古見きゅう写真集「WA!」出版記念インタビュー
第3回:最後にもう一度、写真集「WA!」のはなし
いぬたく
この写真集のポイントの一つ、フキダシというアイディアは最初から考えていたんですか?
古見
最初はフキダシじゃなかったんです。写真の下に言葉を書こうかなと思っていて。それがデザイナーさんのおかげですごい綺麗にフキダシが入って。「これだったらじゃあフキダシの方が楽しいよね」ということになって。
いぬたく
フキダシっていうアイディアが面白いですよね。
古見
全部僕が書いてしまうことはすごい簡単だったんですよ。それはなんでかというと、常に僕はそういうことを考えながら撮っているので。でも全部僕が書いてしまうことによって写真集を見てくれる人たちは「あー、そうなんだ」「あー、そうなんだ」「あー、おかしいね」で終わっちゃうと思うんですね。
でもそうやってブランク(空白)のフキダシがあることによって、いろんなことが想像できると思うし、例えば嬉しいことがあった日に見たときと悲しいことがあってその本を開いたときと、やっぱり印象が違うと思うんですよ。気分によって。そういう見方ができるんじゃないかと思ってあえてブランクを作った、という感じがありますね。
いぬたく
写真を見るときに受け身になるだけじゃない、っていうことでもありますよね。
古見
うん、うん、うん。
いぬたく
最後に、この写真集と一緒に伝えたいメッセージがあればお願いします。
古見
色んな人に楽しんでもらえたらすごく嬉しいです。海のなかでもいろんな生き物たちがコミュニケーションとっているんだっていうのが感じられるような、どっちかというと温かい感じの本になってると思うので。
親子であったりとか、プレゼントで送ってもらったりとか。いろんな楽しみ方ができると思うので、自由に楽しんでもらえたらいいかなと思います、はい。
いぬたく
今日はありがとうございました。
インタビューを終えて
スキューバダイビング.jp初となるインタビューは、僕が以前から親交のある古見きゅうさんにお願いして実現することができました。
インタビュー中にもありますが、古見さんは“世の中”をしっかりと捉えていてそこにしっかり視点を定めている、稀有な水中写真家です。言い換えるとそれは意識が外向きということでもあるのですが、ただ今回のインタビューでは古見さんの中に宿っている“芸術家指向”もちらっと顔を覗かせて、とても興味深いものになったと思います。
話の中でも、「訴えたいのはより多くの人」という一方で、「響くものは響く、分かる人には分かる、というのもなんか良いな」ともおっしゃっていました。
誰にでも楽しんでもらいたいというサービス精神と、職人のように作品を追求していく芸術家精神。その二つが絶妙にミックスされて、水中写真家・古見きゅうが出来上がっているのだと強く感じました。
また、水中写真を見せられた古見さんのお父様が「全然面白くない」と率直な感想を言ってくださる方だったからこそ、今の古見さんが生まれているんだな、とも(笑)
今後の活動も、ぜひ期待しています!