春めく南さつま・大当の海。ライトトラップでとらえた夜の生き物の貴重な生態シーンも大公開!

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こんにちは。水中カメラマンの堀口です。

冬場は九州へと撮影に訪れていた私は、2月の後半に鹿児島へと足を運びました。

向かったのは、鹿児島県の南さつま。鹿児島本土の最西南端に位置する場所です。

2月の南さつまは、冬場とは思えないようなポカポカとした陽気でした。また、海の中も18℃前後なので、本州の海とは思えないような快適さでした。

南さつまの海は昨年の5月や11月にもヘッドラインで少しご紹介しましたが、今回は再び、すっかり春めいてきた南さつまのダイビングポイント「大当(おおとう)」を切り取ってご紹介していきます。

\南さつまの過去記事はこちら/
▶サンゴ礁に温帯と亜熱帯が入り乱れる、不思議な光景に感動!さまざまな表情を魅せる鹿児島県・南さつまの海
▶鹿児島県・南さつまにイレズミミジンベニハゼが登場!珍しいハゼに会うなら今がチャンス☆

ワイドで切り取る
浅場の海藻とサンゴ

南さつまのダイビングポイント「大当」は、講習などでも使われる、初心者にもおすすめの穏やかなポイントです。今回お世話になった鹿児島のScuba Diving Shop SB(スマイルビームス)さんでは、ビーチからでもボートからでもエントリーすることができます。

エントリーすると、浅場はカギケノリなどの海藻類がとても綺麗で、春の訪れを感じる風景が広がっていました。

太陽の光で照らされたカギケノリが美しい(撮影/堀口和重)

太陽の光で照らされたカギケノリが美しい(撮影/堀口和重)

そして「大当」の見ものでもある、シコロサンゴの群生地。何度見てもそのサンゴの量には驚かされます。太陽の光が入れば、写真としても“より素晴らしい絵”となるのも魅力です。

大当の目玉はこれ!!シコロサンゴの群生地(撮影/堀口和重)

大当の目玉はこれ!!シコロサンゴの群生地(撮影/堀口和重)

昨年はSBのオーナー・松田さんが、サンゴの産卵の観察&撮影に成功して話題となりました。大量のサンゴの産卵、ぜひ見てみたいですね。

水面付近も気が抜けない!?
元気なサヨリや人馴れしたアオリイカ

「大当」は魚種も多く、シコロサンゴの周りにはチョウチョウウオの仲間、さらにサンゴ砂となっている海底ではハゼ類も数多く見られます。

また水面を見上げれば、回遊しているコモチザヨリが元気よく泳いでいる姿が見られたり、キビナゴなどが姿を現すことも。撮影中は水面も何かいないかと、時折見上げてました。

群れで移動するコモチザヨリ(撮影/堀口和重)

群れで移動するコモチザヨリ(撮影/堀口和重)

エントリー口付近には、3匹のアオリイカの子どももいました。このアオリイカは何週間も居ついているようです。擬態しているのか、それとも人馴れしているのか、ギリギリまで寄っても逃げません。

3匹のアオリイカに癒される(撮影/堀口和重)

3匹のアオリイカに癒される(撮影/堀口和重)

マクロ派にはうれしい被写体ばかり

昨年にご紹介したイレズミミジンベニハゼは、なんと少し大きくなり、元気に活動していました。

さらに近くにはクロイシモチもいるので、上手く撮影できれば1フレームに2匹を収めることもできます。

少し大きくなったイレズミミジンベニハゼ(撮影/堀口和重)

少し大きくなったイレズミミジンベニハゼ(撮影/堀口和重)

イレズミミジンベニハゼが住んでいる場所の近くの岩には、シリウスベニハゼもいます。必ず同じところに戻るので観察しやすいです。

色が綺麗なシリウスベニハゼ(撮影/堀口和重)

色が綺麗なシリウスベニハゼ(撮影/堀口和重)

「大当」はサンゴ域と砂地に分かれているため、小さな生き物は探せばたくさん見ることができます。マクロ派フォトダイバーは、時間を忘れて潜ってしまうかもしれませんね。

クマノミ(撮影/堀口和重)

クマノミ(撮影/堀口和重)

イソギンチャクモエビ(撮影/堀口和重)

イソギンチャクモエビ(撮影/堀口和重)

夜の海はメディア初公開?
大当のライトトップ

そして、昨年より私がイベントをしている「ライトラップ」の写真も公開させてください。

ライトトラップとは、夜の海にライトを設置して生き物を呼び寄せ、観察や撮影をする手法のことです。

ライトをただ夜の海に置くだけではなく、集まってきたプランクトンなどを捕食する生き物も現れるため毎日は行わなかったり、場所を変え行ったりと、生物や環境への配慮も心がけながら撮影を行っています。

「大当」では昨年5月、11月、そして今回の2月と3回行いましたが、毎回変わった生物が現われました。今回撮影できた2種類と11月に撮影できた1種類の生き物をご紹介します。

1つ目はホタルイカモドキ科の1種。外洋の潮が入る場所だと日本各地で見られ、3回行ったライトトラップのイベントではほぼ毎回見られた生き物です。

そんなホタルイカモドキですが、なんとアミを捕食中という珍しい瞬間を撮影することができました。私も撮影できたのは初めてだったので少し興奮しました。

ホタルイカモドキ科の1種の捕食シーン(撮影/堀口和重)

ホタルイカモドキ科の1種の捕食シーン(撮影/堀口和重)

続いては、松田さんが見つけたカエルアンコウの仲間の幼魚。もうすぐ着底して生活し始めるくらいの、わずか2㎝前後の個体に、参加者が皆大興奮でした。

浮遊するカエルアンコウの仲間(撮影/堀口和重)

浮遊するカエルアンコウの仲間(撮影/堀口和重)

そして昨年の11月には、マツカサウオの極小個体が登場しました。わずか1㎝くらいしかない、こんなに小さな個体を見ること自体が初めてで、その時も大興奮でした。

極小のマツカサウオ(撮影/堀口和重)

極小のマツカサウオ(撮影/堀口和重)

*

ここ1年、季節を通して「大当」の撮影をしていきましたが、毎回表情が変わり、とてもおもしろいポイントだなと思います。5月ごろにはハナイカも見かけましたし、暖かくなってくれば生き物の生態もたくさん見ることができます。

ライトトラップもこれからさらに新しい発見がありそうで、こちらもとても楽しみです。またおもしろい生物が撮れたら、みなさんにご紹介していきたいと思います。

撮影協力/Scuba Diving Shop SB(スマイルビームス)

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PROFILE
日本を拠点に活動している⽔中カメラマン。カメラマンになる以前はダイビングガイドをしながら数々のフォトコンテストで⼊賞。現在はダイビング・アウトドア・アクアリストなどに関連する雑誌やウェブサイト、新聞などに記事や写真を掲載、水中生物の図鑑や教書にも写真提供している。2019年に日本政府観光局(JNTO)主催の“「⽇本の海」⽔中フォトコンテスト 2019”にて審査委員、2020年には“第28回 大瀬崎カレンダーフォトコンテスト”の特別審査員も務める。近年は訪⽇ダイビングツーリズム促進を⽬的として“NPO 法⼈ Japan Diving Experience”としての活動も⾏っている。
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