「安全のためにダイビング器材を買う」は本当か!?

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ダイビングを始めたばかりの方に、
申し訳なさそうによく聞かれる質問。

レンタル器材じゃダメですかね……?

「別にいいんじゃないの」とお答えしている。
聞けば、イントラに「安全のために買うべき」と言われるらしく、
中には「危険なんですかね〜?」なんて不安がる人も。

そもそも器材を所有することとはどういうことか。
何のためにマイギアにするのか、僕は大きく分けて、
以下の3つのことがポイントだと考える。

・安全
・快適
・気分

■安全の押し売り!? (安全)

どんなスポーツやレジャーでも、慣れた道具は使いやすく、
トラブルにも瞬時に対応が可能。
車だって、他人の車を運転するときは最初緊張する。
自分の器材を持った方がより安全というのは、
ことさら説明するまでもなくわかりきった答えだ。

しかし、あえて言わせてもらえれば、
安全もひとつの大きな要因に過ぎないということだ。

なぜ、“あえて”と言ったかといえば、
マイギアは安全のために持つべきだというのは正論だが、
安全を錦の御旗として、「安全のためには自分の器材を持つべきです!」と、
同調圧力にも似たアプローチがなされているなら間違いだと言いたいからだ。

実際にそういうことがあるから、僕の元にも、
すまなそうに「レンタルじゃダメですかね〜」と
質問してくるダイバーが絶えないのかもしれない。

ダイビングにとっての安全は最も大事なことだが、
その安全を追求するだけでなく、安全の範囲を見極めて、
選択肢を増やす、許容の幅を広くすることも、
業界の発展、その遊びそのものの発展のために大事だということが見逃されがちだ。

「安全のためにはマイギアを持つ」という誰でもわかる正論も大事だが、
「BCとレギュレーターが変わったくらいでそんなに危険かな〜?」
という視点も大事だろう。

■器材はなんだかんだ重い (快適)

器材はなんだかんだ重い。
大荷物を持って移動するのは大変だし、飛行機で行く場合はエキセスの問題もある。
器材を持ち運ぶかどうかで、ツアーの快適度は大きく左右する。
器材をレンタルにして、快適なツアーにしたい気持ちは当然過ぎるほど当然だろう。

また、器材はダイビング自体の快適度を左右する。
おもしろいもので、潜りこめば潜りこむほど、「別に器材なんてどれでも大丈夫」と
「マイギアでないと絶対にダメ」と二通りのダイバーに分かれる。

前者はダイバーとして成熟しどんな器材でもすぐにフィットできてしまうということで、
後者は熟練だからこそ微妙なバランスやフィット感にこだわるダイバーである。

つまり、人によっても異なり、
前者のダイバーにとってはレンタルで何ら問題ないが、
後者の場合、マイギアかどうかはとても重要な問題だろう。

以上のことから言えることは、まず、マイギアが安全で快適なのは間違いないが、
移動の大変さや個人の許容範囲や懐具合、海の状況などを相対的に考えて、
レンタル器材で潜るのもまったくもって「あり」ということだろう。
だから、レンタル器材でいいの?と聞かれれば「別にいいのでは」と答えるのだ。

実際、自分の場合も、やはりマイギアの方が潜りやすいので、
近場に車で潜りに行く場合はマイギアで潜るが、
海外の場合は荷物も多いので、レギュレーターだけレンタルにしている。
ただ、僕の場合はBCやフィンを変えるのが嫌だが、
逆にレギュレーターだけ持っていく人もいて、
何をレンタルにするかも人によって違うのでおもしろい。

「安全のためにダイビング器材を買う」は本当か

■器材は“欲しいから”買う (気分)

ここまで、器材を持つ理由として、安全やら快適やらの話をしてきたが、
僕は案外、気分の問題が一番大きいのではないかと思う。

安全とか快適かとかいう前に、持ちたいかどうか、欲しいかどうか。

よく持ち家と借家はどちらが得かという議論があるか、
損得とはまったく次元の違う問題として
「なんか、一国一城の主な気分になれる持ち家がいい」という、あれ。

スポーツでも帰属意識というか、大げさな話しとしては
アイデンティティに関わる問題で、道具は持っていたい。
別にサーファーがボードを持っていなくてもいいが、
ボードも持っていないのに「俺、サーファー」とは言いづらい。
スポーツや遊びにハマるとき、その道具を持つこと自体が嬉しいことだし、
持ちたいという欲求が生まれるのが自然だろう。

同じようにダイビングでも、潜っておもしろいと思った人は、
器材が欲しくなるだろうし、器材が手にすれば初おろしにはワクワクする。
自分がダイビングを始めたときも、無条件に欲しかった。

だから、僕はレンタル器材でもいいのですか?と聞いてくる人に、
「別にいいのでは」と答えてから、「器材、欲しいですか?」と聞く。
するとほとんどの答えは「欲しい」。
そして、続けて「欲しいけど、お金がきつい」。
※もちろん、欲しくない人もいて、そういう楽しみ方もありだろう。

そうだとしたら、レンタル器材で潜れる環境や
徐々にそろえられるアドバイスをしてあげるのが一番。
もちろん、どれだけ快適か安全にメリットあるかを伝えて、
「欲しい」の欲求を強めることはありだが、
安全をちょっとした脅しに使って、
いきなり買わせようとするのはナンセンスだと思うのだ。

はっきり言ってレンタルだってダイビングは楽しめる。
でも、マイギアの方が安心で快適なのは確かだし、
何より、器材欲しくないですか? ってことだ。
そして、欲しくてもいきなり一式すべての購入が厳しい人は
徐々にそろえていけばいいし、
欲しくない人はレンタル器材でのダイビングライフもありだろう。

【おまけ】
ダイバー154人に聞きました!
Q.海外ダイビング。マイギア? レンタル?
■フル装備・マイギア 127票(82%)
■フル装備・レンタル 3票(2%)
■一部レンタル 16票(10%)
■TPOで変える 8票(5%)
■その他 0票(0%)

これを見ると、多くの人が移動の苦労をしてでもマイギアで潜りたいというのがわかる。
マイギアが安心で快適なのはやはり間違いない。

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writer
PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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