第2回「日本水中フォトコンテスト」授賞式。会場の様子と豪華審査員のコメントをレポート!

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「多くの方に水中撮影を楽しみながら、フォトコンテスト受賞を目指し、作品作りに励んでいただきたい」そんな想いで開催されている「日本水中フォトコンテスト」(以下、JUPC)。第2回の授賞式が4月6日(土)、東京・池袋サンシャイン文化会館にて開催された。本記事では、その授賞式だけでなく、審査の様子から振り返り、総まとめをしていこうと思う。

審査員の頭を悩ませた最終審査

第2回「日本水中フォトコンテスト」の最終審査会は2月5日(月)に都内で行われた。名誉顧問の中村征夫氏、審査員長の⾼砂淳⼆氏、そして第2回のメンバーである阿部秀樹氏、中村卓哉氏、むらいさち氏、上出俊作氏といった日本を代表する水中写真家6名の審査員が会場に集まった。

ここでまず始めに、審査の流れを振り返っておこう。今回は2023年11月1日から2024年1月10日に作品を募集し、応募点数が1,317点、応募人数は434人となった。どのようにして最終的な34名の入賞に絞られたのだろう。審査の流れとしては、一次審査、二次審査、最終審査を経て、各賞の受賞者が決定される。

一次審査:応募作品の全データを各審査員にてひとり60点に絞る。委員会が重複などを確認して、ここで234点(159名)の一次審査通過が決定。

二次審査:一次審査を通過した作品はすべて統一された方法、サイズで印刷され、撮影者の情報を伏せた状態で最終審査会場にずらりと並べられる。その写真を審査員それぞれがじっくりと見て回り、審査員それぞれが持ったチップで投票していく。この投票を繰り返しながら入賞作品を絞っていく。

最終審査:最後は、投票と合議による上位選出。全審査員による真摯な議論を重ねて行なう。

二次審査中時折審査員同士で「この海草は何の種類だろうか?」、「北の写真が多い印象ですね」などと会話をしながら和やかな雰囲気もありながら、真剣な眼差しで写真を見て一枚一枚丁寧に見る様子が伺えた。

机に並べられた写真を見ていく

机に並べられた写真を見ていく

推薦する写真にチップを置く

推薦する写真にチップを置く

順調に上位入賞候補が絞られていき、10点ほどになった。最終審査で上位選出を決めていくのだが、審査員たちの言葉が詰まった。「どの作品も素晴らしいが、グランプリに相応しい1点となると決めかねる…」、「もっと力のある作品が日本を代表する作品であってもいいのでは…」という意見が出た。話し合いを重ねるが、なかなかグランプリは決まらない…。

グランプリについて、頭を悩ませる審査員たちの様子

グランプリについて、頭を悩ませる審査員たちの様子

ここで実行委員長である株式会社フィッシュアイの代表・大村謙二氏から「グランプリ該当作品なし」という判断も検討できることが審査員に伝えられた。そのうえでさらに話し合いを重ねた結果、満場一致で「グランプリ該当作品なし」、「準グランプリ2作品」。グランプリ作品を出すべきなのか、出すべきではないのか、審査員は最後までかなり悩んでおり、ある意味かなり濃い最終審査だったのではないだろうか。

審査がすべて終わり、受賞作品が並んだ

審査がすべて終わり、受賞作品が並んだ

待ちに待った授賞式。緊張感と高揚感が漂う中スタート

ではここからは、「マリンダイビングフェア2024」内特設ステージにて行われた授賞式の様子、そしてそのときに述べられた審査員のコメントと作品改めてご紹介していこう。

会場には、入賞していることだけが伝えられている入賞者

会場には、入賞していることだけが伝えられている入賞者

審査を行なった水中写真家6名が再び集結

審査を行なった水中写真家6名が再び集結

【入選(20名)】

作品名:「おたまの行進」 井伊知子氏

※表彰のプレゼンターは上出氏

阿部氏:「静寂感が出ていて清々しい、良い写真ですね」

作品名: 「ねぇ、ここだよ」 大塚萌木氏

※表彰のプレゼンターは上出氏

むらい氏:「明るくて可愛い。クマノミをカメラ目線で捉えているのが素晴らしい」

作品名:「Storm」 奥島玲人氏

※表彰のプレゼンターは上出氏

中村征夫氏:「激しい揺れの中で、体を安定させながら、よく捉えた写真」

作品名:「宴」 小倉直子氏

※表彰のプレゼンターは上出氏

阿部氏:「手前の3匹のカレイが効果的で、ワイワイ喋っている感じがいい」

作品名:「襲撃」 神出美保子氏

※表彰のプレゼンターは上出氏

高砂氏:真ん中の魚を中心にゴンズイがいい形に群れていますね。画面にリズムがあります」

作品名: 「テールアップ」 河田啓奨氏

(授与式にはご本人欠席)

上出氏:「クジラそのものの魅力も伝わりますし、クジラと水中で出会える楽しさが感じられる写真」

作品名:「落陽」 熊谷翔太氏

※表彰のプレゼンターは上出氏

中村卓哉氏:「被写体を夕陽に見立てて撮っていて、沈んだ様子を面白く撮っていて、いいアイデアです」

作品名:「旅立つ命たち」 小谷明日香氏

※表彰のプレゼンターはむらい氏

中村征夫氏:「卵が綺麗ですね。ナイトダイビングでの暗い中で顔にシャープにピントが合っています」

作品名 :「地球侵略!」 衣香織氏

※表彰のプレゼンターはむらい氏

高砂氏:「こっちに向いて泳いできていますね。ストロボを使って、顔も浮き立って、すごく良いですね」

作品名:「シューティング」 近藤政昭氏

※表彰のプレゼンターはむらい氏

中村征夫氏:「海は濁っていると思いますが、よくここに飛び込んで撮影しようと思いましたね。勇気を讃えたいです」

作品名:「流れる花粉」 酒井郁子氏

※表彰のプレゼンターはむらい氏

上出氏:「アマモを撮影した写真はありましたが、花粉を主題にした写真は他になかったですね。黒抜きで花粉がよくわかります」

作品名:「緑の雲海はごちそう/A sea of green clouds is a feast」 杉本靖成氏

※表彰のプレゼンターはむらい氏

高砂氏:「草原でゆっくり草をはんでいるような、気持ちのいい写真。緑とブルーで半分に切っていて、奥行き感もあります」

作品名:「海面鏡」 高橋真弓氏

※表彰のプレゼンターはむらい氏

むらい氏:流氷の写真は多くありますが、上の写り込みと流氷の写り込みが良いですね。太陽の映り方も綺麗です」

作品名:「STORM」 田中颯太氏

※表彰のプレゼンターはむらい氏

中村卓哉氏:「ダイバーのエアが真ん中にあって、超スローシャッターで撮影することで、迫力が引き出されています」

作品名:「宴」 土屋瞳氏

※表彰のプレゼンターは中村卓哉氏

上出氏:「よく見ると水中のジンベエザメではなく、船上にピントが合っていて、陸と海のつながりが生まれています。クルーズの楽しさが詰まっている一枚」

作品名:「海にそびえる大きな樹」 永井豪氏

※表彰のプレゼンターは中村卓哉氏

中村卓哉氏:「空間を広くあけた、おもしろい写真ですね。引いて撮影した点が素晴らしい」

作品名:「海の天使、舞い降りる」 西原憲一氏

※表彰のプレゼンターは中村卓哉氏

上出氏:「作品を見た瞬間に小さな生き物の世界に引き込まれる。光と色の調和が良いですね」

作品名:「覗いたその先に」 速水叶女氏

※表彰のプレゼンターは中村卓哉氏

むらい氏:「見た瞬間、イチカラマツの芸術的なアートが目を惹きます。エビが主役とわかる構図が素晴らしい」

作品名:「トーテムポール」 安田真人氏

※表彰のプレゼンターは中村卓哉氏

高砂氏:カエルのメスが産卵しているところに、さらにオスが乗っかっていますね。カエルにとっては真剣にやっていることですが、微笑ましいですね」

作品名:「はい、ポーズ」 油井一喜氏

※表彰のプレゼンターは中村卓哉氏

むらい氏:「シャチは滅多に見られない生き物。撮影するだけでなくアートに仕上げているのが素晴らしい」

【優秀賞(6名)】

作品名:「spectrum」 大谷翔氏

※表彰のプレゼンターは阿部氏

高砂氏:「綺麗に光が映るときはありますが、虹色に円を描いていて、魚もこちらを向いているのがなかなか撮れるものではない」

作品名:「エビすがお」 古菅正道氏

※表彰のプレゼンターは阿部氏

中村征夫氏:「シルエットをマクロレンズで撮るのは手ブレの可能性がありますが、冷静に撮っているな、と感動しました」

作品名:「元気玉」 駒井那津樹氏

(授与式にはご本人欠席)

中村卓哉氏:「ギンガメアジが散った瞬間。本当に飛び出してくるような立体的な構図が素晴らしい」

作品名:「希望の卵塊」 野﨑武志氏

※表彰のプレゼンターは阿部氏

阿部氏:「廃棄された釣り糸に卵を産んでいますね。環境問題を含めた意味で考えさせられる写真」

作品名:「遥か、彼方。」 野山昌俊氏

※表彰のプレゼンターは阿部氏

むらい氏:「被写体の近くに寄って、これだけ近くで撮れるのもすごい。エビと魚の素晴らしい一瞬を捉えています」

作品名:「輪廻」 山内創氏

(授与式にはご本人欠席)

上出氏:「“生と死”という作者のテーマが作品載っている写真。普段からこういったテーマを考えていないと撮れない」

【審査員賞】

高砂淳二賞
作品名:「ウキウキな黄昏」 今井寛治

高砂氏:「ホヤにエビがついて、浮遊しているシーンですが、宇宙っぽさがあります。ホヤもエビも透き通っていて内部構造がわかりますし、夕陽が水面から入ってくる感じで背景のブルーも綺麗。異次元の世界が気に入りました」

阿部秀樹賞
作品名:「コブダイの喧嘩」 小出博之氏

(本人欠席のため代理の方が出席)

阿部氏:「オス同士が喧嘩する瞬間的なシーンを寸分狂わずピシッと撮影し、しっかりとした力強さや迫力も感じます。写真的にも見事な対照構造」

上出俊作賞
作品名:「ザトウクジラの舞踏会」 高橋優花氏

上出氏:「不思議な雰囲気の写真。見た瞬間に引き込まれました。通常は激しく泳ぐヒートランの一幕だと思いますが、激しさよりも静けさを感じにインパクトを感じました」

むらいさち賞
作品名:「あかねぞらに浮上」 藤川智之氏

むらい氏:「半水面で夕陽の時間帯をしっかり振らさずに映すのは、技術的に大変なのもわかります。見たことがない世界でインパクトに感動した一枚を選びました」

中村卓哉賞
作品名:「生きるということ」 森田康平氏

(ご本人欠席)

中村卓哉氏:「サンゴの産卵をあえて引いて撮ることで、サンゴが次の命を繋いでいるのと共に、オニヒトデもサンゴを食べて命を繋いでいる様子がわかります。真摯な捉え方ですね」

中村征夫賞
作品名:「Oops no Sardines here」 山口勝憲氏

中村征夫氏:「見た瞬間に笑ってしまいました。カツオドリと山口さんは、サーディンランを狙って同じ勢いで水中に飛び込みましたが、『あれ、いない』。この鳥の表情をよく捉えたと思います」

準グランプリ発表の前に大村氏が再び登壇。ここで発表されたのは

「234作品の審査を6名で行いました。最後に2作品が残り、どちらかが準グランプリで、どちらかがグランプリ。甲乙を付け難く、しかし最高順位であることは間違いない。ではどちらがグランプリなのかを話した中で、ほんの少しだけ推しが足りない、でも本当に素晴らしい作品なのは確か、と決めかねる中、今回は全員一致で『グランプリ該当作品なし』『準グランプリ2作品』とし、グランプリ賞金50万円はキャリーオーバー、第3回のグランプリ賞金を100万円とすることとなりました」、と発表があった。

大村氏から受賞者たちに伝えられた

大村氏から受賞者たちに伝えられた

【準グランプリ】

第2回「日本水中フォトコンテスト」での最高順位に輝いた1つ目の作品はこちら。

作品名:「トタン屋根に暮らす 〜海藻の森が育む命〜」 齋藤利奈氏

高砂氏:「海藻とゴンズイは地味ですが、海藻がこんなに豊かに繁っていて、さらにゴンズイがトタン屋根に何も文句を言わずに住んでいるたくましさや寛容さが表現されており、素晴らしいですね」

齋藤利奈氏:「ものすごくびっくりしています。鹿児島市の人口の水路で撮影した写真で、道路一本挟むとリゾートマンション、振り向くと桜島。人間と自然が近い場所です。ゴンズイは、近寄ると逃げるので、時間をかけて距離を詰めて、この辺だったら撮れるかなというところで撮りました」

そして2つ目は、海外から挑戦した作品。

作品名:「ロープと魚」 チョン ミンソク氏

高砂氏:「人間が捨てたロープにこんな可愛い仕草で寝ているシーンが毎晩見ていないところで繰り広げられていると思うと勿体ない気持ちになります。形にもリズム感があって、しがみついて寝ている姿が可愛いし、微笑ましい。みんなで選びました」

チョン氏:「韓国の寒くて深い海で撮った写真が、日本の大きなフォトコンテストで準グランプリをいただけたことが光栄で嬉しいです。韓国のダイバーは海外で潜ることが多いですが、私は韓国の海で潜って撮りたいと思っています。ありがとうございました」

▶︎ここでは紹介しきれなかった審査員や受賞者のコメントは日本水中フォトコンテスト公式サイトへ

第2回「日本水中フォトコンテスト」閉幕

すべての発表が終わり、最後に久野氏より閉会の挨拶とともに第2回「日本水中フォトコンテスト」の受賞作品を掲載した雑誌「DIVING WORLD Magazine(ダイビングワールドマガジン)」も発表された。第3回に挑戦しようとしている方、フォト派ダイバーの方はぜひ手に入れたい一冊だ。

▶︎詳細・購入はこちら

「DIVING WORLD Magazine(ダイビングワールドマガジン)」お披露目の瞬間

「DIVING WORLD Magazine(ダイビングワールドマガジン)」お披露目の瞬間

受賞者で記念撮影

受賞者で記念撮影

審査員長の⾼砂淳⼆氏コメント(「DIVING WORLD Magazine」より抜粋)

ひとりの応募数の上限が半分になり、それに比例して全体の応募数も減少しましたが、その分それぞれの方がご自身で厳選しての応募となり、一定のレベル以上の力作が多数集まりました。ただ既視感のある作品も目立ち、発想力の乏しさを若干感じるコンテストでもありました。結果的には、全体のレベルは高いけれど残念ながら突出する作品が見出せなかったことから、今回はグランプリはなし、賞金は次回に持ち越し、という結果になりました。発想力は作品自体のみならずに作品名にも影響します。その作品で何を表現したいのか、何を感じ取ってほしのか、それを意識して撮影することで作品名にまで作者の意図が行き渡ります。タイトルまでが大事な作品です。ご自身の気持ちに耳を傾けながら撮影に臨んでいただけたらと思います。次回の作品を楽しみにしています。

「DIVING WORLD Magazine」より

名誉顧問の中村征夫氏コメント(「DIVING WORLD Magazine」より抜粋)

写真コンテストに賞が設けられている以上、せひ各賞にふさわしい受賞作品を選出したいと思うのだが、第2回日本水中フォトコンテストの審査の結果、残念ながらグランプリ作品の該当作品はなしとの結論に達しました。上位作品はいずれも拮抗し秀作が揃ったが、いざグランプリ作品の選出となると難航を極めました。今回も前回同様、海中風景、生態、ドキュメントなどなど、さまざまな海の姿を活写した作品が勢揃いしたが、審査委員誰もが納得できるグランプリ作品にお目にかかれなかったのは残念でなりません。

「DIVING WORLD Magazine」より

第3回「日本水中フォトコンテスト」に向けて

さらに第3回「日本水中フォトコンテスト」の審査員も発表された。審査員は、新たに中村宏治氏、峯水亮氏、尾崎たまき氏、茂野優太氏の4名が務め、引き続き審査委員⻑は⾼砂淳⼆氏、名誉顧問は中村征夫氏となっている。

実行委員長の大村謙二氏コメント

今回グランプリ作品の選出を見送ったことに賛否はあると思いますが、是非応募者の皆さんにも、来年こそ!と奮起いただき、さらに素晴らしい作品が生まれることを期待したいと思います。運営についても、まだまだ至らぬことばかりですが、応募者の皆様にも、サポートいただくインストラクターや現地ガイドの方々など、多くの皆様の期待にお応えできるよう来年に向けてしっかりと準備して参ります。第3回日本水中フォトコンテスト、100万円のグランプリ受賞作品がどんな作品なのか、本当に楽しみです。是非次回も皆様とともに盛り上げていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします!

応募期間もすでに発表されており、2024年11月1日〜2025年1月10日となっている。今回のグランプリ賞金50万円がキャリーオーバーし、第3回のグランプリ賞金が100万円!ぜひ今から準備を始めて、挑戦してみてはいかがだろうか。

▶︎詳細は日本水中フォトコンテスト公式サイトでチェック

主催:日本水中写真コンテスト実行委員会

日本水中写真コンテスト実行委員会が新たにスタートする水中フォトコンテスト。より多くの方々に水中撮影を楽しみながら、受賞を目指し作品作りに励んで欲しいという想いから、日本を代表するフォトコンテストを目指し、企画された。

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▶︎昨年の受賞作品、授賞式の様子はこちら

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PROFILE
0歳~22歳まで水泳に没頭し、日本選手権入賞や国際大会出場。新卒で電子部品メーカー(広報室)に入社。同時にダイビングも始める。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。ライターとして、全国各地の海へ取材に行く傍ら、フリーダイビングにゼロから挑戦。1年で日本代表となり世界選手権に出場。現在はスキンダイビングインストラクターとしてマリンアクティビティツアーやスキンダイビングレッスンを開催。
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