それでも海を信じたい
Iwate / 岩手
東日本大震災から1年後の三陸の海のルポルタージュ。
Iwate / 岩手
東日本大震災から1年後の三陸の海のルポルタージュ。
- Photo
- 越智 隆治、中村 卓哉
- Text
- 寺山 英樹
- Design
- Panari*Design
- 取材協力
- 三陸ボランティアダイバーズ
- 特別協力
- The More Project Japan
ガレキの引き上げから……ワカメの収穫へ!
「なんせ、震災後、初めての収穫だかんなぁ」。三ボラと共に、三陸沿岸地域の復興のために尽力してきた佐川富廣さんは嬉しそうに言う。復興支援越喜来漁協理事という肩書きから漁師に戻った佐川さんの視線の先にあるのは、希望。昨年末に種苗を入れたワカメである。
内湾に張られたロープにしがみつくワカメは、近づいて水面から見ると、立派に成長していて、下の方は潮にたゆたっている。潜ってみると、まるで、希望にたなびくワカメの吹き流し。
越喜来湾では、震災に伴う大津波で、ワカメを始めとするホタテやカキ、ホヤなど、養殖が全滅。ようやく昨年末にワカメの養殖を再開し、いよいよ収穫を迎えるのだ。
すべてを飲み込んだのが海ならば、すべてを与えてくれるのも海。絶望も希望も抱えて海は変わらず海として在る。海の生物たちはしたたかで、すぐに元の元気な姿を見せたが、人はなかなかそうはいかない。
北海道・奥尻島で大津波に遭遇し、間一髪で難を逃れるという経験をした水中写真家の中村征夫氏は、「海は素晴らしい、と今さら言えるか」と自問自答した末、ようやく2ヶ月後に奥尻の海に潜り、海を取り戻した。
あの日から1年。午前中にガレキを引き上げていた船が、午後にはワカメを引き上げている。復興には程遠いが、漁師たちも徐々に海を取り戻しつつある。まだまだワカメの量は少ないというが、「漁師にとって震災後初めての稼ぎ。復興の兆しだ」と、佐川さんも前を向いている。
ファンダイビングも再開!
ガレキの撤去作業の合間にファンダイビング。あいにくの水温で(笑)、生物は少なかったが、ガレキだらけだったのが信じられないほどきれいな海底。 「夏ごろにはお店も再開したいですね」という、くまちゃんも徐々に海を取り戻しているようだ。ガレキ撤去より、大きな体で小さな魚を探すくまちゃんの方が、 微笑ましく、躍動している。