ポストコロナの旅行スタイル「リジェネラティブツーリズム」とは!? サウジアラビアが早くも導入!
サウジアラビアでは早くも、ポストコロナの旅行スタイルといわれる、「リジェネラティブツーリズム(再生型観光)」を意識した大型宿泊施設を建設中。
ひときわ目を引くこちらの施設デザインにも再生観光の意識が向けられており、「コーラル(サンゴ)・ブルーム(咲く)」というコンセプトで表現されているらしい。
「リジェネラティブツーリズム」やユニークなコンセプトである‟コーラル・ブルーム”について詳しくみていこう。
コンセプトの基盤となる「リジェネラティブツーリズム」とは
商業化の波に乗ったバブリーな観光地での旅行スタイルに代わって、地域の自然や文化などの観光資源を持続可能な状態で維持する「サステナブルツーリズム」が世界の旅行スタイルとして広まってきていたが、コロナ禍ではさらにその動きが加速しつつある。そこで台頭してきたのが、サステナブルの観点だけではなく観光地を訪れたことで自然環境の再生を促すことを意識した「リジェネラティブツーリズム」。再生型の旅行スタイルとして注目を集めており、目下、旅行スタイルの最新版といったところだろうか。
生物多様性に配慮した設計や再生可能エネルギーを使用
こういった情勢を受け、中東・サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が会長を務めるザ・レッド・シー・デベロプメント・カンパニー(以下、TRSDC)では、「リジェネラティブ・ツーリズム」を意識した再生可能な大型宿泊施設を建設している。
同国西海岸に沿った28,000km²の土地と水域にわたるその宿泊施設は、生物多様性(バイオダイバーシティ)への配慮を中心に据え、島のマングローブやその他の生息地を破壊しないように設計されている。環境保護の観点にくわえ、自然環境を強化する修景(※)によって生物の新たな生息地も創出予定。TRSDCは、2040年までに希少種保全効果の30%アップを実現することを約束しており、今よりも良い環境状態を作り出すことは必須項目といえる。
施設の建設に使用する材料にもこだわっており、軽量で熱量の少ない素材を選択。これらはオフサイトで製造されるため、周辺環境に悪影響を及ぼす機会も減り、環境への負荷を低減できるとしている。
また、旅行者が快適に滞在するために無くてはならない冷房設備については、再生可能エネルギーでまかなう予定。同社では、世界最大規模の地域冷房プラントを建設しており、そこに再生可能エネルギーを蓄電し、24時間体制で施設全体に供給することを目指しているという。
(※)造園で、自然環境と統合し、景観を美しく整えること。地形の改変や植栽、工作を含む。
「コーラル(サンゴ)・ブルーム(咲く)」というユニークなコンセプト
▲建設の中心地であるシュライラ島
大型宿泊施設は「コーラル・ブルーム」というコンセプトで設計されており、コンセプトについて、建築事務所フォスター+パートナーズのスタジオ責任者であるジェラルド・エベンデン氏が次のように述べている。
「私たちのビジョンは、シュライラ島のありのままの自然からインスピレーションを得て生まれました。ホテルは、まるで流木のようにビーチに打ち上げられたサンゴが、砂丘に根付き、色鮮やかに花咲いた印象を与えるデザインとなっています。私たちが使用する素材や環境への影響を最小限に抑えたデザインは、島の自然環境の保護を保証します。それと同時に、加えられるものは、すでにそこにあるものを引き立てるように設計されています。よって、コーラル(珊瑚)・ブルーム(咲く)という名が付きました。」
同建築事務所が設計する施設は2022年末までに、国際空港と4件のホテルが開業予定とのこと。同コンセプトによる建設はプロジェクトのメインであるシュライラ島の他、サウジアラビアの21もの島で進められ、2030年をめどに完成するという。
長期間に渡るビッグプロジェクトの動向はこちらからチェック。
高級リゾートホテルが商業化に走る時代は過ぎ去りつつある。それは旅行者側にも当てはまることで、今後は、より良い未来のために、再生型の旅行スタイルを選択する責任を求められる世の中になっていくのかもしれない。
(文:染谷遥)