「宮古島フォトコン2014」入賞作品を寸評付きで全公開!
宮古島フォトコンテスト2014の入賞作品が決定しました!
見事入賞を果たした作品を、審査員の越智隆治と寺山英樹の寸評と共にご紹介します。
グランプリ
「色の力と神秘」 たけし
越智
色のインパクトもそうですが、構図の切り取り方がとても上手いと思います。
今回、クマノミを被写体にした写真が多く出展されていたのですが、その中でも特に秀逸な作品でした。
見た瞬間から、イソギンチャクの色の迫力と、色の明暗、イソギンチャクの先端部分の大小の配分、蠢き具合に「おお!」と感動しました。
今回一眼で感動したのは、正直、この1作品だけでした。
そして、一瞬置いて、中心からずらした同系色の小さなクマノミの配置に気付かされ、2度感動できました。
クマノミの配置には、スキルの高さも感じさせてくれます。
他にも、惜しい感じのクマノミとイソギンチャクをテーマにした作品が何点かあったのですが、構図の中に余計な部分が入ってしまっていて、その部分をトリミングした構図であったらな〜と思うものが多かったです。
それらの作品と比較しても、インパクトの高さ、スキルの高さの2点から見て、この作品は、格段に総合点の高い写真ですね。
寺山
まず、応募作品を並べた中で、理屈抜きに真っ先に目が行き、迷うことなく「これですよね」となったのがこの作品です。
どうしても、“他の作品とは違う”オリジナリティのある写真に魅かれるのですが、そういう意味では、ブルーの写真が多い中、この作品の鮮やかな色彩には一気に心を持っていかれました。
また、ダイバーの中にある“宮古島といえば地形”というイメージを覆すという着眼点でも、この作品は、ひと際、輝きを放っていました。
準グランプリ
「陽射し」 hiro3
越智
グランプリの作品と違い、最初に、「これは何? どうなってんの?」と頭の中に疑問符が湧いきました。
写真をモノクロにしたことで、被写体となるダイバーが、なんだか宇宙を漂うモビルスーツのように見えます。
自分はガンダム世代なので、「あ〜、ガンダムのアニメの中に、太陽の光を浴びて、ガンダムがこんな態勢で宇宙を漂っているみたいなシーンあったよな~」みたいな。
持っているカメラハウジングも、武器に見えてきます。
僕らだと、普通こういう構図をとってもらう場合には、マスクに光を反射させるのが定番ですが、あえてずらしているものを選んだのか、逆に胸(お腹)の部分のバックルらしきものに光が反射していて、マスク部分が不鮮明なのも、最初の不思議感に一役買っていますね。
ダイバーを入れ込んだ写真は、ダサくなりがちですが、これは表現方法も合わせて、カッコよくまとまった作品だと思います。
寺山
宮古島を象徴するシーンといえば、ダイナミックな地形の造形美と降り注ぐ光の神々しさ。
モノクロ写真は光と影のコントラストが重要ですが、そういう意味では、宮古島の地形ほど、モノクロ写真と相性がよい海中シーンはないかもしれません。
ブルーの美しさを差し引く代わりに、光の存在を際立てさせ、幻想性を増す写真になっているのではないでしょうか。
準グランプリ
「背後の闇」 りっく
越智
影絵のような1枚。
しかも、ケモクラインでボケ味が出ていることで、幕を張った後ろで、実際に影絵劇が行われているような幻想的な雰囲気に包まれています。
暗部と光の部分、ダイバーの配置も絶妙で、自分としてはとても好きな作品です。
寺山
グランプリ作品同様、理屈抜きに目がいく作品で、他の作品とは異なる色彩と着眼点に魅力を感じます。
越智カメラマンが「影絵のよう」、作者が「背後の闇」と称していますが、タイトル次第で、いろいろ物語が生まれそう。
写真ですべてを語っていない余白の部分が、逆に魅惑的ですね。
サンゴ賞
「未来への贈り物」 しゅうちゃん@オヤジーズ
越智
サンゴの写真に関しては、正直今回はあまり「おっ!」と思わせてくれる作品がありませんでした。
写真が悪いとかそういうことではなくて、自分がサンゴというテーマで、もう新たな作風を作り出せないくらいに撮り慣れているため、意外性があったり、インパクトのある作品を選ぶということ自体が、このテーマでは難しかったかなと思います。
この写真は半水面の空側にボートを写し込み、ダイバーを入れることで、写真に動きやストーリーを与えています。
ただ、船の写りがもう少し、ちゃんとしていたり、船の色が赤とかカラフルな色だったり、あるいは、ダイバーのフィンが赤とか、もう少し色味がついていたら、もっと、メリハリのある写真になっていたと思います。
狙いは良いので、今度はそうした細部にまでこだわって撮影したら、もっと良いのではと思います。
頑張ってください。
寺山
“海の元気のバロメーター”といわれるサンゴ。
年々、減少しているという沖縄の海にあって、宮古島の浅瀬には、まだまだこれほど豊かにサンゴが広がっていることを、わかりやすく伝えてくれる写真ですね。
半水面という手法で、水面上のボートや海中のダイバーなどなど、情報の多い写真になっていて、物語が伝わってきます。
青空のもと、サンゴの上を漂い……。
写真のダイバーに自分に投影すると、見ているだけで気持ちよくなってきます。
地形賞
「モンスター出現」 しんべえ
越智
ライトを目に見立てて、作り込んだ作品ですね。
宮古島で取材した後も、あちこちの海で、顔とかに見える変わった地形を探したりしていますけど、なかなか見つかりません。
やはり、そういう顔に見える、生き物に見える岩も、宮古島の大きな特徴の一つだと感じました。
またぜひ潜りに行って、この写真のように、新たなモンスターを探してみたいです。
寺山
アイデアや遊び心のある“擬人化”写真を撮るのも、フォト派の楽しい潜り方のひとつ。
生物の被写体は“目が命”と言いますが、モンスターに仕立てた地形とライトで作った強烈な眼光は大迫力。
向かっていくダイバーをにらみつけている、あるいは、待ち構えているような構図も決まっていますね。
マクロ賞
「よばれてとびでて!」 たえころ
越智
撮影位置にもよりますが、ワライボヤの中から吹き出しのように、さらに小さなワライボヤできているみたいで、とっても可愛いですね。
数は少ないけど、なんかほんわかさせてくれる作品です。
寺山
笑っているように見えるホヤの仲間、通称“笑いボヤ”。
宮古島ではよく水中で見ますが、つい探してはじっと見つめて、ニヤ~っとしてしまいます。
特別賞
「やすらぎ」 デューク津川
越智
前にFacebookで見てしまっていた作品だったので、選考のときに最初のインパクトに欠けてしまったことが残念でした。
Facebookですぐに、多くの人に作品を見てもらえる機会ができたことは、良くもあり、悪くもありということでしょうか。
ライトを配置して、しっかりイメージ作りをした上で、撮影しているところも面白いですね。
こうして作り込んだ作品を作るのは、日本人のワイド系のフォト派としては珍しいと思います。
でも、最近は世界中の様々ダイバーが、様々な感性を持って撮影した作品も、Facebookで見られるようになり、こうした新たなイメージ作品がもっと登場してくる可能性もあるのかなと思います。
下の堆積物が舞い上がらないように、慎重にセッティングし、モデルとなったガイドの方が、エアを出すことも我慢して撮影したのかなとかいろいろ想像しちゃいますね。
寺山
日本の場合、水中写真は“自然”を切り取ることが多いですが、水中の特性を生かした、良い意味で“人工”的、“演出”の入った写真も見てみたい気もします。
陳腐にもなりやすく難しい分野ですが、この写真は、自然と演出がバランスよく融合していると思います。
特別賞
「クリスマスツリー」 Umekichiy
越智
ビギナーの頃って、イバラカンザシって、海の中でけっこう気になる存在でした。
たくさん見つけると、引っ込ませてみたくなりますよね。
今では、色がカラフルだから、イバラカンザシにカエルウオ系の魚とか乗っかってたりすると、「やった!」と思って狙い撃ちしたりします。
タイトルでもわかるように、ダイバーが海の中で感じるクリスマスのイメージとして、イバラカンザシに目がいく人は多いみたいですね。
この写真は、1つの真っ赤なイバラカンザシがサンゴの上にポツンとあります。
サンゴのモコモコ感が、雪が積もった雪原、そこに炎のように、赤く燃えて立つクリスマスツリーの暖かさって感じですかね。
そんな印象を受けますね。
願わくば、もう少し明るくして、コントラストもつけて、雪原となるサンゴの表面を白目に表現できたら、もっと良かったと思います。
寺山
色彩豊かなイバラカンザシは水中写真を彩るときに重宝しますが、その際は、ワンポイントに使ったり、写真を華やかにするためにクローズアップしたりして撮影することが一般的。
この作品は、画面のほとんどを暗い配色にして一見シュールにも見えますが、オレンジ色が際立たせる構図に何となく惹かれました。
Oceana賞
「海を翔ぶ」 まや
越智
ダイビングやスノーケリングをもっと楽しんでもらいたいオーシャナとしては、こういうダイバーの表情のある楽しげな写真が気になりますね。
えび反り方も元気がよくて良いし、バックが明るい砂地で、邪魔なものが無いから被写体が浮き立ちます。
天気が良いときに、綺麗な砂地で潜ると、遊び心が沸き起こり、いろいろやってみたくなります。
そんな楽し気な雰囲気が写真に出ていると思います。
寺山
笑顔の写真は見ているだけでこちらも楽しくなってきますが、マスクをしている水中ではなかなかわかりづらいもの。
その点、マスクを取った満面の笑みと体いっぱいに海を楽しんでいる雰囲気は、見ているだけで、海に行きたくなってきます。
減圧とか安全を考え過ぎて、頭でっかちで窮屈になってしまいがちですが、「楽しい!」「気持ちいい!」は、海遊びの原点。
そんなことを思い出させてくれる素敵な思い出の一枚ですね。
マリンダイビング賞
「フワフワのおうち~」 ゆかぴぃ
※月刊『マリンダイビング』が選出
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来年度も宮古島フォトコンは開催予定。
皆さん、この機会に宮古島へ潜りにいって、ぜひフォトコンへの応募、お待ちしています!
【おまけ】審査の感想
力作ぞろいの中、いつも頭を悩ませる審査
グランプリや準グランプリなど、特にコンセプトのない中で入賞作品を選ぶとすると、写真のスキルはもちろん重要ですが、最後はどうしても審査員の好みになってしまう部分も大きい。
これが「宮古島を象徴する一枚」というテーマであれば、神秘的な地形の写真になるかもしれませんが、「宮古島で撮影した写真」という広い条件での作品選びとなると、「他の作品と異なる」「おもしろい」「新しい」というのも重要な要素。
特に、いつも「何かおもしろいテーマや発見はないかな?」と考えている審査委員のオーシャナスタッフとしては、雑誌のグラフのような作品より、今まで見たことのないような写真に魅かれてしまうのかもしれません。
そういう意味では、宮古島といえばダイナミックな地形に光が降り注ぐ、“青と光の競演”というイメージが強いこともあり、そんな宮古島“らしさ”より、色彩やアイデアに目がいったように思います。
結果として、グランプリや準グランプリの作品が、赤、モノクロ、緑といった色になったのかもしれません。
宮古島を何度か潜って気づくのは、定番の地形はもちろん素晴らしいのですが、“地形だけじゃない”ということ。
ポイントによって、サンゴもあれば、群れもいて、マクロも狙えます。
一度潜りにいって、ぜひダイバー憧れの地形ポイントを潜ってほしいと思うのですが、同時に、ぜひ何度も潜りにいって、いろんなポイント、そして写真を試してほしいと思います。