言葉の服用 〜桜木町列車火災事故とPADI基準〜
■ぽっぽ屋ダイバーさん
前回、桜木町列車火災事故を契機に安全綱領が定められたというお話を致しましたが、
当時の運輸省は安全綱領だけでなく、
鉄道従事員が安全のために「服用」しなければならない10個の事柄を定めました。
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「服用」という言葉は薬を飲む時にしか使わないと思っていましたが、
こういう使い方もあるのですね。
薬を飲むように、この言葉を身体に染み込ませ、
常に念頭に置いて仕事をしなければいけないということでしょう。
ちなみに私は、会社の研修で以下の10個の事柄を神々しい物として扱い、
一言一句丸暗記をさせられました(句読点の位置まで!)。
実際の省令はややこしい言い回しなので超意訳バージョンで並べてみたいと思います。
1.決まりごとを携帯しましょう。
2.決まりごとを理解しましょう。
3.決まりごとを守りましょう。
4.作業はしっかりやりましょう。
5.連絡は徹底しましょう。
6.確認も徹底しましょう。
7.運転状況を把握しましょう。
8.時計をメンテナンスしましょう。
9.事故を防止しましょう。
10.事故が起こったら人命が最優先です。
どうでしょう。
7の「運転状況」を「海況」に、8の「時計」を「器材」と言い換えれば、
そのまますぐにダイビングに応用できますね。
ダイビングでは既に、前述の10個の事柄よりも更に詳しい行動規範が定められています。
それはPADIダイブマスターの教科書の冒頭に示されています。
レスキューまでとは違い、ダイブマスターからは
プロレベルであることを再認識させられることであります。
PADIの行動規範を詳述は致しませんが、
19個にも及ぶ項目の一つでも逸脱するとPADI資格を喪失すると書かれています。
「言葉を服用」「資格を喪失」
言い方は違えど、どちらもとても強い言葉です。
鉄道もPADIにおいても行動規範は、すべて言われなくたって当たり前の事柄です。
しかし、この当たり前の事柄を強い言葉で守るように書かれ周知するのは、
これらを逸脱したときに事故が起こるという教訓からです。
ダイビングの安全に対する意識、プロフェッショナル性にプライドについて、
私はファンダイバーとしていずれの土地のどんなショップへ行ったとしても、
インストラクターは高いレベルにあると感じています。
インストラクターは、ファンダイバーに対して楽しませようという雰囲気を前面に出しながらも、
見えないところで相当な気遣いしていることを、
意識あるダイバーの皆さんは気付いていることでしょう。
それこそまさしく、行動規範が広く浸透し、
インストラクター一人一人が言葉を「服用」した成果あり、
鉄道もダイビングも、過去の先輩方が築いてきた安全文化の醸成と言えるでしょう。
しかし、いくら高い意識を持っていても意図せず(時にはあえて)、
行動規範を逸脱してしまう時があります。
そんなことはあり得ないと一体誰が言えるでしょうか。
また、そんなふとしたキッカケで事故の芽が生まれることを私たちは知っています。
また日を改めて、そんな事故の芽が生まれたときのお話をしたいと思います。