八丈ブルーに漂うブルードラゴン(アオミノウミウシ) ~ダイバーなら一度は会いたい美し過ぎるウミウシ~
美し過ぎるウミウシとして世界中で話題のブルードラゴン(アオミノウミウシ)。
ダイバーでなくとも一度は会いたいこのウミウシ、なんと日本、しかも東京で見られるのです。ということで、ブルードラゴンに逢いに八丈島(東京ですw)にやって来て、ついに、念願叶って逢うことができました!
見る人によって、美しくもあり、グロテスクでもあり、印象がわかれるようですが、その幾何学的な模様と美しい色の組み合わせは、まさに自然の創造した芸術作品。
しばらく見とれていると、おもむろに、翼のような腕のような鰓を広げてギンガクラゲを抱きかかえ、あんぐりと大口を開けて、触手にかぶりつくブルードラゴン。
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なんと、着生しているギンガクラゲを食べ始めたのです!
食べられるギンガクラゲは、「こりゃ、たまらん」とばかりに触手を自ら切断すると、一本うどんのようになった触手を口を開けて吸い込んでは閉じ、吸い込んでは閉じをくり返します。
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その様子はまさに“すすり餅”
見ているだけだと芸術品、食べている様子はエイリアンを見るようなゾクゾク感。
ずっと見ていられます。これだけでも、八丈島に来て良かった。
ブルードラゴンの探し方
風向きが合ったら漂着物を探せ!
外洋性といわれるブルードラゴンは、普段、ギンガクラゲ、カツオノエボシ、カツオノカンムリなどのクラゲに着生して浮遊生活をしており、黒潮本流域から沿岸にクラゲごと流れ着いた時がチャンス。風向きや干満がポイントで、こればかりは神に祈るしかありません……。
エントリー付近の水面にたまっている漂着物と、ブルードラゴンが好むクラゲを目印に探すことになりますが、「アラベスク」のガイド・小金沢昌博さんによると、水面に浮かんでいるのは、島から流れ出たゴミのケースも。
しかし、島からのゴミは落ち葉や人工物が多いのに対して、外洋からの漂着物は海藻や木など自然のものが多く、そこで見分けがつくのだそう。
海辺から見つけることもできるブルードラゴン。ただ、潮の干満や風の影響で、陸から観察するには微妙な距離まで離れてしまうことがあるので、ダイバーという特権を活かして、海の中からエントリー口付近の浅瀬を探索。
そして、漂着物をよく見ると、ついに……ブルードラゴン、召喚!
八丈島で見られるのは、特に潮通しのよい「ナズマド」や「八重根」など島の西側のダイビングポイントで、風表になる春~初夏といわれていますが、この季節性は、つまり、風向きとポイントの向きとの組み合わせ。違う季節、東側でも見られることもあるかもしれません。
表裏が逆!? 触るな危険!
摩訶不思議なブルードラゴンの生態
ちなみに、この芸術的な模様が描かれているのは、なんとお腹! 胃の中に空気を入れた浮力で浮いていて、ひっくり返してみると、クルリとすぐに戻ってしまいます。
◆ギンガクラゲを食べるブルードラゴン
美しいブルーは、水面から見た時に水の青に溶け込む保護色といわれており、背中は白っぽい。これは逆に、水中から見上げた時の保護色なのかも。
刺胞毒を持つクラゲ本体はもちろん、ブルードラゴンもクラゲの触手を体内に貯蔵しているので、触らないように注意が必要。
まさに、美しいものには毒があるというわけです。
和名のアオミノウミウシは、見たまんま、“青い蓑”ですが、ネーミング的にはちょっとシブい。オニイトマキエイでなくマンタというネームが定着したように、ブルードラゴン、ブルーエンジェルのような愛称の方が親しまれそうですね。
ちなみに、クリエーターたちも、クラゲの刺胞でなく、美しい容姿にイマジネーションを刺激されるようで、擬人化キャラクターもすでに多く作られているようです。
黒潮の海、八丈島のポテンシャルを象徴するようなブルードラゴンとの出逢い。
八丈島に来て良かった。そして、ダイバーやってて良かった……。
◆学名:Glaucus atlanticus
◆和名:アオミノウミウシ
◆裸鰓目ミノウミウシ亜目(Aeolidina)アオミノウミウシ科(Glaucidae)アオミノウミウシ属(Glaucus)
◆分布:世界中の温帯域、熱帯域
海表面に浮いて、潮や風によって運ばれるカツオノエボシについて浮遊生活を送る。カツオノエボシは刺胞動物門ヒドロ虫網クダクラゲ目カツオノエボシ科に分類される生き物で刺胞をもつ。本種はその刺胞を取り込んで体内の刺胞嚢に貯蔵する。本種は胃腔中の気泡の浮力で腹面を上にして海に浮かぶ。腹面は青色または青色と白色で、海の色に擬態している。一方、水面下にある背面は銀灰色で、空の色に擬態している。一方、水面下にある背面は銀灰色で、空の色に擬態している。50ミリに達する。
◆撮影/関戸紀倫
◆取材協力/八丈島ダイビングショップ「アラベスク」