ダイビングで探してみたいハゼ20選~人気の種類・特徴、見られる環境を徹底解説

ハゼの仲間は、魚類の中で最も巨大なグループのひとつ。世界中の海や河川から2000種以上が報告されています。前回は「テッポウエビと共生するハゼ」に的を絞って紹介しましたが、今回はそれ以外のハゼの中からダイバーに人気が高い20種をお届けします。

そもそもハゼってどんな魚?

日本人には昔からなじみのある魚、ハゼ。防波堤など陸から狙えるハゼ釣りは、道具もお手軽なうえ釣ったら美味しくいただけるということでファミリー層に人気です。

ただ、ハゼ釣りのターゲットはマハゼやウロハゼなど地味な種類。河口域などに生息するためスキューバダイビングで見る機会はほとんどありません。また、“だぼはぜ”という標準和名の魚は存在せず、ドロメやチチブなど釣りの対象となる種類の総称です。

約2000種のハゼが世界中に分布

現在、海水魚・淡水魚を合わせて3万弱の魚類がいるとされ、そのうちハゼの仲間は2000種前後だそうです。海水魚の中では、2位のベラの仲間(約500種)を抑えて、圧倒的に巨大なグループといえます。

種数が多いうえに分布域も広く、南極・北極海域を除いて世界中にハゼの仲間が生息しています。生息環境は砂地や岩礁、藻場、干潟、水深数百mの深海まで様々。イシサンゴやソフトコーラルなどの刺胞動物、カイメンやホヤなどと共生関係にある種もいます。
さらに、海だけではなく、河川や湖沼など淡水域にもハゼたちは進出しているのです。

主な体の特徴は?

一般的なハゼの体形

ハゼ

❶体は円筒形で、やや細長い ❷背ビレは2基に分かれる種が多い ❸左右の腹ビレは癒合して吸盤状になる

上の画像は基本的なハゼの体の特徴です。ただ、例外もあります。例えば遊泳性の種類はかなりスレンダーな体形で、サンゴハゼの仲間などはずんぐりしています。左右の腹ビレも、癒合して吸盤状となる種類がほとんどですが、その程度は様々です。

他の生物の上で暮らすハゼたち

他の生き物の上や周辺で暮らすハゼはたくさんいます。対象となる生物はホスト(宿主)といい、ハゼにとっては大切な隠れ家でありマイホームとなります。

イシサンゴ周辺を探る!

①アカメハゼ

和名の通り目の周辺が赤く、シースルーのボディで腹部の黄色がよく目立つ。枝状サンゴの周辺をホバリングしており、枝の隙間に潜り込むこともある。大きさ1~3cm。◆分布/琉球列島:インド-太平洋

②ベニサシコバンハゼ

アカメハゼ

テーブル状サンゴの枝の隙間などに隠れており、全身を見るチャンスはなかなかない。よく似た種類にアカテンコバンハゼなどがいる。大きさ1~3cm。◆分布/琉球列島:西部太平洋

③レモンコーラルゴビー

レモンコーラルゴビー

目とエラ付近に青白い線が2本ずつ通ることで他種と識別しやすい。日本では未確認だが、インドネシアやグレートバリアリーフなどで見られる。大きさ1~3cm。◆分布:インド-西太平洋

ムチヤギやウミトサカを探る!

④ガラスハゼの仲間

ガラスハゼの仲間

ムチヤギやムチカラマツ(海底から生える細長い刺胞動物)の上に暮らす。よく似た種類がたくさんいて識別は難しいが、見つければ観察しやすい。大きさ1~3cm。◆分布/南日本の太平洋岸、伊豆・小笠原諸島、琉球列島:インド-太平洋

⑤スケロクウミタケハゼ

スケロクウミタケハゼ

ウミトサカやトゲトサカなどの上で暮らす。眼から吻に伸びる赤線が目印。ホストが美しいので、水中写真のモデルとして人気がある。大きさ1~3cm。◆分布/南日本の太平洋岸、伊豆諸島、琉球列島:インド-太平洋

ホバリングするハゼたち

ハゼというと海底や他の生物の上にいて、あまり泳がないイメージがありますが、低層に浮いて暮らす種類もいます。いずれも驚かせると海底の穴や隙間に逃げ込むので近寄るときは注意。

人気の「旗立て」トリオ

⑥シコンハタタテハゼ

シコンハタタテハゼ

ハタタテハゼ属の仲間は世界に4種ほど、日本ではそのうち3種が生息している。いずれも第1背ビレの前方が長く(ハタタテの由来)、海底近くにホバリングしている。
「シコン」は漢字で「紫紺」、その体色から和名がついた。やや深場を好むため出会うチャンスは少ないが、とても美しい。以前は和名がなく、学名から“ヘルフリッチ”と呼ばれていた。大きさ4~6cm。◆分布/高知県・柏島、琉球列島、小笠原諸島:中・西部太平洋

⑦ハタタテハゼ

ハタタテハゼ

3種の中で最もポピュラー。水深数mから見られ、礁斜面のガレ場や砂礫が混じる砂地を好む。大きさ4~6cm。◆分布/南日本、伊豆・小笠原諸島、琉球列島

⑧アケボノハゼ

アケボノハゼ

礁斜面の水深20m以深で出会うことが多く、砂礫や砂泥の低層にホバリングしている。大きさ4~6cm。◆分布/高知県・柏島、伊豆諸島、琉球列島:インド-太平洋

サンゴ礁で会いましょう

⑨ゼブラハゼ

ゼブラハゼ

水深10~20mほどのサンゴの根の周辺の中層を遊泳する。独特の模様で識別は容易だが、警戒心が強い。大きさ7~10cm。◆分布/南日本の太平洋岸、伊豆・小笠原諸島、琉球列島:インド-太平洋

⑩スジクロユリハゼ

スジクロユリハゼ

クロユリハゼの仲間は黒っぽい種類が多いが、本種はゼブラハゼ(⑨)と並び模様が派手。生息水深は30~40m以深とやや深い。大きさ4~8cm。◆分布/南日本の太平洋岸、小笠原諸島、琉球列島:インド-西太平洋

⑪アオギハゼ

アオギハゼ

岩や根の亀裂、オーバーハングといった薄暗い場所で見られる。仰向けの姿勢でホバリングしていることが多い。大きさ1~3cm。◆分布/南日本の太平洋岸、伊豆諸島、琉球列島:台湾

⑫キンセンハゼ

キンセンハゼ

特徴的な模様で識別は容易。やや内湾的な環境を好み、サンゴの根の周辺やガレ場などで見られる。生息水深は2~10mとかなり浅い。大きさ3~5cm。◆分布/伊豆諸島、琉球列島:インド-太平洋

近場で出会うソックリさん

⑬キヌバリ

キヌバリ

南日本の岩礁域や藻場などで普通に見られる。生息水深も10~15mと浅い。日本海側の個体は、太平洋側の個体(画像)よりボディの黒線が1本多い。大きさ5~8cm。◆分布/北海道南部以南の南日本:朝鮮半島

⑭チャガラ

チャガラ

キヌバリ(⑬)とよく似るが、体のストライプが橙色なので識別は簡単。水深15m以浅に多く、藻場(海藻の林)の中層で群れることがある。大きさ5~8cm。◆分布/青森県以南の南日本:朝鮮半島(写真/堀口和重)

海底で暮らすハゼたち

空き缶やビン、貝殻をチェック!

⑮ミジンベニハゼ

ミジンベニハゼ

内湾的な環境の砂地や砂泥底に生息。生息水深も10~30mと手ごろ。西伊豆・大瀬崎などでは、海底に落ちた空き缶や空き瓶の中に産卵するところを観察できる。自然界では、巻貝の空き殼(写真)や死んだフジツボの内部などを産卵床(卵を産み付ける場所)として利用している。姿や生態がよく似た種類にナカモトイロワケハゼ(⑳)、イレズミミジンベニハゼなどがいる。大きさ2~3cm。分布/南日本、琉球列島

砂地やガレ場をチェック!

⑯ホムラハゼ

ホムラハゼ

サンゴの根の下やガレ場の石の下などを好む。独特の模様で他種との識別は容易だが、そもそも個体数が少ない。大きさ2~3cm。◆分布/和歌山県、高知県以南の太平洋岸、琉球列島:インド-太平洋

⑰サビハゼ

サビハゼ

砂泥の海底を好む普通種。頭部の下側にヒゲのような突起があることが特徴。姿は地味だが、冬の産卵生態は面白い(後述)。大きさ8~12cm。◆分布/青森県以南~九州:朝鮮半島、済州島(写真/堀口和重)

⑱通称“カニハゼ”

カニハゼ

2基の背ビレそれぞれに眼状斑があり、これをカニの目玉に見立てて通称がついたらしい。日本での生息は未確認だが、パラオやフィリピン、インドネシアなどの砂地のダイビングポイントで見られる。大きさ3~5cm。◆分布/西部太平洋

⑲クロイトハゼ

クロイトハゼ

砂礫交じりの砂地で、ペアで見られることが多い。大きな口で餌を砂ごとほうばり、不要な砂はエラから出すという食事シーンが見られる。大きさ10~15cm。◆分布/南日本の太平洋岸、伊豆大島、琉球列島:インド-太平洋

ハゼの卵をウオッチング

種ごとに変わる産卵場所

ハゼの仲間は、粘着性の卵を産むことが知られています。オスが産卵床を探してきれいにし、メスを誘うという種類が多いようです。産卵後はオスだけが残って孵化まで卵を守る種類もいれば、ペアで一緒にいる種類もあります。産卵床は種類によって様々ですが、代表的な3パターンを紹介しましょう。

⑳ナカモトイロワケハゼ

ナカモトイロワケハゼ

空き瓶などを産卵床とすることもあるが、自然の状態では貝殻や小石などに産卵する。ハゼの下に見える赤い粒が卵。伊豆半島などでよく見られるミジンベニハゼ(⑮)とそっくりだが、本種は熱帯性で頭部から背中にかけて入る白帯で識別可能。大きさ2~3cm。◆分布/琉球列島:パプアニューギニア

サビハゼの卵

サビハゼの卵

サビハゼ(⑰)は冬、転石下や岩の根の下の亀裂などに産卵し、孵化するまでオスが守っている。天井からぶら下げるように卵を産み付けるため、まるでシャンデリアのように見える(写真/堀口和重)

ガラスハゼの卵

ガラスハゼの卵

ムチヤギなどの細長い刺胞動物の上に暮らすガラスハゼの仲間(④)は、ホストの表面をむしり取って産卵床をつくり、オスが孵化まで守る。住み家を提供する側としては、ちょっと迷惑かも

駆け足ですが、スキューバダイビングで見られるハゼの仲間を紹介しました。ここで紹介したのは、ハゼの仲間のホントにほんの一部。興味をもった方は、ぜひ図鑑の購入をご検討ください。

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PROFILE

東京水産大学(現東京海洋大学)在学中、「水産生物研究会」でスキンダイビングにはまり、卒論のサンプルであるヤドカリ採集のためスキューバダイビングも始める。『マリンダイビング』『マリンフォト』編集部に約9年所属した後フリーライターとなり、現在も細々と仕事継続中。最近はダイビングより弓に夢中。すみません。

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