PADI AWARE・水中クリーンナップin平沢。ocean+α編集部も参戦して、タイヤ・釣り竿・懐中電灯など回収
世界的なダイビング教育機関「PADI」が、クリーンナップ強化週間「AWARE WEEK」の初日である9月17日(土)に、静岡県沼津市のダイビングサービス「平沢マリンセンター」主催のイベントに協力し、総勢69名のダイバーが参加する水中クリーンナップを実施した。今回、オーシャナ編集部を代表して参戦してきたセリーナが、当日の様子をレポートしていきたいと思う。
PADI創立者であるジョン・クローニンは、PADIが海洋環境を保護する責任があることを常に認識しており、1989年にNPO法人である「Project AWARE FOUNDATION (現:PADI AWARE FOUNDATION)」を設立。水中環境の啓蒙・教育・保護活動・支援などを行い、日本でもダイビングショップやダイビングインストラクターが実施するクリーンナップやサンゴの保全活動、海洋環境について学ぶコースの開催などの活動を「PADI AWARE」として行っている。その一環として2018年から始まった世界的なクリーンナップ強化週間「AWARE WEEK」は、海洋汚染や海洋プラスチックに対する意識向上、海洋環境保護のため積極的に行動する地域社会の力を高めること目的とした1週間。今年は9月17日(土)~25日(日)とされた。
水中クリーンナップポイントは「内浦漁業協同組合前の港内」
PADI AWARE・水中クリーンナップには、ダイバーだからこそできる環境保全活動を通して、ダイバーや地域に働きかけ、ダイバーの社会的認知の向上、そして国をあげた環境保全活動の促進に繋げるという目的がある。そこで、今回の会場となったのが、かつてから環境保全活動への取り組みを積極的に行なっている静岡県沼津市のダイバーが普段潜ることのできない「内浦漁業協同組合前の港内(※)」。PADIの事前調査で、通常ファンダイビングで潜るポイントよりも多くのごみが沈んでいることがわかっているポイントだ。
※今回は内浦漁業協同組合(以下、内浦漁協)に特別な許可を得て潜る。
沼津市では、環境にやさしいまちづくりを政策の柱に掲げ、市民一人ひとりが身近なエコ活動に取り組む「エコのまち沼津」を推進。
たとえば、市民、事業者、行政が一体となって、2050年までに二酸化炭素排出量実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティNUMAZU2050」の表明や、市民・市民団体等が自ら行う環境保全活動や環境学習の支援など、さまざまな取り組みを行っている。今回のイベントでも沼津市が後援につき、ごみ袋の提供や焼却施設への無料受入に協力している。
▶︎沼津市公式ホームページ
AM9:00、受付場所に到着!
では、早速イベント当日の様子をレポートしていこう。
平沢マリンセンター前にはPADIブースが設置されており、参加ダイバーはここで受付をする。
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参加ダイバーをお出迎えするPADIブース
水中クリーンナップ参加者特典の「AWAREメッシュバック」やPADI Gear割引クーポン、移動キッチンカーで使えるクレープ500円割引券などをいただき、俄然やる気が出てきた。
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AWAREメッシュバック
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環境への配慮が詰まった”PADI Gear”の最新アイテム
受付を済ませたわたくしセリーナは、水中クリーンナップのメイン会場である「内浦漁業協同組合前の港内」に向かった。ここは“コ”の字型の港になっており、漁船が停泊している場所だ。港内で潜ったことのあるダイバーはほとんどいないと思うが、私もその一人で、水中はどのようになっているのだろうとワクワクした。
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内浦漁業協同組合前の港内
内浦漁協の職員にこの辺りのごみについて少しお話しを伺ってみた。「沼津市では、20年前ほど前から海岸のごみ清掃などは行っていますが、台風の影響で漁具が海に落ちてしまうこともあるので、海底にはいろんなものが落ちているんじゃないですかね…。私たち職員は水面からしか海を見られず、ごみが減ったら将来的に魚が増えたりすることもあると思うのでダイバーが海に入ってごみを回収してくれるのはとても助かります」と話した。やはり水中クリーンナップは、ダイバーだからこそできる環境保全活動なのだ。
いよいよ水中クリーンナップスタート!
そうこうしているうちに参加ダイバーも続々と集まってきた。オーシャナ編集部も準備万端。先に水中クリーンナップをおこなってきたチームからは「海は綺麗なイメージでしたが、想像よりごみがあった」、「空き缶や空き瓶が多かった」、「いいことをした気分で、やりがいがある」という声が。ごみがあるのは良いことではないが、どんなごみがあるのか、どのくらい回収できるのか楽しみになってきた(笑)。
さて、AWAREメッシュバックにごみをたくさん回収していくぞ〜!
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参加ダイバーの皆さん
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気合が入っているオーシャナ編集部・セリーナ
いざ水中クリーンナップ開始!
水深は深いところで12mほど。透明度は台風の影響もあり5〜10mくらい。水中に入ると早速、空き缶や空き瓶、ロープなどのごみが。今では見かけることのない年季の入ったパッケージのごみもちらほら。
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港内には、魚がいないイメージだったが、意外にもネンブツダイなどの群れがいたり、ごみを拾いつつも水中生物を観察して楽しむことができた。しかし一方で何の罪もない水中生物が、人間が捨てたごみの中で健気に暮らしていることに対して、心苦しい気持ちにも。
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ダイビング歴4年、南は沖縄から北は北海道まで、ダイビングのメインどころは潜ってきたわたくしセリーナもこんなにごみのある場所は潜ったことがない。私たちが普段ファンダイビングで潜っているポイントは綺麗な場所だからこそ潜るわけで、海のほんの一部でしかない。今回潜った港内をはじめ、ファンダイビングのポイント以外の場所や海底といった、人の目に触れることのない海には途方もないごみが沈んでいることに、改めて気付かされた。
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水中生物が住処にしていないか確認してからごみを拾う
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車のタイヤも発見!
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リフトバッグでタイヤの回収に挑戦
約45分間の水中クリーンナップが終了。結果は…。
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(撮影:PADI)
AWAREメッシュバック2つ分と、タイヤ1つを回収。やはり空き缶と空き瓶が多かった。
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他の参加ダイバーたちも袋いっぱいにごみを回収。長靴や釣り竿、釣り具なども。
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また、本イベントにはPADIアンバサダイバー・TWINSのコウ氏、稲生薫子氏も駆けつけ、参加者とともに水中クリーンナップを行った。
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左から、稲生薫子氏とTWINSのコウ氏
ごみ回収後は、“データ入力”までするのがPADI流
ごみをたくさん回収したし、これで水中クリーンナップは終了…、ではないのだ。PADI AWAREの一環として、今回の水中クリーンナップは、市民科学プログラムとして認定されている 「Dive Against Debris(ダイブアゲインストデブリ)」のルールに則り、水中から回収したごみを陸上に集め、各グループでごみの仕分作業を行い専用サイトにデータの入力まで行う。これらのデータはPADI AWARE FOUNDATIONによって、海を保護するための世界的な活動に活かされる。
仕分作業の結果、水中クリーンナップの参加者69名で回収したごみの総重量は132.49kg、回収したごみの数は288個(※)に及んだ。
※プラスチック:132 ガラス/陶器:34 金属:56 ゴム:1 木材:14 衣類/布:2 紙/段ボール: 混合素材:9
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参加者全員でこんなにたくさんのごみを回収
最後には、参加ダイバー全員で記念撮影を行い、本イベントは無事に幕を閉じた。
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(撮影:PADI)
主催の平沢マリンセンター・センター長は水中クリーンナップを終えてこう振り返る「ダイビングを含めた観光業によって沼津市の経済を回していくためにも、レジャーダイビングを持続可能なアクティビティにしなければなりません。ダイバーによる環境への悪影響を可能な限り減らしたうえで、さらに今回のようなイベントを通して、日常生活における今後の行動も変わるきっかけになればと思っています」。
ダイバーは、海洋環境への大きなムーブメントを起こしていくことができる存在であると私は信じている。おそらく、水中クリーンナップに参加したダイバーの多くが水中のごみの多さに驚き、なにかしらの気づきや想いを抱いたに違いない。それらをできるかぎり発信し、多くの人を巻き込んでいくことができれば、美しい海の環境をいつまでも守っていくことができるのではないだろうか。