東京パラリンピックテニス出場を目指す坂口竜太郎くん、 奄美大島の海でダイバーになる!!
Amamioshima / 奄美大島
Amamioshima / 奄美大島
- Photo
- 越智隆治
- text
- 稲生薫子
- 取材協力
- ゼログラヴィティ
STEP1 学科講習
まずはお勉強
余計な会話は
ひとつもない!?
笑い声が絶えない学科講習
「あ、それってさ~○○ってこと~?」「たとえばさ~、△△ってこと~?」ギャハハハハハー!
子どもたちと先生の声が響き渡ります。
今回、ダイビングのCカード講習を受講しているのは、下半身に障がいのある竜太郎くん(りょうくん)と、弟の颯之介くん(そうくん)兄弟。お兄ちゃんがダイバーになると聞いて、「僕もダイバーになりたい!」と兄弟そろって講習を受けることになりました。実は、2人のご両親はノンダイバー。子どもがダイビングを始める場合は、保護者がもともとダイバーであることが多いのですが、今回は珍しいケースでご両親は見守ることしかできません。
さて、どのような講習になったのでしょうか?
ダイバーになるためには、「学科試験」「限定水域講習(プール講習)」「海洋講習」の3ステップをクリアしなくてはならず、第一関門は、「学科試験」です。ただ、まずは楽しんで講習を受講することが最も大切。
今回の先生であるゼログラヴィティの山下豊さんは「僕は教本や教材は基本的には使いません、全部自分の言葉で受講生が理解できるまで説明します」と言います。
今回の奄美大島のようなリゾート地でCカードを取得する場合は、時間が限られているので、事前に教材が送られてきて、それを学科試験の日までに自分で読んで勉強して備えるか、あるいは、e-ラーニングで勉強するというスタイルも少なくありません。なので、今回山下さんの言葉を聞いてびっくりしましたが、確かに、生徒が子どもの場合は、なおさら教材を使わずに言葉で説明したほうがわかりやすいですね。
学科講習を少し聞いていたら、子どもたちが「あ!わかったーそれってさ~○○○○でしょ~?」と楽しそうに別の話にすり替える場面が多発。しかし先生も負けじと「せやで~」と言いながら和気あいあいと、とても楽しそう。かといって、ふざけてばかりではなく、大事なところはしっかり押さえ、頭に叩き込んでいきました。
休憩時間にも「復習する~!質問出して~」と、先輩ダイバーでもある越智カメラマンのところに持ってきたノートには、ダイビングのいろはがびっしり。
- Q 水深20 mのときは、何気圧になりますか?
- 「3 気圧―!」
- Q 水中にあるものは、陸上にあるものに比べてどう見えますか?
- 「3/4 ?あれ、4/3 ?……4/3 大きく見えるー!」
など、難しい問題もきちんと覚えていました。
もう我慢できない!
プールで遊びたい!
学科講習が夕方ごろに無事に終わると、子どもたちの“遊びたいモード”が爆発。「学科試験は明日がんばる」と先生と約束して、夕方のプールに飛び込んでいきました。
りょうくんは、ゼログラヴィティに常設されている水に濡れても大丈夫な車いすに乗り換え、スロープを下りて水の中に入ります。水に入るまでは元気だったその姿も、いざ水に入ると「プール、久しぶりで怖いから、絶対に手を離さないで!近くにいて!」と少し怯えた様子。しかし10分ほど一緒に練習していくうちに、「1人で泳いでみたいから、溺れそうになったら助けてくれる?」「1人で向こうまで泳いでみるから、向こうで待っていてほしい」と急にひとり立ち。
暗くなった後のプールは幻想的にライトアップされ、水への恐怖心も解け、さらにテンションの上がったりょうくんたちは、ひたすら泳ぎ回ります。大人たちの「もう帰ろうよ~」の言葉は聞こえていない様子(笑)。「怖くないと思うまでとことん寄り添えば、きっとどんな子どもでも1人で泳げるようになる」そう思えた瞬間でした。
そのころ、お父さんとお母さんは……
子どもたちががんばって講習しているころ、お父さんとお母さんは施設をぬけ出し、奄美大島を大満喫!
海洋実習で潜る海を高台から眺め、ハートに見える丘に登り、変わった海の音が聞こえるホノホシ海岸を楽しんでいました。子どもたちも、ある意味リラックスしてお勉強できたのかも!?