氷の下の天使!北海道part2 知床半島・ウトロ
Hokkaido / 北海道
北海道は知床半島・ウトロの流氷ダイビング。まだハードルが高いように思われているその様子を、取材陣が徹底レポート!
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北海道は知床半島・ウトロの流氷ダイビング。まだハードルが高いように思われているその様子を、取材陣が徹底レポート!
- Text
- 寺山 英樹
- Photo
- 越智 隆治
- 取材協力
- Avii Wave(アビイウェーブ)
- Special Thanks
- 商船三井フェリー
- Design
- Panari Design
前回の北海道パート1でご紹介した積丹半島から札幌に戻り、次に向かったのは北方領土が目の前に迫る、世界遺産・知床半島。
海の天使・クリオネのすむ、氷の下の神秘の世界へ…。
氷遊び
クリオネ。海の天使。あるいは、妖精と呼ばれる、ダイバー憧れのアイドルに逢えるのは、国後島の一部よりさらに北に位置する知床半島の氷の下。
半島東の羅臼(ラウス)と西側の宇登呂(ウトロ)が、いわゆる“流氷ダイビング”のメッカだが、今回取材班が潜ったのは後者。
遠くサハリンからオホーツク海を渡ってやってくる流氷は、例年2月から3月にかけてウトロに接岸。
風や天候の影響を受けやすい流氷のコンディションを見極めつつ潜る流氷ダイビングは、限られた期間にしか潜れない、一度は潜ってみたいプレミアムなダイビングスタイルといえる。
取材班のトド遭遇の幸運は続いており、訪れた2月後半はグッドコンディションで、岸から沖にかけて見渡す限り白銀の世界。
この美しくも浮世離れしたシーンを見ていると、沖縄の海からここ流氷南限の海まで、日本の海のスケール感を思わずにはいられない。
流氷ダイビングというと、氷に穴を空け、ロープを垂らして潜る、ワカサギ釣りの人間版といったイメージだったが、意外なことにビーチエントリー。
がっつり接岸し、流氷と岸が強固に地続きになる“完全氷結”という状態になると、イメージ通りの潜り方になるが、温暖化の影響もあって、ひと昔前のように完全氷結することは少ないそう。
そこで、陸上からある程度固い氷はチェーンソーなどで穴を空け、あとは、人力で氷をかき分けながらビーチエントリーするスタイルだ。
氷を目の前にして、ダイバーたちは、薄い氷の上を歩いてスリルを楽しむロシアン・ウォーキングをしてみたり、ジャンプして氷を踏んづけて割ってみたり、遊びながらエントリー口を作っていく。
ノンダイバー向けに、ドライスーツで氷の上を歩くツアーがあるくらいだから、こうやって氷と遊んでいるだけで、もう楽しい気分♪
ひとしきり、童心に戻って氷遊びをした後、砕けた氷を手で端へ寄せていよいよエントリーとなる。
粉雪降る海に、舞い降りる天使
命綱となるロープを握りしめ、氷をかきわけエントリー。
胸の辺りの水深でかがんで、氷の下を泳ぎだすと、辺り一面モヤモヤとまるで蜃気楼の中にいるみたい。
その正体は、流氷から溶けた水と海水との塩分濃度の違いからできるケモクラインで、水深が深くなるまでしばらく続く。
やがて、水深10メートルくらいまでくると、視界はパァッと晴れ、見上げれば、太陽光が氷に煌めき、ケモクラインが光をくゆらす、何とも言えない幻想的な世界。
さて、海の天使はどこにいるのだろう?
陸で天使や妖精に逢おうと思えばピュアな心の目が必要だけど、海の天使に逢うのに必要なのは、ジャスト、目。
1センチ前後の透き通った体を持つクリオネを見つけるには、目のピントを絞りながら辺りを注意深く、そして、願いを込めて見つめ続けるしかない。
中層をじっと見つめること10分ほど。
果たして願いが通じたのか、粉雪舞う氷の世界に、海の天使が降りてきてくれたのでした。