美しいけど猛毒を持つ「カツオノエボシ」に注意!刺されたフリーダイバーのリアル体験談

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カツオノエボシに刺された武藤氏の体験談

ここからはカツオノエボシに実際に刺されてしまったという、武藤氏のリアルな体験談を紹介。武藤氏が地元である神奈川県葉山町の沖合でフリーダイビングレッスン中にその事件は起きた。

レッスンも終盤に差し掛かり、武藤氏がシュノーケルを外して、大声で「さぁ、みんな、この辺りで折り返しましょう!」と発声した瞬間、波と一緒にカツオノエボシの触手が口の中に…。さらに、口の中に入った触手を払い除けようとした手(素手)も刺されてしまった。

刺された瞬間、電流が走ったような激痛が。 “怪我などでは経験したことがない、焼けつくような毒特有の痛み”だったそう。その後、次第に患部が痺れてきて、激痛は尚も続く。武藤氏を刺したカツオノエボシは、すぐ目の前を漂っており、しかもフロートとウエットスーツに絡み付いていた。一人ではどうしようもなく、防寒対策としてグローブしていたレッスン参加者が協力して、剥がしてくれた。このとき「一人で海に潜ってはダメだと再認識した」という。武藤氏だけが刺されたため、「せっかくのレッスンを自分のせいで中断なんて」と流石に一瞬迷ったそう。しかし、ベテランの参加者の方々が「すぐ帰りましょう!」と先陣切ってくださったので、その言葉に従ったという。いざというときのためにレッスンに持参しているフロートに、お世話になりながら岸まで泳いだ。

Point!刺された直後

  • ●刺されたとき、近くに触手や浮き袋が漂っているので、まずは周りを観察し、触手を取り除くか、もしくはその場を離れることが大事
  • ●水中で刺された場合は、アナフィラキシーショックで意識を失ったりする危険性もあるため、すぐに陸に上がる
  • ●患部に付着した触手を海水で優しく洗い流す必要があるが、今回は岸に戻りながら手をヒラヒラとさせ、自然に洗い流した

レッスン参加者とともにすぐさま陸に上がり、その頃には患部が腫れ、約3時間、痛みと痺れが続き、しばらく言葉が出なかったという。クラブハウスに向かって歩きながら、できるだけ熱いお湯をかけた。「今後は、上がってすぐかけられるよう水筒にお湯を持参しよう」と振り返る。

その後、保冷剤を用いて1時間くらい全力で冷やしながら、虫さされ用クリームタイプのかゆみ止めを塗ったが、まったく痛みと腫れが引かなかった。病院に行き、温タオルで温めたら、次第に痛みが引いてきた。

Point!陸に上がってから

  • ●お湯(40~45℃程度が目安)をかける
  • ●すぐに病院に行く。海水浴場ならまずは監視所または救護所へ。適切な一時処置をより早くしてもらえる

その後、念のため、武藤氏は近くの病院へも行き、適切な対処の仕方を教えてもらった。武藤氏はカツオノエボシに刺されたことについて、こう振り返る。

カツオノエボシは浮かんで漂って生きているだけなのだから、人間を刺してしまう行為に悪気はない。だから海に入らない・近づかないことが一番の予防策ではある。けど、それを承知で海に入りたい人は、ウェットスーツだけでなくフードやグローブも着用して、なるべく肌を露出しないことが大事。

そして海には1人で入らず、バディ同士で入ることも、素早い対処につながる。今回の場合、1人ではフロートやウェットスーツに絡みついた触手を取れなかったし、万が一沖合でアナフィラキシーショックになっていたら取り返しもつかないことになる。

事前に知識を持っておくことも必須。海でパニックになると溺れる可能性もあり、非常に危険。海には毒を持つ生き物がいて、刺される危険性があることを念頭に置けば、刺された場合でも、冷静に対処できる。また、透明度が悪かったり、白波が発生している海の場合は、カツオノエボシの出現により一層注意し、海に入ることを中止したり、途中で引き返す選択肢を常に持っておく。

武藤氏のその後はというと、適切な処置が功を奏し、大事には至らず、すぐ海に入れるようになった。しかし現在も手の甲には赤い跡がうっすらとあるという。人によっては数年跡が残ったりするそうだ。

武藤氏のFacebookには「今回は幸い、周りにいた参加者にベテランの方々が多く、素晴らしい連携プレーのおかげで迅速な対応ができました!ほんと感謝。職業柄、トラウマどころか良い経験値となり、より一層海への理解が深まったというか何というか。海はそもそも人間が住む場所ではなく、人間には危険がいっぱいの場所。それを承知で、そっと慎重に楽しませてもらい、何より安全に陸に戻ってくることを大切に、楽しい2022夏にしましょー!」と投稿されている。

カツオノエボシの毒は、時にショック死まで引き起こしてしまう恐ろしいもの。肌の露出を避けるなど、できる対処を行い、海中でも浜辺でも注意しながら海のレジャーを楽しんでいきたい。

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PROFILE
2018年、電子部品メーカーに新卒で入社。同時にダイビングも始める。平日は広報室で社会人としての経験を積みながら、土日は海通い。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。
現在はライターとしてネタ探しに目を光らせているが、海やダイビングについての記事を書けることに幸せを感じている。ダイビングをもっと広める!子どもたちの未来にも綺麗な海を届ける!そんな想いで日々活動している。
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