【インタビュー】谷川俊太郎×むらいさちのコラボ! 『よるのこどもの あかるいゆめ』本日発売!

2017年2月3日、『よるのこどもの あかるいゆめ』が発売されました。
谷川俊太郎さんの詩とむらいさちさんの水中写真で、やさしく眠りに誘う一冊です。
世界中の海を独自の透明感ある写真で表現してきたうみカメラマン・むらいさちさんに、絵本制作の裏話を聞きました。

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ーー今日は、取材よろしくお願いします!
……って、むらいさん?

ぱらり、ぱらり、ぱらり(むらいさんがページをめくる音)

むらい

今日初めて手にとったんだよね。
色校正より、色がキレイに出てる。

ぱらり、ぱらり、ぱらり(むらいさんがページをめくる音)

ーー取材、はじめていいですか……?

FantaSeaがつないだ出会い

ーー今回の本は、どう発想されたのでしょうか?

むらい

1人の編集者と出会ったことが、大きなきっかけです。
2016年7月に「FantaSea(ファンタシー)」という写真展を開催したのですが、マイクロマガジン社の絵本を編集されている方が、たまたま通りがかりに立ち寄ってくれたんです。そこで、「何か一緒にやりたいですね」とご挨拶して。

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こういう話はよくあるんですが、だいたいそこで終わるのが普通なんです。
僕も初対面のときは、ピンときていなかったし、こんなに早く形になるなんて思っていなかったです(笑)。

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ーー出会いから、約半年で出版に至った。

むらい

この本を作ることができたのは、僕の写真に反応する感性をもつ人と出会えたこと、それがすべてだと思います。
僕の写真を気に入ってくれて、理解してくれて。
写真を活かすも殺すも、編集やデザインの力でしょう?
そういう意味では、本当にラッキー。
その編集の方は、「FantaSea」に並ぶ写真をみて、「自然って、厳しい場所だけれど、その中に、人間がいてもいいんだよっていう瞬間がある。そんな、自然からの祝福を表現しているようだ」と言ってくれたんです。

ーーむらいさんがいうところの“しあわせの瞬間”ですね。

むらい

そうですね。
さらに、「胎児の視点で外を眺めたら、こんな風なんじゃないか。羊水の中で漂っているようだ」とインスピレーションを湧かせてくれました。
その時の会話が、本のイメージにつながっていった。

そして、編集者とやり取りをしているうちに、子どもに対する眠りの本を作ろうという企画になっていったんです。

ーーむらいさんは、子ども向けの本は初めてだと思いますが、なぜそのような企画に?

むらい

実は写真展で「おちつく」とか「リラックスする」とか「涙が出た」と感想を言ってくれるのは子育て世代の女性が多かったりするんです。
もともと絵本には興味がありましたし、自分の写真を必要としてくれているお母さん世代と子どもの心を緩める本ができたらいいなあと思っていました。
そんな思いを伝えたら、編集者との話は割とスムーズに進みました。

しかも、編集者と話が盛り上がって「あこがれの谷川俊太郎さんに詩を依頼してみようか」と。
言ったはいいものの、正直、無理だろうと思っていました。
教科書に載っているような僕には遠い存在のような方ですし、お忙しいと思いますし。

ーーでも、それが叶った。

むらい

そうなんです。
編集者と一緒に企画書と、写真を整理して仮綴じの写真集みたいな本をつくって依頼したら、OKいただけたんです。
編集者から谷川さん快諾の報告が来た時、思わず「うそ!」と(笑)

ーー実際に詩を見たとき、どういう印象でしたか?

むらい

オファーの時点で、僕の写真が谷川さんの心にささらないと、書こうともならないんじゃないかなと思うんです。
なにせ日本一有名で、日本一忙しい詩人と言っても過言ではない方ですから、それこそ膨大な依頼がひっきりなしに来る。
そのなかから僕の写真を見つけて、創作してくれた。
だから、単純に、僕の写真に反応してくれたことが、すごくうれしかったですね。

“絵本”って感じの詩じゃないのが、またいいんです。
僕の写真って、ストーリーが作りづらいから、絵本には向いていないですよね……。
そういう意味で、この詩の書き方は、僕の写真とマッチしているかなって。
谷川さんからは、「むらいさんの写真は、写実ではない。だからそれに合わせて言葉を作った」っていう言葉をもらったと聞いています。

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心地よい眠りのために

ーー谷川さんは、「眠るってのは、人生のいろんな快楽のうちでも最大のもののひとつだろうな。」と語るぐらい、睡眠が好きな方なんですよね。(世界睡眠会議インタビューより。)

むらい

子どもを寝かしつけるときって、「早く寝ないとオバケがくるよ」と怖がらせてしまいがちだったり、子守唄も怖い題材のものが多かったりしますよね。
世界中の子守唄を調べてみたらトラウマになりそうなものばかり(笑)。
なかには寝るのが怖くなっちゃう子もいるんじゃないかな。

でも、谷川さんの詩は、「よるがゆめで あかるいよ」っていう言い方なんです。
眠るのは、幸せなことなんだよって、安心させてあげるための言葉が紡がれている。
本全体が、ふんわりとやさしい雰囲気になったのは、このあたりがポイントなんじゃないかと思います。

ーー写真は、むらいさんが選んだのですか?

むらい

子どもが寝るというイメージで、なるべく写真を選びました。
自分の「FantaSea」の中でも、より抽象的なものをセレクトしましたね。
答えが見えるような写真だと、うとうとしていたのに、パッと目が覚めちゃったりすると思うんです。
なんだかよく分からないなぁっていうものも多いんですが、それでいいんだと思います。

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ーー色のニュアンスが細かなところまで表現されていますね。

むらい

色がどこまで出せるのかは、一番の課題でした。
テスト校に加えて、プラスαで色のチェックを3回もやりました!
最後、印刷所で刷る現場にも立ち会わせてもらって。

ーー独特の色ですもんね。

むらい

水槽代わりに(笑)、部屋に飾ってもらえるといいなぁ。
帯をとるとすごくシンプルなんですが、実は、表紙がリバーシブルなんですよ。
裏面の方が賑やかな写真を使っているので、こっちのほうが子どもは好きかもしれません。
好きな方を使ってもらえればと思います。
製本も工夫されているので、パカっと開きやすいんです。

ーー子どもだけでなく、大人も楽しめる本ですよね。

むらい

2~7歳ぐらいの子どもが気持ちよく眠れる絵本を作りたいという思いで作りましたが、読み聴かせるお母さんたちも眠くなるんじゃないかなと思います。
むしろ、お母さんたちの心にささっていくんじゃないでしょうか。
もちろん、大人も寝る前に読むと、心地よく眠りにつけると思います。
みんな、疲れていますよね。
OLしていたり、子育てしていたり。

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全ページ試し読みできる!?

むらい

今、絵本ナビというサイトで、レビューコンテストを行っています。

全ページ、試し読みできるうえに、商品が豪華!
「よるのこども大賞(1名)」に選ばれると、好きなページを額装してプレゼントします。
しかも、谷川さんと僕のWサイン入り!!
レビューコンテストは、2月22日までですが、全ページ試し読みは期限なしです。

ーー全ページ読めちゃうんですね!
逆に言うと、本を手にとってもらえる自信がある?

むらい

絵本って、自分で読むんじゃなくて、これだったら、子どもに見せたいって思って買うものだから。
あと、人にプレゼントするときも、試し読みできるって、すごくいいですよね。
そういう意味では、たくさんの人に見てもらえることは、すごいいいなぁって思うんです。

これからの作品づくり

ーー今後は、どんな作品を作っていきたいですか?

むらい

人の心に衝撃を与えるよりは、よりそうような写真が撮りたいとずっと思っています。
見る人の生活の一部とか、心の支えになるような写真。
その形が今のところ、「FantaSea」のような写真のテイストになってきました。

今後は変わるかもしれないけれど、目指すものは変わらないので、こういう写真を撮っていくのが、今は自然な流れかなと思っています。

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ーー陸での撮影も多くなってきましたが、海というフィールドに対してはどうですか?

むらい

一応、僕、うみカメラマンなので(笑)。
海は、自分が一番リラックスできる場所なんです。入っていると、すごく心がホッとします。
浅瀬でぼーっとしている瞬間の心地よさとかは、海でしか味わえないと思うんです。
それをどう表現していくのかは、課題でもありますが、向き合いながら、写真を撮っていきたいと思っています。

■むらいさち動画コメント

『よるのこどもの あかるいゆめ』

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著者:谷川俊太郎
写真:むらいさち
A判変版
40ページ
定価:1512円(税込)

レビューコンテスト開催中!

絵本試し読みサイト「絵本ナビ」にて、現在『よるのこどもの あかるいゆめ』のレビューコンテストを実施しています。
ぜひ、子どもに読み聞かせた反応や、絵本を読んだ印象など、感想やエピソードを投稿しましょう!

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HPは、こちら

■賞品
「よるのこども賞」(1名)好きなページの額装。谷川さんとむらいさんのサイン入り
「絵本ナビ賞」新規の投稿者の中から掲載条件を満たした方すべてに、ポイントをプレゼント

■募集期間
~2017年2月22日(水)23:59

■募集内容
『よるのこどものあかるいゆめ』のレビュー(感想、エピソード)

■応募方法
コンテストサイト上の「この絵本のレビューを書く」ボタンか、作品詳細ページから応募。投稿は1作品に付き、1人1回限りです。

■発表について
2017年3月上旬を予定

Profile

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むらいさち
うみカメラマン。沖縄でダイビングガイドを経て、写真の世界へ。現在は、水中からオーロラまで地球全体をフィールドに「しあせな瞬間」を求めて撮影している。著書に『FantaSea』(BUNKADO)、『きせきのしま』(小学館)などがある。

(取材日2016年1月31日、インタビュー:寺山英樹、撮影:菊池聡美、構成:山本晴美)

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