「日本水中フォトコンテスト」授賞式。緊張感ある会場の様子と豪華審査員のコメントをレポート!

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「多くの方に水中撮影を楽しみながら、コンテスト受賞を目指し、作品作りに励んでいただきたい。撮影を楽しんでいただきたい」そんな想いからスタートした第1回「日本水中フォトコンテスト」(以下、JUPC)。4月8日、東京・池袋で開催された授賞式にて、ついに各賞が発表!授賞式の様子と審査員のコメント、素晴らしい受賞作品の数々をご紹介していこう。

そうそうたる顔ぶれが授賞式会場に集結

「マリンダイビングフェア2023」会場内特設ステージにて行われた授賞式。18時からの開催に合わせ、ぞくぞくと観客も集まってきた。観客席の最前列には審査を行った水中写真家もプレゼンターとして出席。名誉顧問・中村征夫氏、審査委員長・高砂淳二氏、審査員・鍵井靖章氏、清水淳氏、関戸紀倫氏、古見きゅう氏だ。さらに第2回の審査員を務める上出俊作氏、むらいさち氏、阿部秀樹氏、中村卓哉氏の姿もあり、そうそうたる顔ぶれが勢揃い。

開会を今か今かと待つ、観客の皆さん

18時になり、本フォトコンテストの発起人で実行委員長である株式会社フィッシュアイの代表・大村謙二氏による開会の挨拶で、授賞式が幕を開けた。
「日本を代表するフォトコンテストにするべく、約1年前から準備を始めてきました。2022年11月1日~2023年1月10日の応募期間で、461名の方から、のべ2,512点もの作品を応募していただきました。まず6名の審査員が2,512点の応募作品の中から60点ずつを選び、その後一次審査を257点が通過。そして2023年2月9日に審査員が集まり、入賞作品を合議と投票で選び、各賞が決定しました」。

応募者や運営関係者らに感謝の言葉も述べた大村氏

会場には、事前に入賞していることだけ伝えられた応募者が25名。どの賞を受賞しているのかは、この後発表される。改めて審査員が紹介され、いよいよ始まる授賞式に会場にも緊張感が漂う。

最前列には審査を行った水中写真家が勢揃い

また、今回司会を務めたのは、PADIレスキューダイバーで藻場再生など海の保全活動にも積極的に参加するフリーアナウンサーの酒井美帆氏。酒井氏の進行で、まずは12名の入選者の発表から行われる。

ここからは、各賞の受賞者を一挙に紹介していく。

入選(12名)

秋本哲志氏

「sardine run」

【DATA】Sony α9(seafrogs) 17-28mm 自然光 f8 1/500秒 ISO800 セブ島モアルボアル 水深8m

伊熊教宏氏

「Ride on you」

【DATA】Nikon D850(Nauticam) 14mm Z-330 RGBlue SYSTEM02 f13 1/250秒 ISO250 三重県紀北町銚子川上流 水深0.5m

奥島玲人氏

「静寂」

【DATA】Canon EOS 5D Mark IV(Nexus) 8-15mm Z-330 f8 1/125秒 ISO100 阿嘉島ニシバマ 水深10m

 

小黒恵司氏

「Golden dragon」

【DATA】Canon EOS 5D Mark III( Nexus) 8-15mm Z-240 f8 1/200秒 ISO400 屋久島 水深10m

加藤幸男氏

「花に暮らす」

【DATA】Nikon D7200(Nexus) 60mm INON LE700-S f11 1/400秒 ISO200 バリ島 水深15m

加藤和可女氏

「水中花火大会」

【DATA】Nikon D850(Nauticam) 60mm RGBlue SYSTEM02、FIX MG350SS f9 1/200秒 ISO100 東伊豆川奈

※ご本人は欠席で代理のご家族が出席

高國維氏

「ホワイトニングへの序曲」

【DATA】OLYNPUS OM-D E-M1 Mark II(Nauticam) 8mm D-MAX f10 1/250秒 ISO200 パプアニューギニアキンベ湾 水深1m

※高氏は台湾在住で、授賞式欠席

齋藤利奈氏

「夜宴」

【DATA】Canon R5(INON) 16mm Z-330 f13 1/200秒 ISO2000 鹿児島市長水路 水深3m

鈴木小百合氏

「天の羽衣」

【DATA】Canon EOS 5D Mark IV(Zillion) 24-70mm Z-240 f16 1/200秒 ISO800 大瀬崎湾内 水深5m

出竃祐亮氏

「月夜の密談」

【DATA】Nikon D7000(Nauticam)85mm RGBlue SYSTEM01 スヌートキット f22 1/200秒 ISO100 西伊豆井田 水深18m

※出竃氏は、授賞式欠席。

新倉理希氏

「落ち葉の天幕」

【DATA】Nikon D4S (Nauticam) 8-15mm Z-220 f16 1/250秒 ISO250 北海道屈斜路湖 水深1m

西原憲一氏

「皇帝、大群を率いる」

【DATA】Nikon D850(Nexus) 8-15mm Z-330 f11 1/250秒 ISO320 粟国島筆ん崎 水深20m

入選者には、表彰状とJUPCパーカーが授与され、審査員から入選理由・祝福の言葉が贈られた。撮影技術の高さはさることながら、従来にない撮影方法や表現方法が評価され、さまざまな作風の作品が選ばれた。
▶︎入選者と審査員からのコメントはJUPC公式HPに掲載中

優秀賞(5名)

古菅正道氏

「デコレーションケーキ」

【DATA】Nikon D800(Nexus) 105mm Z-330 f16 1/200秒 ISO200 フィリピンセブ島 水深10m

齋藤愛氏

「狙った獲物は逃さない」

【DATA】Nikon D850(Nauticam) 105mm Z-330 f/8 1/250秒 ISO200 沖縄本島塩屋湾 水深10m

谷口勝政氏

「海月の帯」

【DATA】Canon EOS 7D Mark II(プルーフ) 60mm Z-240 f8 1/250秒 ISO160 和歌山県串本 水深5m

※ご本人は欠席で、代理人の方が出席

堀淳志

「これも一つのダイビング」

【DATA】Canon EOS 5D Mark IV(SEA&SEA) 16-35mm WF Solar Flare 5000 FIX NEO 3000 M82内部補正レンズ f/3.2 1/100秒 ISO2500 チューク平安丸 水深18m

三宅直人氏

「Reflection」

【DATA】Nikon D850(Nauticam) 105mm Z-330 f7.1 1/250秒 ISO200 西伊豆黄金崎 水深2m

これまでにない自由な表現が取り入れられた作品などが選ばれ、優秀賞受賞者には、表彰状とトロフィー(ブルークリスタル製)、記念品が贈られた。
▶︎優秀賞受賞者と審査員からのコメントはJUPC公式HPに掲載中

審査員賞

古見きゅう賞
田中香織氏

「ここにいるよ」

【DATA】Canon EOS 5DmarkⅢ(Nauticam) 100mm Z-240 NA SMC-1 f10 1/125秒 ISO100 北海道函館 水深3m

関戸紀倫賞
朝比奈燦氏

「なんと表現するんだっけ。あどけない、この喜びを。」

【DATA】OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II(OLYMPUS) 8mm AOI-UCS-Q1-RC f5.6 1/250 秒 ISO200 慶良間諸島下曽根 水深15m

清水淳賞
河田啓奨氏

「弾けるギンガメ玉」

【DATA】Nikon D750(Nexus) 8-15mm D-200 f11 1/250秒 ISO800 粟国島筆ん崎 水深15m

※ご本人は、授賞式欠席

鍵井靖章賞
中野駿介氏

「Radiance」

【DATA】Nikon D850(Nauticam) 15mm 自然光 f9 1/400秒 ISO450 御蔵島 水深5m

高砂淳二賞
國本真琳氏

「Pacific Giant Octopus」

【DATA】Nikon D850(Nauticam)105mm Z-330 FIX NEO f8.0 1/125秒 ISO100 北海道函館 水深9m

※ご本人は授賞式欠席で、代理の方が出席

中村征夫賞
犬飼啓介氏

「軽石とザトウクジラ」

【DATA】Nikon D850(Nauticam) 8-15mm 自然光 f5.6 1/500秒 ISO2800 沖縄本島那覇沖 水面

司会の酒井氏が受賞者の皆さんに、撮影時の様子や写真とタイトルに込めた想いについて話を伺い、観客の皆さんも素晴らしい作品に釘付けになる。審査員賞受賞者には、表彰状とトロフィー、記念品が贈られた。
▶︎審査員賞受賞者と審査員からのコメントはJUPC公式HPに掲載中

そして、授賞式はいよいよクライマックスへ。準グランプリ、グランプリが発表される!

準グランプリ

高谷英雄氏

「タコクラゲの楽園〜陸と海〜」

【DATA】Canon EOS 6D Mark II(Nauticam) 15mm FIX NEO Mini 1000他ライト複数 f8 1/100秒 ISO400 鹿児島市 錦江湾 水深0m

高谷氏からは「上位に入賞すると思っていなかったので、驚きつつも、とても嬉しいです。普段から写真はよく撮るのですが、フォトコンテストに応募することは少ないです。今回は、ドラマチックな桜島とタコクラゲがたくさんいるメルヘンなこのユニークな写真がたまたま撮れたので、応募することにしました。実は、あともう一枚、夜の街明かりとタコクラゲの半水面写真もあり、二枚の組み写真で応募しようと思っていました。しかし、組み写真での応募が不可とのことだったので、それぞれ一枚ずつ、応募しました。他にもギンガメアジやジンベエザメの写真なども撮っていたので、応募しようかと思ったのですが、この種の写真は応募数が多く、自分の写真は上位に入賞しないだろうと思い、タコクラゲの半水面写真で挑戦しました」と、コメントをいただいた。準グランプリ受賞者には、表彰状とトロフィー、賞金10万円が贈られた。
▶︎準グランプリ賞受賞者と審査員からのコメントはJUPC公式HPに掲載中

グランプリ

吾川真之氏

「求愛」

【DATA】Canon EOS 5D Mark III (Nauticam) 8-15mm 自然光 f9 1/160秒 ISO160 石垣島ヨナラ水道 水深30m

記念すべき初代JUPCのグランプリに輝いたのは、白砂の上を美しく舞うマンタと両手を大きく広げるダイバーが印象的な作品。審査員の満場一致でグランプリとなった。吾川氏からは「日本水中フォトコンテストに応募した理由は、日本で一番の水中フォトコンテストにしたいという主催者側の気合いが伝わってきて、これは第1回目からぜひ参加したい!と思ったからです。この写真を応募した理由には、審査員の方々を見て決めた部分もあります。私は年間を通して、神子元や与那国でハンマーヘッドシャークを撮ることが多いので、最初はサメの写真での応募も考えていました。しかし、いつもインスピレーションを受けている高砂さんの写真のような、雄大な自然と人の関わりのようなものが伝わる写真を出したいと思いました。この写真は、日本水中フォトコンテスト用に撮影したわけではなく、1、2年くらい前に友達に誘われて行った石垣島で撮影したものです。写真に写っているダイバーは友達なのですが、カメラなど何も持たないで入る珍しいタイプで。特にポーズの指示とかもしていませんでしたが、とてもちょうどいい位置にいてくれました。今までサメの写真ばかりを撮ってきましたが、これからは視野を広げながら、『この人にしか撮れない』というような写真を目指していきたいです」とコメントをいただいた。グランプリ受賞者には、表彰状とトロフィー、賞金50万円が贈られた。

第1回「日本水中フォトコンテスト」閉幕

すべての賞が発表され、最後に審査員長の高砂氏と名誉顧問の中村征夫氏より総評。

高砂氏からは「どの作品もものすごくレベルが高かったです。生態を撮るにしてもストレートなものではなく、ちゃんとアート性があるんですよね。構図や光の当て方、背景の出し方など、いろいろなところに自分の色を出して、どのような作品を作り上げたいかが見えるようになってきた印象があります。さまざまな応募作品があり、審査中も楽しくて、勉強にもなり、選び甲斐がありました」。

中村征夫氏からは「正直、選びきれないというか。私の元に応募作品が送られてきて、まず60作品を選ばないといけないのですが、120作品ほど選んでしまいました。そこから削っていくことが大変でしたね。多くの審査員の方が言うように第1回の入賞にふさわしい、クオリティの高い作品ばかりでした。写真の世界はまだまだこれから無限に可能性があるんだと言うことを皆さまが教えてくれたような気がします」。

そして第2回「日本水中フォトコンテスト」開催決定のお知らせも。応募期間は2023年11月1日〜2024年1月10日。発表は2024年4月予定とのこと。審査員4名からも挨拶がされた。

第2回の審査員を務めるむらいさち氏、中村卓哉氏、上出俊作氏、阿部秀樹氏(左から順に)

第2回の審査員を務めるむらいさち氏、中村卓哉氏、上出俊作氏、阿部秀樹氏(左から順に)

そして、共同発起人で実行副委員長の株式会社エーオーアイ・ジャパンの代表・久野義憲氏より閉会の挨拶。「日本水中フォトコンテストの授賞式開催にあたり、たくさんの方々にお集まりいただき感謝の言葉もありません。水中写真を文化として残していくためにも、この日本水中フォトコンテストを第2回、第3回と継承していくことを誓います」とあった。また、入賞作品を掲載した「作品集」も発表された。

無事に第1回目を終えられたことに対して、感無量の想いが込み上げ、震えながら作品集を手に取る久野氏

無事に第1回目を終えられたことに対して、感無量の想いが込み上げ、震えながら作品集を手に取る久野氏

最後は入賞者と審査員全員で記念撮影。

審査員も驚くようなハイレベルなフォトコンテストとなった今回。各受賞者の作品の切り口や審査員のコメントが、次回のフォトコンテストへの応募や受賞を狙う人にとっては、大変参考になりそうな予感だ。日本を代表するの水中写真のフォトコンテストとして、次回もハイレベルで素晴らしい作品が応募されることだろう。来年も楽しみにしたい。

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PROFILE
0歳~22歳まで水泳に没頭し、日本選手権入賞や国際大会出場。新卒で電子部品メーカー(広報室)に入社。同時にダイビングも始める。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。ライターとして、全国各地の海へ取材に行く傍ら、フリーダイビングにゼロから挑戦。1年で日本代表となり世界選手権に出場。現在はスキンダイビングインストラクターとしてマリンアクティビティツアーやスキンダイビングレッスンを開催。
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