三陸の海を取り戻せ!

Iwate / 岩手

東日本大震災で被災した岩手県にて「三陸ボランティアダイバーズ(仮称)」による水中清掃活動が始動

Photo&Text
楠哲也
Special Thanks
綾里漁業協同組合
Design
tomato
PDFウェブマガジン 無料ダウンロード

Iwate / 岩手

東日本大震災で被災した岩手県にて「三陸ボランティアダイバーズ(仮称)」による水中清掃活動が始動

Photo&Text
楠哲也
Special Thanks
綾里漁業協同組合
Design
tomato
ocean+α BLUE Magを見る

この記事は約3分で読めます。

三陸の海を取り戻せ!

 東日本を襲った、千年に一度とも言われる未曾有の大震災。それに伴う巨大な津波は、多くの人命と人々の思い出を海へと飲み込んでいった。悲嘆にくれる日々。それでも、生き残った人々は復興へ向けた第一歩をゆっくりと歩みだしている。海という、自らのフィールドで起った出来事。復興に立ち上がったダイバーたちは震災直後から支援活動を始めた。そして被災地で「今、ダイバーが出来ること」を考え、漁協の協力のもと本格的な水中清掃活動を開始した。

美しかった三陸の海岸線は一変した・・・

三陸ボランティアダイバーズ

 WEB-LUE初取材となる今回。自らのフィールドとなりつつある岩手の海をいずれはご紹介する機会があるとは思ってはいたが、まさかこのような形でお伝えすることになるとは夢にも思わなかった。今回のレポートが復興に燃える被災地の一助となれば幸いである。

 初めて岩手県を訪れたのは4年前の梅雨の季節。三陸ボランティアダイバーズ海外へと出向く機会が多かったわりに、日本では住み慣れた関西からあまり出たことが無い私は、東北地方を訪れたのもその時が初めてだった。同じ本州とはいえ東京からは約500km、関西からは実に1000km以上北上する岩手県。まだまだ春の気配が残っており、15度ほどの水温は暖かくなってきているものの、軟弱な南国ダイバーの私にとってはなはだ刺激的だったことを覚えている。最初に潜った三陸町越喜来湾の水中は一見地味だが、よく観察してみると巨大なフサギンポがきょろきょろと目を輝かせ、キラキラと降り注ぐ光芒のなかをゆっくりと泳いでいるタナゴの群れをみると、すでに岩手の海に一目惚れしている自分がいた。

 その後も岩手行が年中行事の一つとなった私は、岩手でダイブサービス「みちのくダイビング・リアス」を展開する友人の佐藤寛志氏、通称くまちゃんのもとでフトコロの深い岩手の大自然と豪華すぎる山海の幸を堪能することになる。それは、どちらかと言えば都会育ちの私にとって、日本の素晴らしさを再発見する大きなきっかけになったものだ。

 翌年、かねてからいずれはやってみたいと思っていた、サーモンスイムが実現した。サーモンスイムとはその名のごとく、鮭と一緒に泳ぐこと。スノーケリングで河口に入り、大海原を4年間旅して帰ってきた鮭を観察するというもの。日本の鮭は放流することでその漁獲高を人工的にコントロールしており、遡上する川のほとんどは漁協によって管理運営されている。そのため川に入ることはおろか、個人が鮭を釣ることは違法であり、そこで泳ごうものならすぐに警察が飛んでくる。その川で鮭と泳ぐことを可能にしたのが、地元漁協との折衝を根気よく続けてきたくまちゃんであった。私たちはなるべく鮭にインパクトを与えないように試行錯誤し、命をかけた遡上という神秘的な瞬間を一般のダイバーが体感できるようなフィールドを苦労して作り上げた。その美しい海や河口がいまや・・・。

 私は交通網が整い始めた震災3週間後、支援と視察撮影のため現地入りすることにした。

FOLLOW