「マリンテックフォーラム in KOBE 」参加レポート!第2回も開催決定

様々なステークホルダーの交流により、神戸市の海洋産業を中心としたエコシステムの構築を目的にした交流イベント「マリンテックフォーラム in KOBE 2021 」が、昨年12月に開催された。

オーシャナ編集部・中西も、海洋問題について気付きになることを見つけるべく、海洋産業について初心者ながら参加。そして、フォーラムを通して知った海洋産業の先端で活躍している企業の取り組み紹介やディスカッションについて、学んだこと感じたことを交えてレポートしたい。海洋問題について未知の方から少し意識をし始めた方は、この記事を通して、少し踏み込んで日本企業の取り組みについて知りたいと思う気付きになればと思う。

photo by Pexels / Jeremy Bishop

なぜ神戸市が海洋産業の振興に力を入れているのか?

イベントの初めには、今回のイベントを企画した神戸市 企画調整局エネルギー政策課長の秋田大介氏(秋田氏)が登壇。海洋産業の振興に力を入れている1番の目的は、「神戸を元気にすること」だと言う。では、どうやって元気にするのか?その仕組みは、市を上げて海洋分野での新たな産業を創出することにより、地元の中小企業の活性化に繋げる。そして、それだけに留まらず海洋分野で次世代の人材を育成することで、一世代で終わらない継続的な取り組みにしていくというものだ。

新たな産業を創出する取り組みの1つが「海(うみ)プロジェクト」

「海(うみ)プロジェクト」とは、海に関わるお困りごとを(課題)を事前に収集し、その解決策を事業者から募集。その中から神戸市が採択した事業者へ、神戸市が支援をして実証実験など課題解決に向けた活動を行う。海洋産業の課題が解決されることによりその分野の産業が進展するとともに、その課題解決を成し遂げた事業者の実績ができ、一つの事業として海洋産業に新しい分野が創出されるという好循環が生まれる。

次世代の人材育成に向けた取り組みも積極的に実施

上記のような活動と同時に、水中ドローンのエキスパートを育成し、空を超える水中事業の発展に挑戦し続ける団体、一社水中ドローン協会と神戸市立工業高等専門学校と連携した小学生向けイベントを行うなど、次世代の海洋人材の育成につながる普及啓発活動にも力を入れている。

日本の海洋産業の可能性を感じる!最先端で活躍しているベンチャー企業2社の実践紹介

世界初の超音波テクノロジーで“sustainable ocean”に貢献!

1つ目の企業は、超音波テクノロジーを使用し漁業、養殖、海洋開発の3つのカテゴリーの水中センサーの事業を行っている株式会社AquaFusion(アクアフュージョン)。登壇したのは、「海の仕事をして50年の私が、海に恩返しがしたいと思って始めた」と言う、代表取締役社長の笹倉豊喜氏(以下 笹倉氏)。
漁業の中でも大きな問題となっている魚の乱獲を回避するべく、魚群や海底を判別する水中センサーを開発する事業を行っている。すでに従来の魚群探知機に比べ100倍細かく探知する技術の開発を実現しており、狙った魚種・サイズを絞って獲ることが可能となった。そうすることで、無駄な漁獲を減らすとともに、稚魚を避けて獲ることができるため1匹あたりの単価も上がり、海洋環境にも漁業者にもプラスな相乗効果が生まれる。

今後は、国内外で海底資源や洋上風力などのエネルギー需要が増加し、世界的に海洋開発が加速すると考え、水中を可視化し水産資源や環境保護につながるデータベースを構築することで、海が抱える課題を解決する開発を続けている。現時点での目標として「3,000m級の海底探知ができる計測器の開発」を目指しており、海洋ごみの問題の1つであるマイクロプラスチックの探知実験にも力を入れ、現在では5mmサイズのプラスチック片の探知に成功しているという。

技術的な詳しい話はわからない私でも、マイクロプラスチック片を探知できているという部分を聞き、海からマイクロプラスチック片だけを効率的に取り上げることができたら、海洋プラスチック問題が大幅に改善されるんだろうなと思い、そんな夢のような話が実現化に向け動き始めているのは聞いていてワクワクした。ひと昔は、叶わない夢だと思っていたことが、技術により叶う夢に変化しているようだ。

この記事を書いているとき、オーシャナの代表・河本が横で「信じられないことは、信じることから生まれる」と言っていて、一人シンクロニシティを感じていた。

株式会社AquaFusion代表取締役社長 笹倉豊喜氏登壇中のフォーラムの様子

これから需要が高まる洋上風力発電の道しるべとなる会社に

2つ目の会社は、神戸大学発ベンチャー企業で、風力発電のための「観測」と「推定」を複合的に用いた最適な風況調査を実施する、レラテック株式会社だ。登壇したのは、代表取締役の小長谷瑞木 氏(以下 小長谷 氏)。
海洋産業の1つである洋上風力発電の国内での市場は、10年後には460倍に成長すると言われている。
そこで、気象とICTで学術と産業の架け橋となる、風力発電の正しい導入の道しるべとなるべく、風況調査を専門とする風況コンサルタントとして会社を設立。況観測事業、シミュレーション事業、解析事業を行う。

小長谷氏によると、欧州ではすでに洋上風力発電の技術が進んでいるが、日本には台風や乱流、さらには水深が深いなど、他の国と気候や地形の条件が違うことから、海外の技術を真似するだけでなく、日本の海にあった手法で風況を「観測」「推定」しなければいけないと言う。

洋上風力発電は、日本でも注目されているが、前例が少なく未知なことがまだまだ多い分野。そこを、ICTなど学術でカバーすることで今まで手を出せなかった分野を開拓することができる革新的な取り組みに感じた。

レラテック株式会社 代表取締役 小長谷瑞木氏登壇中のフォーラムの様子

株式会社Coral Capitalが見る、海洋産業の今後の可能性

登壇したのは、株式会社Coral Capital(コーラル キャピタル) シニアアソシエイトの吉澤美弥子 氏(以下 吉澤 氏)。会社名にはコーラル(珊瑚)というワードが入っており、スタートアップのエコシステムにおいて、海の中の様々な生物を支えるサンゴ礁のような存在を目指していることから名付けられたという。
株式会社Coral Capitalの取り組みについて、一言でわかりやすく説明すると、技術やノウハウを持っているけど資金が足りない企業に向け、資金のサポートをする会社。たとえば、先ほど紹介した株式会社AquaFusionやレラテック株式会社のようなベンチャー企業へ、投資をする側の会社ということだ。

吉澤氏によると、まだ開拓され尽くしてない海洋はエネルギー資源として可能性があり、海洋系のスタートアップは投資業界でもこれからどんどん注目を集めていく投資先になると述べた。

パネルディスカッション「神戸の海が秘める新産業のポテンシャル」

パネルディスカッションでは、モデレーターとしてSUN DRED株式会社の上村遥子氏により、「海プロジェクトに対する要望があれば教えて下さい」「ぶっちゃけ神戸はスタートアップの拠点としてどうですか?」など、さまざまなテーマに沿ってディスカッションが進められた。
その中でも、「海洋を舞台に事業を進める難しさってなに?」と言うテーマでは、皆さん口を揃えて、自然を相手にする仕事のため、天候や状況が読めないことを挙げていた。実証実験などが、雨や風が強い日は海が荒れてしまい中止になることもあるのだとか。
パネルディスカッションの終わりには秋田氏は、他の市町村とも連携した取り組みを行い、神戸市内に留まらず規模を拡大して日本の海洋産業を盛り上げていきたいと述べ、それを実現するには、様々なステークホルダーやスタートアップ企業が繋がっていくことが重要なようだ。

パネルディスカッションの様子

「マリンテックフォーラム in KOBE」第2弾の開催が決定

今回レポートした「マリンテックフォーラム in KOBE」の第2弾の開催が決定しており、東京 六本木にある DMM.com本社イベント会場にて3月24日(木)に開催される予定とのこと。フォーラムの詳細は現在調整中。

海に関わる人や企業だけでなく、全く違った業界の技術やノウハウがマッチすることをフォーラムを通して知り、まさしく、海と技術を繋ぐことができるフォーラムだと参加してみて感じた。
海洋産業に携わる方は、自社の課題にマッチしたスタートアップ企業のプレゼンが聞け、コネクティングするきっかけが生まれるかもしれない。スタートアップで技術の開発などを行っている方は、情報交換の場として参加することで何か発見や気づきが見つけられそうだ。また、難しいことはわからないけど、これからの海について日本の企業が行なっていることに興味がある、知識として知っておきたいと言う方も、次回のフォーラムに参加してみるのはいかがだろう。海との関わり方が少し変わるきっかけになるかも。

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PROFILE
奄美在住。高校生の時にブラジル留学を経験。泳ぐのが苦手で海とは縁がない人生だと思っていたが、オーシャナとの出会いを通じてOWD(BSAC)を取得。オーシャナを通じ、環境問題や海のことについて勉強中。
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