器材は見えないところで劣化する~オーバーホールの必要性~

レギュレーターやインフレーターといったオーバーホールを必要とする器材の中に、最も数多く使用されている部品がOリング。

では、なぜ「Oリング」という名称なのかご存知でしょうか?

■Oリング

オーバーホールとOリング

「見ての通り、輪の形がアルファベットのOに似ているから」。
そう思われるかもしれませんが、実はそうではありません。

新品のOリングを切ってみると…

オーバーホールとOリング

断面がOの形状になっています。
これがOリングという名称の由来です。

新品のOリングはこのようにきれいな真円の形状をしており、弾力があります。
ですが器材の中に組み込まれて期間を経ると、固定部のOリングは部品と部品の接着圧で、可動部のOリングは摩擦も相成り、徐々に形状が変化してきます。

■押し潰されて変形したOリング

オーバーホールとOリング

■切れが生じたOリング

オーバーホールとOリング

このように、器材の使用頻度に関わらず、Oリングは経年劣化していく部品ですので、定期的な交換を必要とするというわけです。

わかりやすい例えをすれば、古くなった輪ゴムは油分が抜けて弾力を失いちぎれてしまう、同じゴム製の部品であるOリングも同様です。

真円(Oの形状)でなくなったら、もうOリングとは呼べませんよね。

その他にも年数を経ると自然に劣化し、交換を必要とする部品が幾つかあります。

例えば、レギュレーターのフェイスカバー。
ウレタン素材でできており、年数を経るごとに徐々に縮みが生じてきます。

レギュレーターのフェイスカバー

左:年数を経たもの 右:新品

並べるとわかりにくいですが、重ねてみるとよくわかります。

レギュレーターのフェイスカバー

縮んでサイズが小さくなってしまうと脱落する恐れがある為、交換します。
脱落すると直接ダイアフラムに海水がぶつかりますので、フリーフローしやすくなり危険です。

器材を使用しているなかで、以上のような部品の劣化には気付かれないと思います。
ですが気付かないうちに、劣化は進んでいます。

フリーフローのような目に見える故障が生じるまで、点検もオーバーホールもせずに器材を使い続けておられるケースも数多く、オーバーホールの意味や価値はまだまだ認知されていないと感じます。

オーバーホールは修理とは異なり、定期的に行うものです。

それぞれの部品に耐用年数が想定されており、その区切りに行われる点検としての意味合いも持ちますので、器材のコンディションを良好に保つために、また何より安全なダイビングをするために、ぜひオーバーホールを活用してください。

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PROFILE
大学在学中、グアムで体験ダイビングをしたのを機にライセンスを取り、卒業と同時にダイビングの会社に就職。
その後、数店舗の都市型ダイビングショップで、スクールや器材販売、ツアーの企画・引率をし、2000年にインストラクターに。

数メーカーのメンテナンス講習を受けた後、ダイビング器材オーバーホール専門店「アイバディ」に10年間勤務。
現在はフリーインストラクターとして活動する傍ら、ダイビング器材・オーバーホールについて執筆活動中。

「器材の中身は見えない。だから伝えねばならない」がモットー。

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