セノーテ撮影の実践論|SONY A7C IIとOM-1 Mark IIで検証する光と機材選び
闇の奥へと続く青い光。
メキシコ・セノーテは、水中写真家にとって“光と闇の境界線”を突きつけてくる特別なフィールドだ。
今回使用したのは、フルフレームの描写力をコンパクトな筐体に封じ込めた 「SONY A7CⅡ+AOI UH-A7C II」 と、機動力と安定性を極限まで高めた 「OM SYSTEM OM-1MarkⅡ +AOI UH-OM-1 II」。性格の異なる2つの撮影システムを使い分け、セノーテが見せる非日常の水中世界に挑んだ。

右:OM-1MKⅡ 左:A7CⅡ

SONY A7CⅡ+AOI UH-A7C II
ソニー α7C II 専用に開発されたコンパクト水中ハウジング。小型ボディながら、SONYフルフレーム機が持つ高解像・高感度性能を余すことなく引き出す。プロの撮影現場で培われたノウハウを凝縮し、信頼性と操作性を高次元で融合。光が満ちるシーンでこそ、その描写力が真価を発揮する。
今回、A7CⅡとタグを組ませるレンズはCANON EF 8–15mm F4L FISHEYE USM(Metabones / Canon EF to Emount T V)このレンズはフィッシュアイズームなのだが15mm最広角側にセットして使用。解放F値がF4.0と暗所には厳しいレンズだが意外にキレがよい。OM SYTEMのフィッシュアイレンズの解放F値がF1.8なので漆黒のケーブ内ではやや不利と予想していた。

OM SYSTEM OM-1MarkⅡ +AOI UH-OM-1 II
セノーテ撮影におけるシステム選択論
セノーテ撮影において、機材選択は単なる性能比較ではない。光の質、空間のスケール、ダイバーの動線、それらすべてが制約条件となり、「使える機材」は自然と絞り込まれていく。
今回の撮影では、ハウジングに取り付けた AOI QCS-Q1RC にガムテープで減光した上にドーム型拡散板を装着し、LEDライトは最小ボリュームで運用した。用途はあくまでムービー撮影用、もしくは静止画における極弱い補助光としてである。カバーンエリアではほぼ使用しない。
セノーテの水は極めて透明度が高い。だからこそ、光を足し過ることは空間の奥行きや静寂を破壊する行為になり得る。Q1RCの柔らかく均質な拡散光は、被写体を「照らす」のではなく、その存在をそっと浮かび上がらせるための光として機能する。
サーベルのような光 ― RGBlue S5 SPOT BEAM
各ダイバーが携行するメインライトには、RGBlue S5 SPOT BEAMを使用した。この選択に迷いはない。正直に言えば、他に現実的な選択肢は存在しない。カバーンやケーブ撮影では、一本一本のライトが空間全体の印象を決定づける。光の色温度、ビームの輪郭、中心光量と周辺減衰。そのどれか一つでもバランスを欠けば、洞内の階調や奥行きは簡単に崩壊してしまう。
チームの中に異なる特性のライトが混ざれば、その一灯だけで、これまで積み上げてきたライティング設計が無になってしまう。セノーテでは、光が拡散した瞬間に構造が失われる。
S5 SPOT BEAMの光は極端にシャープで指向性が高く、まるでサーベルのように闇を切り裂き、撮影者が「見せたい線」だけを明確に示してくれる。
結果として、
- ・被写体以外を無駄に照らさない
- ・浮遊物を照射しない
- ・空間の奥行きを壊さない
この3点を同時に満たすことができる。
ここだけの話になるが…。
特に厄介なのが、ガイドたちが好んで使用するBIG ○LUEの大光量ライトだ。ガイディングにその照度が必要なのは理解しているが、我々が行っているのは超高感度を前提とした撮影。その光量は明らかに過剰で、主要被写体や壁面のハイライトが簡単に飽和してしまう。
一度ハイライトが飛べば、階調も質感も取り戻せない。ケーブ内で狙っているのは「明るさ」ではなく、「光の質」と「陰影のコントロール」だ。大光量ライトが無秩序に入ることで、せっかく設計した露出バランスやライティングは崩れ、もはや作品として成立しなくなる。
だからこそ、使用するライトは厳密に統一する必要がある。これは好みの問題ではなく、作品を成立させるための前提条件なのだ。
私のチームではガイド中は大光量ライトを使用して撮影時にはRGBlue S5 SPOT BEAMに持ち替えて使い分けをしている。
モデルを“浮かせる”ための光 ― RGBlue Tricolor
一方で、モデルを配置し、セノーテ特有の「ナイスビュー」と呼ばれるポイントで撮影する場合には、広角型LEDライトを使用する。このシーンで選んだのが RGBlue Tricolor だ。
1台で3種類の色温度を切り替えられるこのライトは、外光が残るカバーンエリアから、人工光のみのケーブエリアへと移行する際に絶大な効果を発揮する。
モデルの肌、スーツの色、背景の岩肌。それぞれが破綻しない色バランスを、その場で微調整できることは、限られた時間と環境で撮影するセノーテでは大きなアドバンテージとなる。機材は「足す」ものではなく、「削ぎ落とす」もの。初心者の多くは水中に色々と小道具を持ち込みがち。セノーテ撮影におけるシステム選択の本質は、高性能な機材を多く持ち込むことではない。
- ・必要以上に光を出さない
- ・動線を邪魔しない
- ・判断を迷わせない
そのために、機材を削ぎ落とし、役割を明確に分担させる。AOIハウジングを核としたこのシステムは、光と闇が共存するセノーテという特殊な環境において、「撮影者の意思だけを残す」ための、ひとつの完成形だと感じている。
カバーンエリア×「SONY A7CⅡ+AOI UH-A7C Ⅱ」

カバーンエリアには整ったきれいな施設がある
それでは作品を見ていただきましょう。まずは、カバーンエリア。その前に、カバーンエリアでの撮影の楽しみと撮影のコツを紹介したい。カバーンエリアの撮影は、「光を追う楽しさ」に尽きる。外光が差し込む限られた空間では、季節や時間帯で太陽の位置が変わり同じセノーテでも大きく趣が変わる。さらに雲の動きによって光の表情が刻々と変化する。数分違うだけでまったく別のシーンが立ち上がるのがカバーンの魅力だ。
撮影のコツは、「光と静けさを壊さない」こと。残念な浮力調整や不用意なフィンキックで水底のシルトは舞い上がり、水中に濁りを生む。せっかくの光芒を一瞬で失わせる。被写体となるダイバーも主役ではなく、光と空間のスケールを伝えるための存在として、姿勢や位置、吐く泡の量までコントロールする必要がある。
チームとしてセノーテで撮影するのであれば撮影者は必然とモデルになる。自分の作品のフレーム中に無様なトリムで大量の泡を吐くダイバーを誰もが入れたくないはず。もう一つ重要なのは、露出を欲張りすぎないこと。ハイライトを守り、闇を闇として残す。その判断ができたとき、カバーン特有の奥行きと静けさが一枚の写真として成り立つ。
カバーンエリアの作品1
撮影モード
M(マニュアルモード)
絞り
F4.0
シャッター速度
1/40
ISO感度
3200
露出補正
±0.0EV
ホワイトバランス
AUTO
フラッシュ
OFF
撮影地
Cenote Maravilla, Mexico.
カメラ
SONY ILCE-7CM2
レンズ
CANON FE8-15mmF4 FISHEYE+MB-EF-E-BT5
ハウジング
AOI UH-A7CⅡ
レンズポート
AOI DLP-103 & AOI ER-AX AX-20
このカットの主役はダイバーではなく、天井開口部から落ちる自然光そのものだ。セノーテ特有の高いコントラスト環境において、光芒の芯を白飛びさせず、かつ周囲の闇を潰さずに残すため、露出は極めてシビアに追い込んでいる。縦方向に伸びる光の柱は、浮遊物の少ない環境でなければ成立しない。
その中に配置された2名のダイバーは、構図上の主題ではなくスケールと奥行きを示すための存在であり、姿勢・距離・泡の量までが計算されている。しかし、二人のモデルは白い光の中では方向感覚がない。計器からの情報のみを頼りに水底30mから息を合わせてフォーメーションを崩さずに浮上するシーンはサーカスの曲芸に等しい程難易度が高い。普通のダイビングインストラクターにはできない技だ。
カバーンエリアの作品2
撮影モード
M(マニュアルモード)
絞り
F5.6
シャッター速度
1/60
ISO感度
6400
露出補正
-0.7EV
ホワイトバランス
AUTO
フラッシュ
OFF
撮影地
Cenote Maravilla, Mexico.
カメラ
SONY ILCE-7CM2
レンズ
CANON FE8-15mmF4 FISHEYE+MB-EF-E-BT5
ハウジング
AOI UH-A7CⅡ
レンズポート
AOI DLP-103 & AOI ER-AX AX-20
この作品を撮る際に考えたことは、セノーテ内部の暗部と、天井開口部の外光環境を同時に破綻させずに収めること。通常、この条件では外は白飛びするか、内部が完全に沈む。そのどちらも避けるため、露出は内部基準ではなく、開口部外の水面と植生に合わせて先に決められている。その結果、光芒は前のカットよりも細く、密度を保ったまま垂直に落ちている。これは単なる偶然ではなく、外光を残すためにハイライト側を守った判断によるものだ。
光の柱は「線」として存在し、空間を分割する構造体の役割を担っている。天井の外側に見える階段や人物は、情報量としては多いが、HDR的な誇張には踏み込んでいない。結果的にはアンダー側に振っての撮影だが、現像時にシャドーを持ち上げて洞窟内の壁面の露出をカバーさせた。冬のマラビジャは天井開口部より光が斜めに入射する時期だが、撮影位置によってはそれを感じさせない絵作りが可能だ。前作品でも述べたが二人のモデルが演じるトリムは整然として感動ものだ。
カバーンエリアの作品3
撮影モード
M(マニュアル)
絞り
F4.0
シャッター速度
1/60
ISO感度
125
露出補正
±0.0EV
ホワイトバランス
AUTO
フラッシュ
OFF
撮影地
Cenote Nohoch Nah Chich, Mexico
カメラ
SONY ILCE-7CM2
レンズ
CANON FE8-15mmF4 FISHEYE+MB-EF-E-BT5
ハウジング
AOI UH-A7CⅡ
レンズポート
AOI DLP-103 & AOI ER-AX AX-20
この写真は、洞窟内と外界が光のカーテンでつながる瞬間を捉えた、カバーンエリアの美しさを象徴する作品である天井の開口部から差し込む太陽光は、水面で拡散しながら岩肌を照らし、洞内へと一直線に落ちていく。頭上には外界の緑と空があり、足元には深い闇が広がる。セノーテ特有の「内と外が同時に存在する空間性」が、最も端的に表れる瞬間でもある。撮影は人工光を一切使用せず、自然光のみ。
露出設定は洞内基準ではなく、あえて開口部の外側を基準に決めている。これにより、外の景色も白飛びせずに残り、同時に光芒も失われない。結果として、明暗差そのものが構図となり、光のカーテンが空間を縦に分割する。
被写体として配置されたダイバーは主役ではないが、セノーテのスケールを示すための重要な指標だ。水深、吐き出す泡の量、そして容姿や配置。そのいずれかがわずかに崩れるだけで、写真は作品として成立しなくなる。ここに、プロフェッショナルなモデルが必要とされる理由がある。セノーテを美しく泳ぐには、シングルシリンダーの立ち泳ぎスタイルのモデルでは魅力が半減する。バランスの良いサイドマウントのダイバーが必要だ。日本では珍しいスタイルだがここでは当たり前のダイビングスタイルだ。
カバーンエリアの作品4
撮影モード
M(マニュアルモード)
絞り
F4.0
シャッター速度
1/8
ISO感度
1600
露出補正
-1.7EV
ホワイトバランス
AUTO
フラッシュ
OFF
撮影地
Cenote Nohoch Nah Chich, Mexico
カメラ
SONY ILCE-7CM2
レンズ
CANON FE8-15mmF4 FISHEYE+MB-EF-E-BT5
ハウジング
AOI UH-A7CⅡ
レンズポート
AOI DLP-103 & AOI ER-AX AX-20
水面が完全な鏡となり、水底の鍾乳石や地形が上下対称に映り込む、摩訶不思議な光景が現れた。この現象が成立するのは、ごく浅い水深に限られる。わずかな水面の揺れでも反射は崩れ、構図は一瞬で失われてしまう。撮影者が不用意に呼気を吐けば、その泡や水流だけで水面に波が立ち、この光景は二度と現れない。
そのため、このカットでは約二分間、呼吸を止めたままシャッターを切っている。被写体に向き合うというより、水と同化する感覚に近い。撮る側の存在が消えたときにだけ、水は完全な鏡となり、セノーテの内部構造は上下に反転した摩訶不思議な世界を見せてくれる。この写真は、特別な演出や人工光によるものではない。自然条件と静止、そして一瞬の集中が重なったときにのみ許される、セノーテならではの造形美だ。
カバーンエリアの作品とSONY A7CⅡ。
ここまでのカバーンエリアの作品、いかがだっただろうか。SONY A7C Ⅱで撮影したカバーンエリアの作品は、SONYが誇る新型裏面照射型フルフレームイメージセンサーと最新の画像処理エンジンの組み合わせにより、最大15 STOPに及ぶ広いダイナミックレンジを最大限に活かした表現が可能となった。
洞内の深い暗部と天井開口部から差し込む強い外光が同一フレーム内に存在するセノーテ撮影においても、ハイライトの階調保持とシャドーの粘りを高次元で両立している点は特筆すべきだ。さらに高感度耐性にも優れており、ISO感度を上げた状況でもノイズの破綻が少なく、暗部の情報量を保ったまま撮影できることは、ケーブやカバーン撮影における大きな武器となる。
また、水中撮影で重要となるブルー系の色再現性はOM SYSTEMに比べるとややグリーンに振れるが、セノーテ特有の透明感や水の厚みを自然なグラデーションとして描写できる点は、作品創作の自由度を大きく広げてくれる。結果として、A7C Ⅱはエントリーモデルとされているが、過酷な光環境下においても撮影者の意図を忠実に反映できる、高い完成度を備えた撮影システムであるといえる。
続いて次章では、ケーブエリアでの撮影に話を移していく。
ケーブエリア×「OM SYSTEM OM-1MarkⅡ+AOI UH-OM-1II」

ケーブダイビングは施設がない場合がほとんど。ジャングルの中で楽しむ
ケーブエリアでの撮影の最大の楽しみは、「暗闇をどう設計するか」を自分の意思で決められる点にある。自然光に頼れない環境だからこそ、光の方向、強さ、色温度、そのすべてが作品の構造そのものになるからだ。言い換えれば被写体を照らすのではなく、空間を描くということ。それこそがケーブ撮影の醍醐味。
撮影のコツは、まず「場所選び」から始まる。1stダイブでは無理に撮らず、ガイドの後ろをゆっくり進みながらナイスビューを探す。ライトを左右に振り、陰影が立体的に浮かび上がるポイントを見つけたら、ラインにマークを残す。撮影は必ず復路で行うのが基本だ。
次に重要なのがモデルとライティングの設計。モデルは主役ではなく、スケールと奥行きを示すための存在。姿勢、位置、フィンの角度、吐く泡の量までが画面の一部になる。ライトは「明るく当てる」のではなく、当てない部分を意識して配置することで空間が締まる。
そして何より求められるのは静止能力。シャッター速度が1/8秒以下になることも珍しくない世界では、撮影者とモデルの呼吸が合った一瞬だけがシャッターチャンスとなる。その緊張感すら楽しめるようになったとき、ケーブ撮影は単なる記録を超え、表現へと変わっていく。
ケーブエリアの作品1
撮影モード
M(マニュアルモード)
絞り
F1.8
シャッター速度
1/10
ISO感度
200
露出補正
-2.0EV
ホワイトバランス
5300K
フラッシュ
OFF
撮影地
Cenote Concha
カメラ
OM SYSTEM OM-1MrakⅡ
レンズ
M.ZUIKO DIGITAL8mmFISHEYE F1.8PRO
ハウジング
AOI UH-OM1Ⅱ
レンズポート
AOI DLP-05+AOI ER-PN_PN-24
ここからは、“白いセノーテ”が持つ独特の美しさを描いていく。この作品は Sac Actun–Nohoch–Dos Ojos 水系に属する Fenomeno で撮影したものだ。白い鍾乳洞が連なっているのが、このセノーテが属する水系の大きな特徴だ。
壁面も床も、光を受け止めるような淡い白で構成され、人工光が入った瞬間に、その空間は一気に立体感を帯びる。この水系は、単体のセノーテが点在しているのではなく、無数の縦穴・横穴・ドーム・トンネルが一体化した“連続した地下世界として存在している。白いケーブは反射率が高く、わずかな光でも洞内全体に回りやすい。そのため明るい仕上がりを作りやすいのだが、階調の差や陰影の出し方で作品の質を分ける。ここに、ケーブエリア撮影の醍醐味がある。この1枚目の作品もわずかなライトを光源にISO200で撮影できているところに驚きがあるのだ。
ケーブエリアの作品2
撮影モード
M(マニュアルモード)
絞り
F1.8
シャッター速度
1/8
ISO感度
5000
露出補正
-1.0EV
ホワイトバランス
AUTO
フラッシュ
OFF
撮影地
Cenote Coop One
カメラ
OM SYSTEM OM-1MrakⅡ
レンズ
M.ZUIKO DIGITAL8mmFISHEYE F1.8PRO
ハウジング
AOI UH-OM1Ⅱ
レンズポート
AOI DLP-05+AOI ER-PN_PN-24
リストリクションが多く、天井の低いエリアが連続するセノーテ。泳いでいるだけでも十分に楽しいが、視点を変えることで撮影の可能性は一気に広がる。このカットでは、天井部に溜まったエアーにモデルを映し込み、洞内の奥行きと空間の広がりを表現した。
シャッター速度は1/8秒。ここまで落とすと、撮影者とモデル双方に完全な静止が求められる。わずかにフィンを動かしただけでもブレとして写り込み、一瞬の揺らぎが作品全体を台無しにしてしまう。その緊張感こそが、この撮影の醍醐味であり、腕の見せ所でもある。
ケーブ撮影では、常に「いかに奥行きを作るか」を考えながら作品を組み立てていく。いかに奥行きを作るかはまだ私も修行の身と言えるが。
ケーブエリアの作品3
撮影モード
M(マニュアルモード)
絞り
F1.8
シャッター速度
1/4
ISO感度
12800
露出補正
-1.3EV
ホワイトバランス
AUTO
フラッシュ
OFF
撮影地
Cenote fenomeno
カメラ
OM SYSTEM OM-1MrakⅡ
レンズ
M.ZUIKO DIGITAL8mmFISHEYE F1.8PRO
ハウジング
AOI UH-OM1Ⅱ
レンズポート
AOI DLP-05+AOI ER-PN_PN-24
このカットは、OM SYSTEM OM-1 MarkⅡならではの強みが最も素直に表れた一枚だ。シャッター速度1/4秒という、通常であればブレを覚悟する設定でも、ボディ単体で最大8.5段という強力な手ぶれ補正がしっかりと効き、洞内のディテールとダイバーの存在感を破綻なく成立させている。
ケーブという「動けない・止まれない・触れない」環境において、この安定感は単なる数値以上の武器になる。また、ISO12800という高感度設定にもかかわらず、暗部の粘りと階調再現は非常に優秀だ。マイクロフォーサーズというセンサーサイズから想像されがちなノイズ感は抑えられ、特にブルー〜シアン域の色再現は自然で破綻がない。
ライトのビームが描く光の軌跡と、奥へと続く洞内の空気感が、無理のない色調で描写されている点は特筆すべき。F1.8の明るいフィッシュアイレンズとの組み合わせにより、限られた光量でも奥行き表現が成立し、結果として「暗い洞窟を無理に明るくする」のではなく、「暗さを含めた表現」としてまとめ上げられている。OM-1 MarkⅡは、ケーブやカバーンといったシビアな環境でこそ、その設計思想が生きるカメラだと改めて感じさせてくれる。
ケーブエリアの作品4
撮影モード
M(マニュアルモード)
絞り
F1.8
シャッター速度
1/8
ISO感度
1250
露出補正
-1.0EV
ホワイトバランス
AUTO
フラッシュ
OFF
撮影地
Cenote fenomeno
カメラ
OM SYSTEM OM-1MrakⅡ
レンズ
M.ZUIKO DIGITAL8mmFISHEYE F1.8PRO
ハウジング
AOI UH-OM1Ⅱ
レンズポート
AOI DLP-05+AOI ER-PN_PN-24
このカットは、これまでの「洞窟=暗く、閉鎖的で、どこか恐怖を感じさせる」というイメージを良い意味で裏切ってくれる一枚だ。白くきめ細かな堆積物に覆われた床と天井、そこに差し込むライトのビームが、まるで雪原を照らす朝の光のような印象を与え、洞内でありながら開放感すら感じさせる。思わずスキー場に迷い込んだかのような錯覚を覚えるのも不思議ではない。
これまで私自身が撮影してきたケーブ写真の多くは、暗部の深さや闇の存在感を強調し、緊張感や怖さを内包した表現が中心だった。それは洞窟本来の魅力であり、同時にリアルな姿でもある。しかし一方で、そのイメージが強すぎたがゆえに、ケーブ撮影に対して「怖そう」「ハードルが高い」と感じ、興味を持つ人が少なかったのも事実だ。
この作品では、OM-1 MarkⅡの高い階調表現と露出耐性を生かし、あえて暗さを抑え、光と空間の広がりを前面に出した。ネガティブな要素を極力排し、「美しい」「入り込んでみたい」と感じてもらえるケーブ表現を目指している。この作風なら、ケーブ撮影は決して特別な世界ではなく、表現の幅が極めて広いフィールドであることを、より多くの人に伝えられるはずだ。
さらに、この作品の成立には RGBlue 新型ライト「Tricolor」 の存在も欠かせない。単に「明るいライト」ではなく、色温度を積極的に使い分けられることが、この空間表現を可能にしている。
カメラに近い主要被写体のライティングには、あえて暖色寄りの 4200K を使用。人物や手前の地形にわずかな温かみを与えることで、無機質になりがちなケーブ空間に人の気配と奥行きを加えている。
一方で、背景に広がる鍾乳石の壁面には 中間色温度の5000K を当て、白い岩肌の質感と階調を自然に引き出した。背景の奥行きを作るエリアでは6500Kで冷たさを演出している。この色温度差が、単なる明暗差ではなく、前景・中景・背景を色で分離する効果を生み、洞内に立体的なレイヤー構造を与えている。
もしすべてを同一色温度で照らしていれば、この“雪景色のような透明感”は成立しなかっただろう。ケーブ撮影は光量だけでなく、光の質と色をどう配置するかが作品の印象を大きく左右する。RGBlue Tricolorの存在は、OM-1 MarkⅡの階調表現や高感度耐性を最大限に引き出し、「怖さ」ではなく「美しさ」でケーブを語るための、重要なピースとなっているのだ。
ケーブエリアの作品とOM SYSTEM OM-1MarkⅡ
いかがだったでしょうか。ケーブ撮影というと「暗い」「難しい」「怖い」というイメージが先行しがちだが、OM-1 MarkⅡはその印象を大きく塗り替えてくれるカメラだ。最大の理由は、手持ち撮影を前提に成立する圧倒的なボディ内手ぶれ補正にある。シャッター速度1/8秒、場合によっては1/4秒という領域でも、撮影者とモデルの呼吸を合わせることで実用画として成立させることができる。これは狭く、自由な姿勢が取りにくいケーブ環境において、決定的なアドバンテージだ。
加えて、マイクロフォーサーズとは思えない粘りのある高感度特性と、白い鍾乳石の質感を破綻させない階調表現。特にブルーからシアンにかけての色再現は、水中洞窟という特殊な色環境において強い武器になる。OM-1 MarkⅡは暗所を「無理に明るく写す」カメラではない。暗さを受け入れ、その中にある美しさを丁寧にすくい上げるためのカメラだ。ケーブ撮影は機材の性能だけで完結しない。光の設計、モデルの配置、撮影者の静止精度、そのすべてが噛み合った瞬間に初めて一枚の作品になる。
OM-1 MarkⅡは、その難しい条件を現実的なものに変え、撮影者を表現に集中させてくれる存在だと言えるだろう。
セノーテは、機材が思想を問う場所
セノーテ撮影は、単に高性能なカメラを持ち込めば成立する世界ではない。光がある場所と、完全な闇が隣り合い、わずかな判断の違いが作品の成否を分ける。その極端な環境だからこそ、撮影者は常に問いかけられる。
「何を写したいのか」「どこまで写すのか」と。それと「そこに持っていけるのか」。
今回使用した SONY A7CⅡ と OM SYSTEM OM-1 MarkⅡ は、どちらも最新世代の優れた撮影システムだが、その強みが発揮される領域は明確に異なる。カバーンエリアにおいては、広大なダイナミックレンジと階調耐性を武器に、外光と闇を同一フレームに収めるSONYの表現力が際立った。
一方、人工光のみで空間を組み立てるケーブエリアでは、強力な手ぶれ補正と高感度耐性、そして色再現の安定感を備えたOM-1 MarkⅡが、撮影者の意図を確実に支えてくれる。しかも携帯性に優れたボディーサイズ。重要なのは、「どちらが優れているか」ではない。どの環境で、どんな表現をしたいのかを明確にし、それに応じてシステムを選択することだ。光を足すのではなく、削ぎ落とし、設計する。機材を増やすのではなく、役割を明確にする。セノーテ撮影とは、その思考プロセスそのものが作品に映り込む撮影ジャンルだと言える。
清水淳とセノーテ撮影を楽しみます。
セノーテの写真をカッコ良く撮影したい!セノーテの中を泳ぐシーンをカッコ良く撮影してほしい!どちらの夢も叶えます。

Cenote Taak Bi Ha
撮影機材&撮影教室
TGシリーズ、デジタル一眼カメラ、またはご希望の撮影機材をご持参ください。アクションカメラも歓迎いたします。スポット光タイプの水中ライトをご持参ください。外部ストロボまたは光源として使用するライトは使用せず、自然光を用いて撮影を行います。
ワンダイブ毎に魅力的な作品を撮影するための撮影データ、撮影位置、水深、シャッターチャンスなどを紹介しながら、十分なブリーフィングを実施いたします。エキジット後にセルフチェックを行い、次のセノーテに活かせるアドバイスを提供いたします。1日の終わりに清水が撮影した作品を鑑賞いただき、翌日の作品撮影を考慮してフィードバックを生かせるよう配慮します。一日中セノーテ撮影に没頭できる特別な撮影ツアーです。
| 06/06 | NH180 1625成田ーメキシコシティ1415 AM552 1850メキシコシティーカンクン2229 |
| 06/07 | 午後 セッティング&チェックダイビング/1ダイブ① |
| 06/08 | セノーテ 撮影② |
| 06/09 | セノーテ 撮影③ |
| 06/10 | セノーテ 撮影④ |
| 06/11 | セノーテ 撮影⑤ |
| 06/12 | セノーテ 撮影⑥ |
| 06/13 | カンクンーメキシコシティ |
| 06/14 | 0105 NH179 メキシコシティ |
| 06/15 | 0630成田 |
| 残席 | 2名 |
| 11/26 | NH180 1625成田ーメキシコシティ1415 AM552 1850メキシコシティーカンクン2229 |
| 11/27 | 午後 セッティング&チェックダイビング/1ダイブ① |
| 11/28 | セノーテ 撮影② |
| 11/29 | セノーテ 撮影③ |
| 11/30 | セノーテ 撮影④ |
| 12/01 | セノーテ 撮影⑤ |
| 12/02 | セノーテ 撮影⑥ |
| 12/03 | カンクンーメキシコシティ |
| 12/04 | 0105 NH179 メキシコシティ |
| 12/05 | 0630成田 |
| 残席 | 3名 |
撮影ツアーの詳しい情報は
https://www.marine-p.com/photo-tour/cenote2026/
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