プレデター、バショウカジキ見参!
Mexico / メキシコ
メキシコ・ムヘーレス島の衝撃
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メキシコ・ムヘーレス島の衝撃
- Photo
- 越智 隆治
- Text
- 越智 隆治
- Special Thanks
- INTO THE BLUE
- Design
- Sana☆
「過去9年間、刺された人はいない」という言葉を信じて
話を海に戻す。早朝、港から出港したフィッシングボートが向かったのは、ユカタン半島の南東の外洋域。この時期は季節風が吹きすさび、避ける場所の無い外洋では、激しいうねりと波が荒れ狂っている日の方が多いという。
この何も無い荒れた海で、何をどうやってバショウカジキの群れを探すのか。まずは双眼鏡で、鳥山を捜索する。グンカンドリやカツオドリなどが群れて補食活動を行なっている下には、かなりの高確率でイワシを補食するバショウカジキの群れがいるのだという。
そうは言っても、出会えない時には、2週間海に出てもまったく会えないこともあるとアンソニーは言う。「会える時には、会える。会えないときには、会えない」自然界では至極当然のことだ。
だからこそ、自分はいつも、“いちかばちか、運と天に任せる”のだ。
初日、まあまあのコンディション。しかし、バショウカジキスイムを経験したことのある何人かの友人カメラマンから、「そう簡単に会えるものではない」と言われていたから、あまり期待せずに海に出た。
その思いとは裏腹に、職人気質のアンソニーは絶対に群れを見せる!と意気込んでくれていた。その思い通り、出港から数時間後、僕らは補食するバショウカジキたちと、同じ海の中にいた。初遭遇の興奮は、半端では無かった。
あのするどい鼻先で、突き刺されるのでは無いかという恐怖心。しかし、「9年間セールフィッシュスイムを行なっていて、刺された人は一人もいない」という彼の言葉を信じて(というか思い込まないとやってられない)、プレデターに対峙した。美しい背びれが開く瞬間をかっこ良く捉えることは、ここに来る前は“夢”であったはずなのに、今現実に目の前で、30匹のバショウカジキたちが、何度も何度もその美しい背びれを全開させた姿を見せてくれた。
この海には、イワシとバショウカジキしかいないのか!?
2日目、信じられない程のべた凪。80kmも島から離れた外洋にいるとは思えない。「今日は場外満塁ホームランしか狙わないぞ!」とアンソニーが言ったように、海中にいるイワシとバショウカジキの群れは、船上からでもはっきり見られるくらいの状況だった。
そして,バショウカジキの群れも昨日の30匹の倍以上の個体数。スイム時間も2時間以上に及んだ。それにしても、計4日間、水中に入っているときに目撃した魚は、バショウカジキとイワシ、そして一匹のバラクーダだけだった。この海に、他の魚は生息していないのか!
2日目で慣れてきたこともあり、僕はさらにイワシの群れに近づいて,逃げ惑うイワシたちを補食するバショウカジキを狙い続けた。フィッシュアイのレンズをのぞいているからか、突っ込んで来るバショウカジキが眼前まで迫ってきても、遠いと感じる。もう決定的瞬間をモノにすることした、頭には無かった。
群れに突っ込むバショウカジキが、カシカシと音をたてて、イワシの銀鱗を飛び散らせたと思った次の瞬間、一匹のイワシが串刺しになり、そのまま口の中に滑り込んで行った。なんて器用な補食の仕方なのか。
時に、ボロボロになった1匹のイワシが、群れからはぐれて僕の胸の下に逃げ込んで来た。そこにも、バショウカジキたちは容赦なく襲いかかる。一瞬、「刺さるかも!」と思えるような勢いで突っ込んで来るのだが、器用に僕を避けながら、イワシを補食し続けた。
自分も興奮してアドレナリンは全開状態だ!