ダイビングの始め方・決定版!
このダイビングの始め方特集は、「これからスキューバダイビングを始めてみたい」「海中世界をのぞいてみたい」と思っている方へ向けて、「中立・客観的で偏りのない情報」を数多くとり揃えているWebメディアのオーシャナが作成しました。
身近にダイバーの友達がいらっしゃればいろんな話も聞けますが、スキューバダイビングを始めるにあたって、不安や疑問を抱かれている方も多いと思います。
「まず、何したらいいの?」
「ダイビングライセンスって、どういうもの?」
「どういうショップを選んだらいいの?」
「器材って買った方がいいの?レンタルでいいの?」
などなど、調べていくにつれて疑問もさらに増えるかもしれません。それぞれ興味のあるページからで構いませんので、気になる部分や悩んでいる部分を読んでみてください。そして最終的に「自分にとってはこういう形がよさそう」という自分なりのダイビングライフがイメージできるようになれば幸いです。
※この記事は2010年7月1日に公開されたものを随時更新しています。
ダイビングライセンスとは?
実は「ライセンス」という呼び名はない
まず、本題に入る前に「ライセンス」という言葉について少しだけ触れておきます。ライセンスというのは、国や公的機関が与える法的な免許・許可証のことです。これから趣味でダイビングを始めようとしている方が取得するものは、正確には「ライセンス」ではありません。その“ライセンスのようなもの”を、ダイビングではCカードと呼びます。
とはいえ、そのCカードには法的なチカラがあるわけではありません。仮に誰かがCカードを持たないままダイビングをしたとしても、日本の法律で罰せられることはないのです。そのため、Cカードを「ライセンス」と呼ぶのは本来的には正しくありません。
余談ですが、スキューバダイビングでライセンスと呼べるものは潜水を職業としている人が対象のものだけです(安全潜水管理者、国家資格の潜水士など)
ライセンスではなく「Cカード」
Cカードとは、Certification Cardの略です。 Certificationとは「証明」「認可」という意味です。つまり、ダイビングの指導団体が定めた講習を修了した後に、「この人はダイビングの知識とスキルを身につけました」ということを“証明”してくれるカードです。自分が講習を受けたダイビングショップが申請を代行し、所属指導団体が発行してくれます。
先述したように、Cカードがないままダイビングをしても法律で罰せられることはありません。しかし、講習を受けたことがない人がダイビングについて何も知らずスキルもない状態で海に潜るのは、とても危険なことです。そのような人にダイビングのお店はサービス(例えばガイドをする、タンクを貸し出す、など)を提供することはできません。そのため、ダイビングをする際の証明書として、Cカードを提示しなければいけないのです。
ダイビングをしたことがない方、これからダイビングを始めようとしている方は、まずはこのCカードを取得する必要があります。
ダイビングの指導団体って?
日本には30あまりのダイビングの指導団体がある
ダイビングには、指導団体というものがあります。指導団体とは、文字通りダイバーを育成・指導したりダイビングの裾野を広げるための活動をしたりしている、営利もしくは非営利の団体です。ダイビングのCカードは、この指導団体が発行しています。
インストラクターになる試験の合格認定も指導団体が行うため、各インストラクターは必ずどこかの指導団体に所属していることになります(複数の指導団体の資格を取得しているインストラクターもいます)。
日本だけでも30あまりのダイビング指導団体があり、団体によって理念・性格は少しずつ異なります。そのため、Cカード講習のカリキュラムやスキルアップの内容・ランクも異なる部分があります。
指導団体がどこかを気にしすぎなくてOK
よく、以下のような懸念をされる方がいらっしゃいます。「有名ではない、マイナーな指導団体のCカードだと潜らせてもらえないダイビングエリアがあるのでは…」
現在、主要な指導団体のCカードなら国内・海外の海で断られることはほぼありません。そして、日本のダイビングショップ・インストラクターは、ほとんどが主要な指導団体に所属しています。
そのため、あまりにマイナーな指導団体でない限り、そこまで気にしなくていいでしょう。指導団体がどこかで選ぶよりもむしろ、ダイビングショップの雰囲気・対応やインストラクターの性格・相性をより重視することをおすすめします。
一つの指導団体の中でも、あなたに合うダイビングショップもあれば、合わないダイビングショップもあるでしょう。これから実際にCカード(ダイビングライセンス)を取得してダイビングを続けていく際に、直接関わるのは指導団体ではなくダイビングショップやインストラクターなので、そちらを重視するようにすることをおすすめします。
指導団体によってランクの呼び方が違います
Cカード(ダイビングライセンス)を取得した、つまりダイバーとして認定されるランクは、指導団体によって呼び方が異なることがあります。
とはいえ、呼び方は違っても基準とされるレベルはほぼ一緒です。それは「水深18mまでをバディシステムを守りながらリーダーの引率なしにダイビングができること」です(指導団体によって、多少異なる部分もあります)。
ただ、日本人のダイバーが全員、Cカードを取得してすぐにリーダー(ダイビングガイド)の引率なしにダイビングができるかと言うと、なかなかそうはならないのが現状です。その点についてはもっと細かい話になってしまいますので、ここでは「指導団体によってCカード・ランクの呼び方は違う」「ただし、指導団体がどこかを気にしすぎることはない」ということを覚えていただければと思います。
体験ダイビングとは?
Cカード取得コースと体験ダイビングは違います
「体験ダイビング」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。体験ダイビングは、Cカードを取得するコースとはまた別のものです。
Cカード取得コースとは、学科講習やプール・海での実習を通じてダイバーとして認定されるコースです。ダイビングに関する知識を身につけ、ある程度のことは自分で対処できるようになるための、“講習”なのです。
それに対して体験ダイビングでは、事前には最低限の知識・対処法しか習いません。海の中では、インストラクターがほとんどつきっきりになり、ほぼ全ての面倒を見てくれます。
沖縄や海外での体験ダイビングで、「練習をすることがなく、いきなりボートから海の中にダイビングしてとても怖かった」という話を時々お聞きします。
こういった「練習なしの体験ダイビング」でトラブルや事故が増えていることもあり、指導団体によってはプールや海の浅い水域で最低限の講習を実施することが義務付けられました。
体験ダイビングにもメリット・デメリットがあります
ダイビングを始めるにあたって「いきなりCカードを取る(講習を受ける)のはちょっと大変そうだし、お金もかかりそうだから、まずは体験ダイビングから…」と考える方も多いと思います。では、それが誰にでも100%おすすめなのかと言えば、とても難しいところです。ご本人の性格などによって違うかもしれません。なぜなら、体験ダイビングにもメリット・デメリットがあるからです。
この特集は「ダイバーになる=Cカードを取得する」ための情報を載せていますので、体験ダイビングに関しては別の特集を用意しました。そこで体験ダイビングについて詳しくお話しています。
Cカードを取得するには
車の免許と似ている、二通りの方法
では、Cカードを取得するには、どうしたらいいのでしょうか。大きく分けて、二つの方法があります。
2.沖縄や伊豆など海の近くにあるダイビングサービスで短期集中的に取得
これは車の免許と似ていますね。車の免許証をとるときも、「1.町の教習所に通う」のと「2.短期の合宿に行く」のと二通りの方法がありますよね。それと同じように、ダイビングのCカードを取得するときも大きく分けてこの二つに分けることができます。
Cカード取得のための講習内容
実際の講習の流れも、車の免許を取るときと似ています。内容はダイビングショップやインストラクターによって違う部分もありますが、一番多いパターンは学科の勉強があって、それと同時にプールを使った実技の講習が行われる、という形です。
それらを全て終えると、実際に海の中での講習(海洋実習)を受けて、晴れてCカード取得となります。
ちょうどこれらの講習も、車の免許を取るときと似ていますね。以下のように例えると分かりやすいかもしれません。
プールで器材を使った講習 = 教習所内で車を運転する講習
海での講習 = 公道で運転する講習
この講習の内容・やり方は、ダイビングショップやインストラクターによって異なる部分があります。指導団体によっても、学科講習が自習だけだったり、プール講習と海洋実習を交互の行うことができたりと、多少の違いがあります。
また、最近では学科講習を自宅にいながらインターネットで済ますことができるEラーニングや、ZoomなどのWeb会議ツールでインストラクターと講習を行うこともあります。
大切なのは、しっかりした知識・スキルを身につけること
ここで一番大切なことは「Cカードを取得する」ことではありません。「講習を通じてしっかりとした知識とスキルを身につけること」です。
Cカードを取ること自体に価値があるのではなく、受ける講習の内容に価値があるのです。いい加減な講習を受けてCカードを取得できてしまったとしても、その後に安全で楽しいダイビングができなかったら、意味がありません。
Cカード取得のための講習を受けるダイビングショップも、「手軽に・安価に取得できるかどうか」より「丁寧でしっかりした講習をしてくれるかどうか」を基準に選ぶようにしましょう。その方がきっと、その後のダイビングが楽しくなることでしょう。
ダイビングを始めるにあたって、最初にきちんとした講習を受けることは、その後のダイビングライフを左右するほど大切なことです。
Cカード取得にかかる料金・価格
どこまで含まれている料金なのかをチェックしましょう
Cカード取得にかかる料金・価格は、それぞれのダイビングショップ・ダイビングサービスによってだいぶ差のあるものになっています。
Webサイトなどで表示されている価格は「どこまでの費用が含まれているか」というのが、お店によってかなり違います。含まれているものが違うのに「Cカード取得料金=○○,○○○円!」というアバウトな表記をしているために、誤解が生まれやすい状態になっている、とも言うことができます。
それを見極め・判断するには、やはり「その料金でどこまでが含まれるのか」を確認するのが一番です。また、しっかりとしたお店は、Webサイト上でもその料金の内訳を明確にしています。
含まれることが多い講習費用としては、以下のような項目があります(あくまで参考です)。
教材・テキスト費 | 講習時のプール使用料 | タンクレンタル料 | 器材レンタル料 | 海での講習時の交通費 | 海での講習時の宿泊費 | 海での講習時の食費 | 海での講習時のダイビング施設使用料 | 海での講習時の入海料 | 保険料 | Cカード申請費
ダイビングショップ・ダイビングサービスによってどこまで含まれるかはバラバラですし、ここに書いていない費用がかかる場合もあります。「その価格でどこまでが含まれるか」を確認しておきましょう。ある程度確認したら、「合計で○○○円ですね。それ以外にかかる料金はありますか?」と尋ねてみましょう。
安すぎるダイビングショップは注意
Cカード取得費用としては、一般的には総額で¥40,000〜¥90,000ぐらいと書いているお店が多いです。これだけでもかなり幅がありますよね。どこまでの費用が含まれているかによって料金が違いますので、あくまでも参考としての数字と思ってください。
また、「激安でCカードが取れます」と言っておきながら、あとでそれ以外の追加費用として高額な請求をされるという被害も度々おきています。安いダイビングショップがすべて悪い、というわけではありませんが、そうした行き違いを避けるためにも価格とそこに含まれる内容は最初にチェックしておきましょう。
価格だけを基準にしない
ダイビングを始めるにあたって大切なのは「講習を通じてしっかりとした知識とスキルを身につけること」です。そのためには、価格だけを見るのではなく、そのダイビングショップが「しっかりと講習をしてくれるかどうか」を検討するようにしてください。
例えば、みなさんが講習やスキルのことでちょっと質問しただけでも、熱意や情熱をもっていろいろと話してくれるダイビングショップやインストラクターは、そうした意識が高いと言えるでしょう。
そうした部分は、ダイビングショップのWebサイトにも表れる部分ではありますが、一番確実なのは実際に会って話を聞いてみることです。
価格だけでみれば、大規模なお店でお客さんをたくさん呼べるところは価格を下げられるでしょうし、小規模なお店でお客さんもそれほど多くないところは格安の料金になかなかできません。ただ、お店の規模とは関係なしに、しっかりしたダイビングショップやインストラクターはしっかりした講習を行っています。
Cカードを取得することは、ゴールではなくスタートです。そこからずっと続く今後のダイビングライフを考えれば、最初にしっかりした講習を受けることがなによりの投資になるのです。
激安・格安のCカード講習について
安い料金・価格には必ず理由があります
いくつかのダイビングショップのホームページを見て、Cカード取得の料金を調べていくと、やけに安い金額でCカードをとれるお店があることに気がつくと思います。Cカード取得コースの価格が¥20,000〜¥30,000台、さらには¥20,000を切るところもあったりします。
やり方や考え方はそのお店次第なのですが、ほぼ確実に言えることは、この料金ではCカード講習自体は赤字だということです。もしかしたら特殊なやり方をしているショップさんもあるのかもしれませんが…。なぜ赤字なのにそういった激安・格安のCカード講習価格を設定するのでしょう。
赤字分を器材販売・追加講習・ツアーで補う
では、その理由を考えてみます。ダイビングショップもボランティアでやっているわけではありませんので、Cカード取得講習が赤字なら、他の部分でそれを補わなければいけません。
その補う項目としては、Cカード取得コースとセットになった「器材販売」「追加の講習」「ツアー」が主なところです。そういったダイビングショップは「まずはダイバーになってもらって、その後ずっとうちのお店に通ってもらえばいい。だから最初の料金は低くしている」という考えをもっています。
まず敷居は低くしておこう、という考え方ですね。そのこと自体は、多くの業態で様々な企業がしていることですし、悪いことでもありません。
ここで大切なのは、Cカード講習を受けた受講生が「ダイビングをとても楽しい」と思って、「そのダイビングショップも好き」になり、「自発的にそこに通う」ということです。受講生がCカードを取得した後に「自分の意思で」通っているのなら、何も問題はありません。
実際にあったトラブル事例
問題は、それが「自発的」ではない場合、あるいはそのショップ独自のルールなどをお客さんが「知らなかった」(伝えられていなかった)場合です。
それは、お客さんとショップとの間のトラブルの原因になります。
以下に、実際にある事例を挙げておきます。
事例その1
「Cカード取得は○○,○○○円!」と格安の表記をしていたものの、そのCカード取得コースを受けると必ず追加の講習やツアーがついてくる場合。
その講習やツアーが、お客さん自身が「受けたい」「参加したい」と思っているものなら、問題はありません。
ただ、受けたくもない講習を受けることになったり、行きたくもないツアーに行くことになったりすると、トラブルの原因になります(トラブルとまではいかなくとも、お客さんからすれば不満を感じるでしょう)。
ショップ側がその講習・ツアーの価値をしっかりと伝えていて、お客さんもそれを理解して「それなら参加したい」と思っているなら、トラブルは起こらないでしょう。
なお、この事例にあるようなショップは、格安のCカード講習での赤字分を、その後の(参加必須の)講習やツアーで補う仕組みになっています。
事例その2
「Cカード取得は○○,○○○円!」と格安の表記をしていたものの、そのCカード取得コースを受けると必ず自分用のダイビング器材を買わなければいけないルールがある、という場合。
これも上記の事例と同様で、お客さん自身がその器材を「買いたい」「自分には必要なものだ」と思っているのなら、問題はありません。
ただ、買いたくない(必要と感じていない)器材を買うことになるのは、トラブルの原因になります。
それがそのお店のルールだとしても、Cカード講習をスタートするときに、そのルールをお客さんが知らないのは問題です。
なお、この事例にあるようなショップは、格安のCカード講習での赤字分を、その後の(参加必須の)講習やツアーで補う仕組みになっています。
「適正な価格」でやっているショップもたくさんあります
他の業界でも同じかもしれませんが、近年、ダイビング業界も「価格破壊」の波に襲われていることは事実です。
また、その中で依然トラブル(お客さん側の不満)がなくならないのも、事実です。
ただ、そんな中でも、自分たちの講習に信念とポリシーをもち、価格をむやみに下げないショップもあります。
「自分たちは講習にこだわりをもってやっているので、提供している価値に対して赤字覚悟の値段をつけるのは間違っている」という考え方のショップです。
こうしたショップの講習や安全に対する考え方は、やはりしっかりしている傾向にあります。
きちんとしていないダイビングの講習は、安全性の点から命にもかかわってくることです。
特にダイビングを始めるときは、そうした面も考慮してショップ・インストラクターを選ぶようにすることをおすすめします。
Cカード取得にかかる日数・期間
大きく分けて二つのパターン
Cカード取得にかかる日数・期間も、料金や価格と同じように、ダイビングショップによって違います。
Cカードを取得するにはでも書いたとおり、車の免許を取得するときのように、大きく分けて二つのパターンがあります。
2.(沖縄や伊豆など)現地の海のダイビングサービスで短期集中的に取得
あくまで目安ですが、1.の場合はダイビングショップで最初に受け付けをしてから海洋実習を終えてCカード取得まで1〜2ヶ月、2.の場合は2泊3日〜3泊4日ほどのスケジュールが多いです。ただ、これはあくまで目安程度にしてください。
日数・期間の面では、それぞれ、こういう方におすすめです。
- ・平日など、仕事帰りに通って講習をしたい方
- ・まとまった休みがとりにくい方
- ・近所に通いやすいダイビングショップがある方
- ・旅行するタイミングで同時に講習をしたい方
- ・まとまった休みがとれる方
- ・近所にダイビングショップがない方
それぞれの違いは、都市型ショップと現地サービスの違いでも詳しく書いています。
いかに早く取得するかよりも、どれだけの知識・スキルを身につけられるか
Cカードを取得するにはとCカード取得にかかる料金・価格から同じことの繰り返しになってしまいますが、Cカードは「いかに早く取得できるか」よりも、「その講習でどれだけの知識とスキルを身につけることができるか」が大切です。
お仕事の都合、お休みの都合など、みなさんそれぞれご事情はあると思いますが、「自分にとって役に立つ講習を受けられるかどうか」を最優先に考えることをおすすめします。