パラオマンタリサーチリベンジ!そして、ぐるぐるマンタの可能性

Palau / パラオ

50匹ものマンタが、ぐるぐると旋回する!

Photo&Text
越智 隆治
Special Thanks
デイドリームパラオ
Art Direction
PanariDesign
Design
Yoshiko Murata
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Palau / パラオ

50匹ものマンタが、ぐるぐると旋回する!

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マンタ個体識別、今回のロケで100個体を越える

デイドリームでは、サービス創設当時からパラオでのマンタ個体識別を継続して行なっている。今回の取材前までに、88匹のマンタが確認されていた。それが、この取材中に、新たに15匹が識別され、マンタの個体数は100を越え、103匹になった。最新の情報では、新たに数個体が加わり、2012年6月9日現在、110個体。
パラオでは、NECO MARINEというダイビングサービスもマンタの個体識別を行なっていて、「約125個体くらいのデータがあるそうなので、それに近づいてきました〜!」と遠藤さん。

担当者の祥子さんに、この個体識別を通してわかった事を聞いてみた。

マンタについて嬉しそうに語る、ガイドの祥子さん

まず、「ジャーマンチャネルと003のあるユウカクチャネル周辺で同じ個体が確認されたのは、3個体のみ。あとは、全部違う個体です」とのこと。これは正直意外な結果だった。ちなみに、ジャーマンで確認されている個体は42匹(オス6匹、メス35匹、不明1匹)。ユウカクでは50匹(オス13匹、メス37匹)。あとは、西のシークレットスタジアムのクリーニングステーションとか、マラカルチャネル、ゲロンアウト他などで確認されたマンタだ。

パラオで見られるマンタのほぼ99%がナンヨウマンタ。定住性の強い、小型の種類。この定住性のマンタの行動範囲がどれだけのものかは、定かではないが、ジャーマンとユウカクは、外洋のリーフに沿った距離で約100km、直線距離にして70km離れている。このことからも、両エリアには、違うマンタのグループが定住していると考えて良いのかもしれない。ちなみに、16km離れた、ジャーマンとその西のシークレットスタジアムでは、同じマンタの往来が高確率で確認されている。

マンタの場合、このように腹部が見える写真で、腹部の模様で個体識別を行う

ジャーマンでの、マンタ遭遇率のベストシーズンは11月から2月下旬くらい。その後1カ月ほどほとんどの個体が姿を消し、3月下旬くらいからまた姿を見せ始めるそうだ。
それに対して、ユウカクのベストは12月半ばから6月後半くらいまで。昨年11月にユウカク(003)のマンタ狙いで潜りに行ったときには、マンタ遭遇率は0%だった。
 「昨年の取材のデータを見れば11月はまだシーズンではないのかと思えますが、今回5月中に数回狙いに行った際も11月同様に完全に外してしまいました。昨年はまだ群れが狙えていたにもかかわらずここまで極端に出なかったのには、おそらく餌となるプランクトンを多く含んだ潮が上がって来ていなかったことが原因として考えられると思います。昨年11月も同じようにプランクトンを含んだ潮が上がってきていなかったので、もしかしたらいい潮さえ上がってくれば11月でも可能性があるのかなとも思い始めています。そう考えるとまだまだリサーチは必要ですね」と遠藤さん。
 
例えばヤップでは、同じ個体が西のチャネルと東のチャネルで両方確認されている。マンタのベストシーズンが夏は東、冬は西と明確に別れている。これに関して、遠藤さんは、「距離が離れていたとしても移動すべき理由があれば、移動するはずです。例えば餌となる動物性プランクトンを含んだ潮が上がってきやすいコンディションが季節によって変わるとかね。風向きと地形や潮目のバランスによって表層の潮と下層の潮が入れ替わるとか様々な要因で彼らにとっていい潮が上がってくる、来ないということが考えられると思います。ジャーマンとユウカクのマンタは、移動する必要があまりないのではないでしょうか?一時的にマンタがいなくなったとしても沖で跳ねたりしているのを見ることがあります。ダイビングエリアには来なくてもそのすぐ沖の表層から中層の間で普通に生活しているみたいなんですね。ユウカクチャネルは特にその傾向が強いように思えますが、これは沖合の中層に豊富な餌があるからではないでしょうか?」と推測する。

マンタの個体識別リスト

この他にも、メスよりオスの数が圧倒的に少ないということ。110個体中85個体がメス。これは他の板鰓類(サメ、エイ類)にも同じことが言えるのではあるが…。
確認されたブラックマンタの個体数は9個体。過去に、外洋性のオニイトマキエイらしきマンタが1個体のみ確認されているなどなど、継続して識別を行なうことで、少しずつではあるが、わかってきたことや疑問点などがこの根気のいる作業の中から新たに生まれて来る。研究者にとっても、貴重なデータに違いない。
「まだまだ継続して個体識別を続けなければ、正直本当にジャーマンとユウカクでマンタの往来がどの程度なのかは確定できないですね」と祥子さん。マンタに対する愛情も人一倍の彼女のリサーチは、今後も続けられて行くことだろう。

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