伊豆半島の海ゴミ一掃プロジェクトとは? プロダイバーによる水中清掃で伊豆半島をつなぐ

伊豆半島を中心に、山の中から海の中に至るまでのごみ問題に取り組んでいる「MORE企画」が、2024年度より新たなプロジェクト「伊豆半島の海ゴミ一掃プロジェクト」を発足しました。本記事では、このプロジェクトが何を目的とし、どのような活動を行なっているのかを紹介していきます。

誰も潜ったことのない海の中には様々なものが落ちている

What’s MORE企画?

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伊豆半島の海ゴミ一掃プロジェクトとは

一度の清掃で約1tのゴミを回収する

海中のゴミを放置しておくと、そこに生息している海洋生物に危害を及ぼし、ひいては海の生態系に悪影響を及ぼしてしまうことは、オーシャナ読者のダイバーさんたちはご存知だと思います。伊豆半島の海は、たくさんの生き物たちが暮らす豊かな環境であり、ダイバーにとってだけではなく観光や漁業にとっても大切な宝物です。

MORE企画の3人もダイバーであり、海の豊かさに魅了されている

そこで私たちが考えたのは、そんな海の中にあるゴミを一掃すれば、この宝をもっと輝かせられるのではないのでは?ということでした。
そんな思いから発足したのが、2024年度より開始している「伊豆半島の海ゴミ一掃プロジェクト」です。このプロジェクトの目的は、環境保全と地域の魅力向上。また、かねてよりMORE企画が目指してきた、「ゴミ拾いを仕事にする」ことの第一歩でもあるプロジェクトとなっています。

水中清掃を有償ボランティアとして確立させるための10年計画

プロジェクトの目印となっている「地球まるごとお掃除中」の旗

プロジェクトの対象は、伊豆半島の海に面している熱海市、伊東市、東伊豆町、河津町、下田市、南伊豆町、松崎町、西伊豆町、伊豆市、沼津市の10の市町です。これら市町を2年間かけて一周する計画で、回ごとに市町の中でも違う港を清掃します。
伊豆半島の海ゴミ一掃プロジェクトの3つの特徴

1.潜水禁止区域で水中清掃をする

清掃の舞台は潜水禁止区域のマリーナや漁港

普段ダイバーが入る場所(潜水可能区域)は、昨今、多くのダイバーが「1Dive 1Clean-up(ワンダイブ ワンクリーンアップ)」を実施しているため、いつも綺麗な海が保たれています。しかし、それ以外の場所ではどうでしょうか?

実は、日本の海岸線沿いで潜水許可されているのは、わずか10%程度。つまり、一般的に立ち入りが制限されている潜水禁止区域の海底は、普段人が入れないためごみが長期間放置されている状況です。

椅子

自転車のホイール

MORE企画では、この潜水禁止であるために誰の目にも入って来なかった水中ゴミを掃除するために、団体として行政機関や管理団体に企画・交渉をしています。

2.プロダイバーに謝礼金を払う(有償ボランティア)

水中清掃を行うプロダイバーの皆さん

今回対象としている潜水禁止区域は、基本的に透視度・透明度共に悪く、管理されているダイビングポイントとはわけが違います。そのため、私たちはプロダイバー(その中でも、水難救助や災害支援に行っているような方々)にお願いをして作業をしてもらい、プロダイバーへ謝礼金を支払うことにしました。

透明度の悪いなか、高度な技術と豊富な経験を活かし作業を行う

これまで行われてきた水中清掃は無償のボランティアが主流でしたが、今後は持続可能な取り組みとして有償化を進めていきたいと考えています。財源は、私たちが企業や個人から集めた助成金や協賛金、寄付金などです。しかし、これらは不確定要素の多い収入源となるため、今後はMORE企画として、しっかりと事業収入を確立させていきたいと考えています。

3.協賛金や協賛品を募って実施する

周辺地域のお店様より協賛品でいただいたものを昼食や間食として提供

このプロジェクトは「みんなで少しずつ海に関わって、海に愛着を持つ」という考えのもと実施しています。「海の為に何かをしたいが、方法がわからない」と思っている多くの方がいるのも事実。そこで、このプロジェクトがその機会となるような仕組みを作りました。

周辺地域の企業や団体、個人が無理なく関われるように、陸のボランティアの募集をしたり、協賛金は1口1,000円からと参加しやすい金額設定をしたり、協賛品での協力も受け付けています(自店の物のみ)。更に場所によっては見学者も受け入れ、SNSなどでの発信も協力のひとつだとアピールします。運営側として公的機関や漁業関係も巻き込み、街をあげての取り組みにしていきます。

陸ボランティアの皆さん

ボランティアとは、自ら手を上げて社会貢献活動に参加することを。この言葉に、有償か無償かは問われていません。しかし、日本では「無償であることが前提」の言葉として使われています。もちろん、無償であることがゴミ拾い活動に参加する理由の方もいますし、報酬や対価は現金である必要はないとも思います。それでも、プロにプロの仕事をしてもらうのに、彼らの善意に頼るのは持続可能だとは言えないと思うのです。

ゴミになる物を作り出す会社、売る会社、ゴミごと商品を買う消費者、ゴミステーションから回収してくれる会社・・・これらすべてで莫大なお金が動いています。それなのにも関わらず、このゴミ回収のルートから外れたゴミ(ポイ捨てや散乱ゴミ)を拾う人だけは、無償である前提なのです。

MORE企画の3人

私たちMORE企画は、作る責任と買う責任をもっと問うべき時に来たと思います。そこへのファーストステップとして、ひとりでも多くの方々に少しだけでも関わってもらい、このプロジェクトに対し関心と愛着を持ってもらいたいです。関係者だけでひっそりと実施するほうが、何事も楽で簡単です。しかし長い目で見た時に、私たちのプロジェクトの目的である【環境保全と地域の魅力向上】にたどり着けるのは、この方法だと信じています。

「伊豆半島の海ゴミ一掃プロジェクト」のこれからの10年をどうぞ、見守っていてください。この記事をシェアするだけでも「協力」したことになりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

MORE企画
代表 白井ゆみ

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PROFILE
ダイバー3人で発足した環境活動団体。「MORE企画」という名前は「Mountain Ocean River Earth」の頭文字をとっており、その名の通り山から海まで「地球まるごとお掃除中」の旗を掲げ清掃活動や啓蒙活動に勤しんでいる。
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