JAUS(日本水中科学協会)に期待したいこと
今、注目されているダイビング業界における新たな動き。
JAUS(日本水中科学協会)の発足。
※通称”ジャウス”(Japanese Academy of Underwater Sciencesの略)
その活動テーマは、
「スクーバ&スキンダイビングで目標とする水中活動を安全に成功させること」
とのコンセプトのもと、
研究者などサイエンスダイバーやプロダイバーのための水中活動基準から、
ソロダイビング、保険、危機管理、沿岸漁業との共存、
セルフダイビングなどなど、多岐に渡る。
※詳しくはホームページの「基準・プロトタイプ」を参照ください。
ちなみに、僕は現在のJAUSの本質は、
「ダイビング界を黎明期から牽引してきた代表の須賀次郎さんが、
ダイビング業界の矛盾やグレーゾーンをクリアにしたい、
もっと真剣に知的な遊びをしたいと本気で取り組もうとしている会」ととらえている。
代表の須賀次郎さん
いろいろなしがらみを越えて、健全に楽しく潜ろうという思いにはとても共感が持てるし、
微力ながらお手伝いをさせていただきたとも思う。
ただ、テーマが多岐に渡ると先述したが、逆にいえば、
“何がやりたいか(何を一番やりたいか)”、誰が対象かがわかりずらいとも言える。
テーマを絞ることが大事だろう。
■期待したいこと
私がJAUSに一番に期待したいのは、
“マイノリティーダイバー”を対象とした基準の確立。
そもそもJAUSが発足するきっかけは何か?
それは、東京大学の学長が送検される事態にまで至った、
平成17年の東京大学の研究者の事故で、
特殊なダイビングをする研究者のダイビングルールの
確立が求められての動きだと僕は解釈している。
日本の最高学府の研究が滞る事態は、日本の科学文化が滞るのと同じ。
そうした事態の打破として手を上げた須賀さんは同じダイバーとして誇らしく思うし、
サイエンス・ダイビングの確立はダイビング業界の科学文化への貢献にもつながると考える。
当初の目的であったはずのサイエンス・ダイビングの確立。
この意義深い活動をまずは一番に力を入れて欲しいと期待したい。
その他、環境保全や調査のためのダイビング、
プロカメラマンや学生などの特殊なダイビング、
いわゆるマイノリティーなダイビングをするダイバーたちの
安全の拠り所となることが最大の存在意義ではないだろうか。
■レジャーダイバーとの関わり
当初、一般のレジャーダイバーは、まずは活動の対象にしなくてもいいと思っていたが、
先日、第一回のシンポジウムが行われたので会場へ行ってみると、
参加者256人という盛況ぶり。しかもレジャーダイバーもかなり占めている様子。
これは、意識の高いダイバーの「なぜ?」「こうしたい!」「おかしいぞ」
といった思いの受け皿がない証拠ではないだろうか。
つまり、意識の高いダイバーが今ではマイノリティーということだ。
ただし、肯定的に“意識が高い”ととらえたが、ダイビング自体の在り方の変質とともに、
“マニアック”なダイバーととらえることもできることを忘れてはいけない。
「なんでサービスを通さないと潜っちゃいけないの?」
「Cカード講習って取りっぱなしでいいの?」
「自由気ままにセルフダイビングしたい」
意識の高いダイバーが当然行き着くであろう
疑問や欲求の受け皿としてJAUSがあってもいいのかもしれない。
実際、セルフダイビングの研究会が発足されているが、
こうしたワークショップ的な動きは大変有意義だと思う。
シンポジウムでは、JAUSが発行するVカードについても説明があった。
ダイバーになるためのCカード(Certification Card)に対して、
自己責任で潜るためのVカード(Vertification Card)。
どんなにブランクがあっても同じCカードホルダーであり、
講習内容がいい加減でもCカードホルダーであるという問題意識から、
「自己責任で潜れるレベル」の水中技能と知識を認定し、更新制にするとのこと。
ただ、僕はCカード(認定)の不備に対しては、
“人が集まって、新たなカード(認定)を作る”より、
“人が集まって、既存のカード(認定事業)に働きかける”方がいいと思っているので、
こちらは慎重に見守っていきたい。
■まとめ
発足したばかりのJAUS。
代表である須賀さんの経験と知識はダイバーにきっと役立つし、
マイノリティーダイビングへの貢献の期待は大きく、
「ダイビング業界の垣根を壊したい」という須賀さんの言葉だけで、
今は応援するに十分足ると考える。今後の展開で良い選択をしていくだけだ。
ということで、早速、入会の申し込みをすることにした。
2011年、どんな動きを見せるのか注目しつつ、少しはお手伝いできたらと思う。
■日本水中科学協会
http://www.jaus.jp/