潜水事故の動画
いくつかのダイビングのコミュで話題になっているので、
ご存知の方も多いかと思いますが、紅海の潜水事故の動画です。
昔、英語版が話題になりましたが、どなたかが日本語訳をしたようです。
注)ダイバーが亡くなる様子です。
ダイバーであると同時に媒体者だからだろうか、動画を見て、
事故の本質とはズレているが、
まずはコミュやユーチューブの書き込みに関心がいってしまった。
こういう動画を掲載すると
「アップすべきかどうか」という話が必ず出てくる。
「遺族への配慮を」、「ショッキングへの配慮を」などなど。
この程度を受け入れられないなんて、子供としか思えない。
「こ、怖い……。自分はこうなりたくない」、「気をつけよっと」。
これって、ものすごい公益性なのに。
情緒で公益性をぶち壊す神経。想像力が豊かなのか乏しいのか。
「ダイビングが怖いと思われる」という人もいるが、
「ダイビングって安全だぜオッパピー」映像の方が圧倒的に多い現在、
全体バランスを考えても悪くない。
1:9くらいの割合がいいと僕も思うが0:10はいかんでしょ。
実際、人が毎年死んでいるんだから。
事故原因があいまいだが、「ダイビングって死ぬこともある」と、
これほどストレートに伝わる映像はあまりない。だから価値がある。
それに、これを見て「ダイビング怖くなったからもうやめる!」というほど、皆子供じゃない。たぶん。
もちろん、元祖ストレスダイバーの僕もこの動画を久しぶりに見て、
胸が詰まる思いをした。
しかし、同時に脳が揺さぶられ、あれこれ考えるきっかけとなった。
さて、事故の話だが、原因がよくわからない。
「憶測はよくない」とも言われているようだが、
責任の所在や個人の名誉に関わることと、
単純に映像から頭を使って原因を考えるのは分けた方がいい。
後者はとても大事だし、まさに映像の価値でもある。
とはいうものの、それにしても映像は不可解。
最大の原因は単独潜水というごく基本的な〝そもそも〟な話なのだが、
直接的な原因を考えてみる。
誰もがすぐに頭に浮かぶのは、
ダウンカレント、浮力の喪失、窒素酔い(のち酸素中毒)だろう。
しかし、浮遊物の感じからダウンカレントではないようだし、
BCトラブルにしては、ビデオ撮影の感じが慌てている風に思えない。
窒素酔いでドンドン落ちていったのかと思ったが、
きちんとダイコンを確認したりしている。
窒素酔いやパニックのダイバーがダイコンをあれほどしっかり確認し、
しかも撮影するなんてことあるのだろうか。
となると、
ダイバーの個人的な理由を加味して考えるといくつか仮説が立てられるが、それこそ何の根拠もない個人の名誉を傷つける仮説になるのでやめる。
とりあえず、普通なら起こり得ない、例外的な事故だったと思う。
例外的な事故で終わるのも何なので、直接の事故原因は不明だが、
可能性のひとつである「浮力の喪失」はあまり考えられたことがない気もするので、この機会にちょっと考えてみる。
まず、BCの排気バルブが壊れることは、もちろん頻繁ではないが、
あっても驚くことではない。
ウエットスーツの浮力を水深別に実測したことがあるが、
水面で5㌔の浮力が30㍍付近では1㌔ぐらいになってしまう。
つまり、BCで浮力を補えなければ、
4㌔の重りをフィンキックで補う必要がある。
ちなみに、昔はBCがなかったので実際泳いでいたわけで、
だからこそ昔のダイバーは〝泳ぐこと〟を重要視し、
「最近のダイバーは泳ぐことの重要さがわかっちゃいない」と嘆き、
学生時代の僕は変態的に泳がされたわけだが一応理由があったのだ。
もちろん、今ではBCがあるので問題ないし、
それがダイビングの間口を広げてくれたわけだが、
泳げること、脚力があることが、
安全のための最重要ファクターのひとつであるのは間違いない。
話を戻して、一番大事なのは、
BCが膨らんでしまうことは想定できても、
浮力が喪失することを想定しているダイバーは多くないので、
「そんなこともある」と頭で認識しておくことがまず大事。
それさえできれば、対処方法は簡単。
まずは、バックアップであるバディやガイドの浮力を借りる。
和尚が言っていたように、「飾りじゃないのよバディはふっふー」だ。
近くにいなければフィンキック。ダメならウエイトを捨てる。
ウエイトを捨てれば、それなりの脚力があれば浮上できるはず。
それなりの脚力ってのは、
スチールタンクの時は、ウエイトを捨てても、
まだ1〜2㌔ぐらいマイナスの場合があるので、
1〜2㌔くらいのウエイトで立ち泳ぎができる程度。
ベストを尽くすなら脚力・泳力維持のために、
普段から泳いだりできればいいが、
受け入れるリスクの許容範囲をどこまでにするかは本人の自由。
遊びでそこまでする必要がないってもの正しいです。はい。
もし、金がある人はテック用のBCなんてのもオススメ。
独立した浮力袋が2つあるので、ひとつが壊れても大丈夫。
とまあ、事故からあれこれ考えたのでした。