サンゴ礁に温帯と亜熱帯が入り乱れる、不思議な光景に感動!さまざまな表情を魅せる鹿児島県・南さつまの海

こんにちは。水中カメラマンの堀口和重です。

みなさんは、鹿児島といえば、どこの海を思い出しますか?

昔の私なら迷わずに“錦江湾(きんこうわん)”と答えていました。

おびただしい数のアカオビハナダイ、そして桃色のネジリンボウ。桜島にちなんでか、このネジリンボウに“サクランボウ”という通称を考えた人のネーミングセンスは、本当に素晴らしいと思います。

サクランボウは桜島のお膝元の海にいるんだと、誰もが想像して楽しい気分になるのではないでしょうか?

南さつまの海とは

私は去年から縁あって、鹿児島のScuba Diving Shop SB(スマイルビームス)さんに協力していただき、撮影をしています。

もちろん錦江湾も潜り、緑色の不思議な海に驚かされましたが、もう1つ、これも鹿児島の海なのか!と驚かされた海がありました。

それが「南さつま」

九州ダイバーにはメジャーかとは思いますが、それ以外の地域のダイバーにはまだあまり知られていないので、今回は知られざる鹿児島・南さつまの海をご紹介しようと思います。

南さつまは、鹿児島県の薩摩半島西岸に位置する、東シナ海に面した外洋のダイビングサイト。

ショップのある市内から南に車で約60分、港がある南さつまの大当(おおとう)に到着。港の周りには何もなく、のどかに時間が流れる場所です。

大当の集落は、石垣で囲まれた家並みが連なっており、どこか南国に来たかのような雰囲気。
そして、近くの高崎山から眺める海は絶景です。

展望台からは南さつま近辺の小島も見ることができる(撮影/堀口和重)

展望台からは南さつま近辺の小島も見ることができる(撮影/堀口和重)

県内最大級のサンゴの群生

「大当」は、ボートとビーチ両方からエントリー可能。透明度も良く穏やかなので講習などでも使われる、初心者にもおすすめのポイントです。

この海を訪れてまず驚かされたのは、浅場からどこまでも続くようなシコロサンゴなどのサンゴの群生。

しかも、こんなにサンゴがあるなら生物も南方種が多いと思いきや、メインは温帯にいる生き物なのです!

サンゴの上には一面、クロホシイシモチがギュウギュウな状態で生活したり、少し変わった光景が広がります。

サンゴ礁に群れるクロホシイシモチ(撮影/堀口和重)

サンゴ礁に群れるクロホシイシモチ(撮影/堀口和重)

南さつまでイキイキと生き抜く

そんなサンゴに圧巻されつつも気持ちを切り替えて、ひとつひとつの生き物に目を向けると、個々の生活が観察できて非常におもしろいです。

サンゴ礁に色を添えるようなチョウチョウウオの仲間や、これからの時期に口内保育が見られるテンジクダイの仲間たちがサンゴの上で生活しています。

そしてその周りでは、カモハラギンポの雄が縄張りを争い威嚇をするシーンも。

カモハラギンポの雄同士が縄張り争いをしている(撮影/堀口和重)

カモハラギンポの雄同士が縄張り争いをしている(撮影/堀口和重)

サンゴのがれ場にはハナイカが石のように擬態して、近寄ると警戒したかのように黄色に様変わりします。

がれ場で岩のようにして擬態していたハナイカ(撮影/堀口和重)

がれ場で岩のようにして擬態していたハナイカ(撮影/堀口和重)

サンゴの群生があった場所から深度を下げ、砂地を降りていくと、かわいらしいミジンベニハゼなどの生活も見られます。

南さつまのワイドの世界

ワイドも楽しみたいという方におすすめの、群れや大物狙いの熱いポイントのひとつが「笠沙大瀬(かささおおせ)」です。

咲き乱れるようなソフトコーラルや、不気味な格好のテズルモズルを見ながら移動して行くと、息をのむほど圧巻のイサキの群れが目の前に現れます。

色鮮やかに咲き乱れるソフトコーラル(撮影/堀口和重)

色鮮やかに咲き乱れるソフトコーラル(撮影/堀口和重)

浮遊物を食しながら泳ぎ回るイサキの群れ(撮影/堀口和重)

浮遊物を食しながら泳ぎ回るイサキの群れ(撮影/堀口和重)

そんなイサキの群れでも興奮してしまうのに、さらにはそのイサキを狙ってオグロメジロザメも高確率で登場することもあるそう!

運が良ければ、テレビや映画で見るような、迫力の水中捕食シーンにも出会えるかもしれませんね。

安全停止は浮遊天国

見出しからして天国に召されそうですが(笑)、ここが本当に同じ海なのかと思ってしまうほど、安全停止中には別の顔を見せてくれる海でもあります。

南さつまはこの時期、多くの浮遊系生物が潮に乗ってくるようで、いつもは長く感じる安全停止も時間を忘れて見入ってしまうほど生物が流れてきます。
まるで浮遊天国にでもいるような錯覚を起こしてしまいますね!

オオサルパと浮遊生物を撮影するダイバー(撮影/堀口和重)

オオサルパと浮遊生物を撮影するダイバー(撮影/堀口和重)

安全停止中ではないのですが、今回「大当」でハナガサクラゲの姿が多く見られ、そのクラゲにくっついているモエビ科の仲間を高確率で観察することができました。

毎年5月2週目から6月ごろの1カ月間が浮遊生物が多い潮が入るようで、ここが狙い目のようですね。

小さなヤサガタハダカカメガイ(撮影/堀口和重)

小さなヤサガタハダカカメガイ(撮影/堀口和重)

ハナガサクラゲにつくツノモエビ属の1種(撮影/堀口和重)

ハナガサクラゲにつくモエビ科の1種(撮影/堀口和重)

2019年5月現在、ボートで南さつまの海を案内できるのは、Scuba Diving Shop SBさんのみとなっています。もちろん、過去にウェブマガジンでも紹介されている通り、錦江湾でのガイドも可能。

南さつまは黒潮の支流も入ってきたとのことで、透明度も水温もグンと上昇中のようです!
この時期から盛り上がりが続く鹿児島の海・南さつまを、ぜひ体験してみてはいかがでしょうか?

■撮影協力/Scuba Diving Shop SB(スマイルビームス)

▼南さつまの海の情報はこちらもチェック!

堀口和重さん
プロフィール

horiguchi_profile

伊豆の大瀬崎にある大瀬館マリンサービスにチーフインストラクターガイドとして勤務後、2018年4月にプロのカメラマンに転向。
現在は伊豆を拠点に水中撮影から漁風景や海産物の加工まで海に関わる物の撮影を行っている。
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PROFILE
日本を拠点に活動している⽔中カメラマン。カメラマンになる以前はダイビングガイドをしながら数々のフォトコンテストで⼊賞。現在はダイビング・アウトドア・アクアリストなどに関連する雑誌やウェブサイト、新聞などに記事や写真を掲載、水中生物の図鑑や教書にも写真提供している。2019年に日本政府観光局(JNTO)主催の“「⽇本の海」⽔中フォトコンテスト 2019”にて審査委員、2020年には“第28回 大瀬崎カレンダーフォトコンテスト”の特別審査員も務める。近年は訪⽇ダイビングツーリズム促進を⽬的として“NPO 法⼈ Japan Diving Experience”としての活動も⾏っている。
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