初心者にもわかりやすいダイブコンピュータと減圧症の話-TUSA IQ850開発者インタビュー
減圧症を自分の頭で考えることの大切さ
キーワードは“オウンリスク”
今村
海の中では圧力がかかって、体内に過剰な窒素をため込んでる状態ですよね。そこから窒素をいかにうまく抜いていくかっていうのを、みんな考えて潜らなきゃいけないと思うんです。でも、今はみなさん漠然と潜りすぎてますよね。
いぬたく
はい、ガイドさんに任せっきりの方もいらっしゃいますね。
今村
みなさんそんなこと考えて潜ってないんですが、本当はそれを考えて潜らないといけないと思うんです。
今村
例えばスキーをやったときに、コブ斜面に行くとしますよね。コブ斜面っていうのは平らな斜面よりもリスクがある、転倒の危険性があるって分かってますよね。それを理解して、それでも自分はそこを楽しみたいから行く。それはオウンリスク(自己責任)ですよね。
いぬたく
オウンリスクというのは大切なキーワードですよね。
減圧症を減らすために大切なこと
今村
でも、「ダイビングしてるときみなさん考えてますか?」と自分は言いたいんです。
どうやって窒素を抜いていくかっていうのを考えないといけないのに、それができていない。だから私としては、単に無減圧潜水時間を見るだけではなくて、どうやって窒素をなめらかに排出するかを考えないとだめですよ、ということを強く言いたいんです。それを考えて潜らないと、減圧症は減らないですよ。
いぬたく
自分の頭で考えることが大切、ということですね。
今村
減圧症は東京医科歯科大学医学部附属病院だけで年間約400人、全国では1000人近いと言われています。一昨年には石垣島の八重山病院の事例が新聞に載るぐらいの増え方をしてしまっています。
そこまで増えてしまったのは、ダイブコンピュータに原因があると思っています。
いぬたく
ダイブコンピュータの無減圧潜水時間(残りの潜れる時間)の表示だけを見て過信してしまっている、と。
今村
だからダイブコンピュータの特徴を知ることはダイバーが絶対に行わなきゃいけない責務だと自分は思っているんですけれど、あまりに知らない方が多すぎる。
そのままでは業界的にもダイバーがますます減っていく原因になってしまうし、ここはなんとかしなきゃいけないなと思っているんです。無減圧潜水時間では十分な安全マージンはとれません。目を向けるべきは組織ごとの体内窒素量だと強く思うのです。