水中ご遺体捜索のレポートを掲載するにあたり

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「自分にできることは何か?」

日本中の人々が自問自答する中、僕のもとにも多くのダイバーから声が寄せられた。
「何かしたい」「何かしなければ」と思い悩み、
中には「何もできない」と無力感で心を病んでしまう方まで。

自問自答。それは自分も例外ではなかった。

直接支援だけができることではない。
まずは、自分の生活をしっかり営み、経済活動を止めないこと。
そして、自分が元気でいることが大事だと思い、
「自粛をやめて潜りましょう」、「しっかり生活しましょう」、
そうしたメッセージを雑誌やサイトを通じて発信してきた。

自分の生活をしっかり営むという意味では、
自分の場合、できることは〝伝えること〝しかない。

津波について取材したり、被災したガイドさんの声を紹介したり、
伊豆や千葉の海を潜って安全をアピールしたり、
逆にあえて日常のくだらないことを発信しようともつとめてきた。
そして、ダイビング業界を巻き込んだ
「できること 潜ること」プロジェクトも始まった。しかし、どうしても消えない思い。

直接支援がしたい。

いくら頭で間接支援の大切さを理解しても、
「現場に行ってみたい」「水中でできることがあるのでは?」という思いは消えない。
思いつく限りのルートで打診しても色よい返事は返ってこない。

そんなとき、〝水中遺体捜索〝という直接支援で
復興支援に携わっている方々がいると耳にする。
聞けば、皆NAUIのコースディレクター。
NAUIと縁遠からぬ僕は、そこにいない自分を恥じた。

正直に告白すれば、
「〝被災者〝のために何かできなかったこと」が悔しいのではなく、
「そこにいることができなかった〝自分〝」が悔しかったのだ。

機会あって、遺体捜索に参加なさった《ダイブキッズ》の山崎良一さんにお話を聞いた。
※『マリンダイビング』7月号「スキルアップ寺子屋」で紹介しています。

僕は思わず聞いてしまった。
「行って、そして潜って良かったですか?」

そんな不躾な質問に、僕の思いを察するかのように、山崎さんは応えてくれた。

「行って良かったと思います。不謹慎かもしれませんが、
人生でなかなか体験できない得難い経験ができたと思います。
そして、実際に行動したら地元の方に感謝されました。
それでいいのではないでしょうか」

サイトにも雑誌にもこのコメントは掲載していなかった。
「自分のために被災地に行くのか」という批判が想定されるからだ。
しかし、山崎さんの言葉を聞いて、「現地に行きたい」という思いは、
「確実に被災地のためになる」という前提を踏まえればありだと思うに到る。

そして、被災地のためになるという観点からは、
山崎さんの言葉で印象深かったのが「水中の様子を知りたい人たちがいる」。

交通事故や殺人事件の被害者ように、遺族が欲しいのは〝納得〝。
真実を知って納得したいのではなかろうか。
ご遺体を取り戻すことも、水中を知りたいのもそのためだろう。

山崎さんにお話を聞くときに同行していた脚本家の一色伸幸さんが、
「日航機が墜落した後も、遺族は毎年のように御巣鷹山に登っている。
遺族にとって現場は特別なもので、
知りたい、見てみたいは当然じゃないかな」とおっしゃっていた。
そう言われれば、パラオやパプアニューギニアで潜ったときも、
鎮魂を目的に潜るダイバーに出会うことがある。

そうであれば、津波ですべてが海に飲み込まれた今回の災害では、
水中の様子を伝えることも、
ダイバーにできることではなかろうかという思いがますます強くなる。
実際、山崎さんのブログ(4/28日付)のコメント欄にも感謝の言葉が並んでいる。
※そういう意味では、いち早く被災地の水中撮影をした鍵井カメラマンは、
素晴らしいと思う。

ますますダイバーとして直接支援をしているこの活動に興味を持った僕は、
活動の発起人である広島在住の大坪俊彦さんにお話を聞いた。

これまで大坪さんは、水中撮影をしないばかりか、
ブログで報告することさえしていない。

「私はが最も重視したのは、地元のかたの気持ちを最優先し、
仮にご遺体は見つからなくとも、少しでもご納得いただけ、
心のケアの一端が担えればと考えました。
ニーズがあればと思い水中撮影機材は持参しましたが、
特にニーズもなかったため、水中はもちろん、陸上も一切撮影しませんでした」

さらに具体的な理由はこうだ。

■実際に目の当たりにした光景が報道で見たものとは異なり、
 点で見るのと面で見るギャップを強く感じました。
 ですので、カメラマンでもない私が撮った画像で、
 本当のことが伝えきれないような気がして撮影を控えました。
■本来の目的である遺体捜索活動に支障を来たす恐れがあると判断したからです。
 視野も狭くなり、大切なものを見落とす可能性があり、かつ、水中拘束の危険を避け、
 できるだけ瓦礫や漁網等に突っ込んだ捜索をしたかったので、
 余計なものは身につけたくありませんでした。


記事にしなかった理由もある。

■写真と同じく、本当のことをきちんと伝えきれるか自信がなかったからです。
■それを見て、訳のわからないダイバーが同じような活動を行い、
 事故を起こされては困りますし、各方面にご迷惑をおかけするといけないからです。
 あくまでも自己責任で潜っている旨は、現地でもきちんと伝えておきました。
 今だからこそ言えますが、出発前に生まれて初めて遺言も書きました。
 それ程危険度が高いと判断しておりましたし、
 人に迷惑をおかけする訳にはいかないと考えておりました。

自分の心と本質を見つめて行動しようとする、誠実で優しい考え方だ。
そして、メディアを外から見ているからこそ、
メディアの人間以上に、伝えることを真摯に考えている。

「売名行為にならないよう、出発直前まで、
私の家内以外の身内にも行くことは伝えませんでしたし、
現地でも報道関係の取材はできるだけ避けて通りました。
我々の行為が間違って伝えられると困るとも思ったからです」

僕も週末、この活動に参加することになっているが、
当初は捜索に加わりつつ自分のカメラで撮影、取材しようと思っていたが、
大坪さんの話を聞いて考えが変わる。
大坪さんの話は「中途半端なことはしてくれるなよ
」というメッセージに他ならない。

水中遺体捜索をするダイバーなのか、この活動を伝えるメディアなのか。

立場をはっきりさせ、いずれの場合でもプロの仕事をしなければそこにいる意味はない。
結果、熟練のNAUIコースディレクターたちに混ざって捜索活動をするより、
しっかり伝えることが自分にできることだと思い、メディアの立場として入ることを決意。
撮影はプロカメラマンにお願いし、捜索には一切加わらず、しっかりレポートしたいと思う。

岩手県山田町の水中ご遺体捜索。

すべては、大坪さんが強い意志と行動力から始まり、
投げた石は波紋となって広がりを見せている。
その軌跡をまとめたものが、今回紹介する記事だ。

コンパクトにまとめるより、行動そのままを紹介する方が良いと思い、
結果、長文になってしまったが、ぜひともお読みいただきたい。
そして、感想をお聞かせいただけたら幸いです。

■記事はこちら↓
http://diving-commu.jp/divingspirit/item_5528.html

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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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