゃないですか(笑)。「いや、魚少ないですよ」、「大したことない海ですから」なんて。でも、訪れた地の海の魅力を発掘するのが今回の「ニッポンの海と文化」の旅の趣旨だと思うんで、いいところをいろいろ見つけられたと思います。「もう一度潜りに行きたいか」と聞かれれば、もう一度行きたいって僕は答えますよ。
ただ今度来るとしたら、朝から晩までダイビングではなくて、お好み焼き屋の「水軍」に絶対行かなきゃならないし、鍵井さんと飲まなきゃいけないし(笑)。
鍵井さん
水中での撮影のとき、河本さんにそこに入ってくださいとお願いしたところあったじゃないですか。ウミイチゴが浅瀬にものすごく繁茂していた場所。あの景色は印象的でしたね。
河本
僕がモデルでよかったですか(笑)? 写真家の方と潜るってことは、今まで本当になかったので、あんな感じでよかったのかな?って。水中でモデルをするのは、難しいですね。
鍵井さん
メバルがずらっと並んでいる場所で、いいところに河本さんが入ってきてくれたと思ったんだけど、ちょっと撮り方を変えようかと思って用意している間にいなくなった(笑)。
河本
そうだったんですね(笑)。アイコンタクトが足りませんでしたね。こんなふうにカメラを向けていただくのって、結婚式以来なんです。撮る方はもちろん大変でしょうけれど、撮ってもらうのもまた、大変なんだなって…。
鍵井さん
普通、そんなに撮られるって経験ありませんからね。
――今回お世話になった「L・M・マリン」さんはいかがでしたか?
河本
「L・M・マリン」さんは、講習などをしっかり行うプロショップであり、海を楽しませてくれる現地サービスでもありますよね。とてもサービス精神が旺盛で、日本全国を見ても、こういうお店はたくさんがあるんでしょうけれど、あまり紹介できていないですよね。
すごい景色がよくて美しい海でも、いいガイドがいなかったら二度と行く気はしないんです。でも今回のロケで「L・M・マリン」の方たちと出会ったことで、「また広島に戻らなきゃ。あんなにいい方たちがいるんだから」と感じました。
鍵井さん
もちろんオーナーの守家さんはじめ、皆さんの人柄もあるけれど、ショップの方たちが広島湾にプライドを持っているんですよね。
河本
オーナーの守家さんは「大した海じゃないですよ」なんて謙遜した言い方をされるんだけど、実際はとてもこの海に対して譲れない思いがある。お話をさせていただいて、そんな思いが強く感じられましたよね。それがすごいよかったなと思いました。
その土地の味と出会う、人と出会うことが、旅の醍醐味
河本
鍵井さんは今までたくさん雑誌の取材などをされてきていますよね。今回の「ニッポンの海と文化」のロケはいかがでしたか? 僕の役割は取材中に人との出会いを広げていくことかなと思うんですが、鍵井さんはアーティストですからどんなふうに撮影するかとか、いろいろ考えられたりしているんだろうなって。
鍵井さん
昨日の夜、僕は飲みに行かなかったでしょ。それが最たるもので。翌日のために、準備をしっかりしておく。僕が酔っ払ってもしょうがないでしょ。これが大事です(笑)!
河本
今回、撮影を担当していただく鍵井さんとオーシャナの坪根カメラマン、そのほかにも動画撮影のカメラマンや編集者など大勢のスタッフで取材に来ていますよね。オーシャナとしては、初の大規模な取材チームです。どんな取材の仕方がいいのか、まだ正解はわからないですけど、2回のロケを終えて「日本の海にはすごい可能性があるな」と、それは手ごたえを感じました。
――2回のロケを終えて、お二人が特に印象に残った景色、食べ物、なんでもよいのですが、教えていただけますか?
鍵井さん
やはりメバルの刺身ですね。昨日、皆で食べましたけど、美味しかった!
河本
メバルですか⁉︎
鍵井さん
4月に潜ったとき水中に魚がほとんどいなかったんですけど、今回潜ってみたらメバルの幼魚がたくさんいて。メバルが被写体としてそんなに魅力的かというとそういうわけでもないんですが(笑)、広島を代表する魚に出会えたのかなって。そんなこともあって、美味しく感じましたね。
――あのメバルの刺身は、広島市内のデパ地下で買ったんですが、東京よりとても安くて、しかも甘みと歯ごたえがありましたよね。広島牛はいかがでしたか?
鍵井さん
河本さんが焼いてくれたから、美味しかった(笑)!
――河本さんはいかがですか?
河本
僕がビックリしたのは、牡蠣でしたね。だってあれ、1個200円しないでしょ。絶対に僕、冷凍の牡蠣をお土産には買わないと思うんですよ。でも冷凍の牡蠣をキッチンで蒸し牡蠣にしてその場で皆で食べたら、こんなに美味しいのか!って。だから、やってみないとわからないことって、いっぱいあるんだなと思いました。今回の旅で思ったのは、やってなくてわかってないくせに何かを伝えてるって恐ろしいことだなって、メディアに携わる者として。
――「ニッポンの海と文化」のロケでは「NUB飯」と称して、その土地で食べてみたいと思うものを、キッチン付きの宿で皆で食べるという新しい試みを取り入れました。やはりこれをやってみて、わかることってたくさんあったんだと改めてわかりました。これからのロケ地でも、どんな味と出会えるか楽しみですね。
河本
「メディアも人」だと思うんですよね。そこでメディアを作っている人たちが、本当にいいと思うものを紹介していく。誰かに勧められたから、それを紹介するっていうのではなくて。
――2人がキッチンに立って、調理をしている姿は新鮮でした(笑)。
鍵井さん
どんどん料理がうまくなっていったりして(笑)。
河本
こういう旅の仕方は絶対あるかなと思うので、今後のロケでもやっていきたいですね。
鍵井さん
僕はわりとこういうことを、自分のツアーでもよくやってるんですよ。皆で飲みながらキッチンに立って、料理作ったりしてね。
河本
もちろんその土地の居酒屋やレストランなんかに行ってみることも大切だと思うんで、そこでの人との出会いを大事にしたいですよね。ガイドブックに載っていて予約が取れない人気の店に運良く行けたけど、お店の人とはひと言もしゃべれない。そんなんだったら、店員さんとコミュニケーションできる店に行ったほうが、よほど旅に深みが出るかなと思います。僕は今回の「ニッポンの海と文化」の企画は、やはり「人と出会う」ってことが大事だと思ってます。中でも一番簡単に距離が近くなるのは、ダイビング関連で出会う方たちですよね。
鍵井さん
いつもそう思うんですが、海に入る前と一緒に潜ってからって、関係が変わりますよね。グッと距離が近くなるというか。海に一緒に行くってことは、すごいことなんですよね。
――お二人の関係性も、2回のロケを経て深まっているなと感じました。最後にひと言、第1話広島編についての思いをお聞かせください。
鍵井さん
「L・M・マリン」のオーナーの守家さんも言われてたけれど、広島湾の海は沖縄なんかと比べるとそれほどポテンシャルが高いわけではないじゃないですか。そこを「ニッポンの海と文化」の第1話として取り上げるオーシャナに勇気を感じました(笑)。
河本
僕は今まで20年間、ダイビングインストラクターとして講習をたくさんやってきました。そこで、人の人生を変えてきた自負があるんです。講習を行っていたのは、紀伊半島の南紀白浜のビーチポイントなんですが、そこの海を沖縄の海と比べてなんだかんだと言う人が、一番嫌いでした。今、目の前にある海で感動している人がいるのに、もっといい海があるからとは言いたくない。日本の海にはそれぞれの良さがあると思うんです。これからの取材地でも、そういう視点でいいところをたくさん鍵井さんたちと見つけて、紹介していきたいですね。
――お二人のお話を聞いていて、これからどんな海、人、そしてその土地の文化に出会っていけるか、ますます楽しみになりました。ありがとうございました。
第1話のための2回のロケを終えて、以前よりも親しさを増して、いろいろな話を聞かせてくれた鍵井さんと河本。これからまた新たな旅が続いていくが、二人がどんな景色を見て、どんなストーリーを描いていくのか。皆さんにも楽しみにしていただければと思う。
そして「ニッポンの海と文化」の第2話「山形県 庄内・鶴岡」が3月3日に公開決定! 今度は水中写真家・中村卓哉さんがメインフォトグラファーとして登場する。お楽しみに!!
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