フォト派ダイバーの3大ヒヤリハット 前編
3大ヒヤリハットは、減圧、離反、残圧
フォト派であるがゆえにヒヤリとしたり、ハッとしたり。
そんな、いわゆるヒヤリハット体験談を集めて、どういうケースが多いのか、フォト派ならではのリスクを考え、その予防策を考えていきたいと思います。
まずは、フォト派のヒヤリハット体験談の内訳を見てください。
ヒヤリハットの対象
減圧関連 24%
離反関連 21%
残圧関連 18%
器材 8%
他ダイバー 7%
体 5%
環境 2%
危険生物 2%
その他 13%
ヒヤリハットの責任・原因
自分 81%
他人 12%
その他 7%
最も多かったのが減圧関連。
“関連”と書いてあるのは、“減圧症”だとすでに立派な(?)潜水事故なので、減圧症には至らなかったものの、減圧症を予感させるヒヤリハットが多かったということです。
同じように離反(グループやバディとはぐれてしまうこと)や残圧切れにはならなかったものの、そうなる直前のヒヤリハット体験をしている人が多いようです。
この3大ヒヤリハットは、裏を返せば、その行き着く先のトラブル、つまり、減圧症、離反、残圧切れがフォト派の3大リスクということを示しています。
どれも重大トラブルにつながりかねませんので、未然に回避しなければなりません。
ヒヤリハットの原因はひとつ
フォト派の3大ヒヤリハット体験談を見ると、急なダウンカレントなど、自然による突発的なヒヤリハットなどではなく、注意していれば防げるものばかりに思えます。
また、ヒヤリハットの責任・原因は、他人や環境ではなく自分にあることも明らかのようです。
つまり、フォト派のヒヤリハットの多くが自分の行動に起因して起こっているということがいえるでしょう。
では、具体的にはどのようなことに気をつけて潜る、または撮影すればいいのでしょうか?
ここからは生の体験談を紹介していくので、ぜひ具体的な注意点、予防策の参考にしてください。
減圧関連
生物に夢中でヒヤリ
○数年前、大瀬崎でトラギスの撮影をしていたときの話。
水深が浅かったため、残圧も減圧もあまり気にせず、トラギスが背ビレを広げる数分に一度のシャッターチャンスを待つこと90分以上。
気がついたらその水深で6分で減圧停止が必要に……。
とても体に悪いダイビングをしてしまいました。
(愛知県/女性)
○水深22mくらいのところで、ヤシャハゼに夢中になり、ハッと気がつくと減圧まであと5分になっていた。慌ててその場を離れました。
(奈良県/女性)
○水深10m前後くらいのところのガレ場にて、テッポウエビとハゼの共生を見守ること70分……。
DECOのマークとそれを知らせるアラームを無視していたらしく、減圧停止10分はいっていたと思います。
ゲストは私一人だったから良かったものの……。
今までDECOマークに気がつかなかったことがなかったので、びっくりしました!
(沖縄県・男性)
傾向と対策
“生物に夢中”は浅い水深でも要注意
フォト派で最も多かったのが、撮影に没頭してしまい、ダイブコンピュータの“無減圧潜水時間(減圧不要限界時間)”のチェックを怠ってしまうというケース。
しかも、水深が浅いケースもあることは注目すべきポイントです。
つまり、浅い水深が逆に油断になってしまうこともあるようです。
こまめなダイコンチェックを習慣づけましょう。
当たり前のことですが、減圧症は“目に見えない”だけに、そのリスクマネジメントが甘くなりがち。
なってから後悔するケースが非常に多いので、注意したいですね。
水中でハッと!
○2本目で水深40mのポイントへ。
減圧停止10分が出て、頭が痛くなりました。
これからは無理なダイビングは控えます。
(大阪府・男性)
○パラオで潜っていて、ふとダイコンを見るとDECOが出ていてびっくり。
透明度がいいと水深の感覚が狂いますよね。
(東京都・女性)
傾向と対策
深い水深はそれだけで注意
減圧症の防止とは、つまり時間と水深の管理です。
水中でのダイコンチェックも大事ですが、もっと根本的なところでは、まずは“計画”が重要です。
そういう意味では、2本目で水深40㍍という計画は無謀だったのかもしれません。
2本目を浅くする、1本目が深ければインターバルを長くするなど、1日を通じての安全なダイビング計画がダイビングの前提となります。
ガイドにモノ申したい
○初めての洞窟探検!
ドキドキしながら暗闇に入り、ダイコン見たら35m!
それを見て焦っていたら、途中で徐々に浮上して中州みたいなところで休憩というルートがあり、ダイコンはDECO表示。
まったく機能しないダイコンを手に、再び元のルートに帰るというおそろしいダイビングがありました。
もう少し、ガイドさんもブリーフィングをしっかりしてほしかった。
(兵庫県・女性)
○カメラを購入したばかりのこと、ガイドがオススメの被写体があるからついてこいという。
必死になってその被写体を撮り、気がつくと他の人たちははるか上の方で写真を撮っている。
ダイコンを見ると、水深45m!もちろん減圧停止の表示も!
コラッ、ガイドどこにつれていくんじゃ!
(神奈川県・男性)
傾向と対策
主体的に潜る意識が大事
多くのガイドさんはプロ中のプロですが、中には自分のダイビング観とは異なるガイドさんがいることもあるでしょう。
時間や水深の管理でも何でも、ガイドさんにすべてを任せるのではなく、自分で主体的に潜るつもりでブリーフィングに参加し、疑問をクリアした状態で潜りましょう。
長くなったので今回はこの辺で。
次回は3大ヒヤリハットの残り、離反と残圧について考えていきます。