三陸の海を取り戻せ!

Iwate / 岩手

東日本大震災で被災した岩手県にて「三陸ボランティアダイバーズ(仮称)」による水中清掃活動が始動

Photo&Text
楠哲也
Special Thanks
綾里漁業協同組合
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東日本大震災で被災した岩手県にて「三陸ボランティアダイバーズ(仮称)」による水中清掃活動が始動

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三陸ボランティアダイバーズ

いよいよスクーバによる水中清掃作業へ

 ダイバーであるくまちゃんたちは、津波が押し寄せた陸地の支援はもとより、海が飲み込んでいったガレキの行方も震災当初から気にかけていた。三陸ボランティアダイバーズ自分たちが楽しませてもらっていた海の底に沈んだ物、駆け上がった津波が鮭の遡上する川に残していった物・・・。しかし、多くの危険を孕んだ水中環境に自分たちだけで手を付けるわけにはいかなかったのと、それ以上に緊急を要する人々への支援が最優先事項であったので、そちらに専念していた。

三陸ボランティアダイバーズ 被災からほどなく1ヶ月となる4月8日、くまちゃんの親類にあたる漁師、大船渡市三陸町綾里に住む綾里漁協の亘理孝一さんが、潜れるようであれば水中のガレキを引き上げてみてはどうか、と声をかけてくれた。漁師たちは港に停泊していた船や漁具を流され、さらに港湾内に散乱しているガレキのため船の往来もままならない。

 ダイバーとして今出来ることは、沈んだガレキや使用できるかもしれない漁具を一つでも多く引き揚げること。これは渡りに船、とばかりにくまちゃんは早速潜水ボランティア作業に取りかかる。漁協と連携した港湾清掃作業の始まりだ。

三陸ボランティアダイバーズ

 最初は目視出来る比較的大きな物を陸からクレーン車を使って引き揚げる。水中に入ったくまちゃんと陸上にいる漁師たちは息を合わせ、ロープを巻き付けた軽トラックや、漁具の一つで水揚げ直前だったワカメをボイルするための釜などを次々と港へと揚げていく。原型をとどめた漁具などが揚がってくると漁師から歓声が上がる。高額な物ならなおさら喜びは増す。次に水中捜索をした上、陸から揚げられない物にはブイを着けてマーキングし、のちほどクレーン付きの船で引き揚げる。引き揚げと同時にダイバーがロープなど絡まった物をナイフで切り取っていく危険な作業でもある。さらには漁港に設置されていた大型船を停泊するためのブイの修理。地盤が沈下したため大潮の満潮時には完全に水没してしまい、船の往来の妨げになる。絡まったロープを切り取り、新たに現状に見合った長さの物を取り付けていく。それらが一通り終わると、最後は手作業で揚げられる鉄板や建材などを小型船、あるいは岸壁で待ち構えている漁師へとひとずつ手渡していく。

 こうして漁師とダイバーが根気よくそれらの作業を繰り返すことで使用に耐えうる漁港へと復活していくことになる。

三陸ボランティアダイバーズ 漁師の皆さんが喜ぶ姿に手応えを感じた引き揚げ作業。その作業範囲は広く、今後も人手が必要になる。様々な危険が伴うので誰もが出来ることではないが、水中清掃ボランティアをしたい一定の経験を持つダイバーを募集し始めたところ、応募が殺到した。震災当初に後方支援に回っていた県外の人々は、交通やガソリン供給が復旧していくにつれ次は人的支援を申し出てくれたのだ。それでは、とゴールデンウィークに向けて準備を開始。かくして大人数による、より効率的な清掃作業が可能となった。関東、長野、名古屋、果ては広島から集まったボランティアチーム、その数のべ25名。そのうち実際にスクーバを利用した水中作業に携わったのが11名。水中作業は2チームに別れ、綾里地区内にある港を手分けして清掃、それ以外の人たちもスキルに応じて様々な役割りを担った。

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