“海なし国”モンゴルの人にとって海はどんな存在なんだろう?

先日、モンゴル出身の「ニニさん」という女性とお話する機会がありました。
彼女は20代前半という若さですが、三年以上、語学留学のため日本に滞在しています。

ところで、モンゴルといえば、国の周りが中国やロシアなどの国に囲まれた内陸国。
国土に海はありません。

そんな国で暮らす人達にとって「海」ってどんな存在なんでしょう。
決して身近な存在ではないこと想像がつきますが…。
一体どのくらい遠い存在なんでしょう?

純日本産のぼくには、「国土に海がない」ということがイメージできません。
そんなわけで、ぼくはニニさんと「海」についてお話してみました。

セブ島の海(撮影:越智隆治)

モンゴルの人は『海に行く』ということを考えないんです

「そもそもモンゴルの人は、『海に行く』、ということを考えないんです。今でこそ海外旅行で行くことができるようになりましたけど…、一昔前だったら、海は『テレビの映像の中のもの』って感じだったと思います」

ニニさんが生まれて初めて見た海は中国の海南島で、とても綺麗だったそうです。

日本人でも、人によっては海は「特別な旅行で行く場所」と思うでしょう。
ただ、モンゴルの人にとって、飛行機に乗らないと行くことができない海は、より遠い存在のようです。

そんな日本人とモンゴル人にとっての「海への距離感」の違いを、ニニさんが特に感じた場所が、水族館。

「日本の友達に水族館に連れて行ってもらったことがあったんですけど…あまり楽しくなかったです(笑)。
友達たちは皆、魚を見て『綺麗!』とか、『美味しそう!』って盛り上がっていたんですけど、私は、へぇ、って感じで(笑)。モンゴルには魚料理が少ないから、そもそもあまり魚に馴染みがなかったからかもしれません」

水族館の楽しみポイントがわからなかったのは、あくまでニニさん個人の感想です。
ただ、彼女は、「日本人とモンゴル人では、海に対する感覚から全然違うと思う」ということも言っていました。

日本人は普段の食事で海の魚を食べたりします。
対してモンゴルでは、たまに淡水魚を食べたりはするそうですが、海水魚には全く馴染みがないそうです。
だから、ニニさんは日本の魚料理に、未だに慣れない部分があるとのこと。

食べるのと見るのとではもちろん違うけど、普段から魚に接するかどうかという、そんなレベルで、日本人とモンゴル人とでは魚に対する馴染み方がかけ離れているのではないか。
ニニさんは、そんな話をしてくれました。

セブ島の海(撮影:越智隆治)

海への怖さ

「それと、海って怖いなって思います。
足をつけたりするくらいなら楽しいんですけど、モンゴルはプールも少なくて泳ぐことが全然無いから、泳げない人も多いですし。私も泳げなくて。それに、海ってどこまでも続いていて、すごく広くて、初めて海の中を見たときに、それが怖かったです」

ちなみに、モンゴルでは、ほとんどの学校にプールが無く、市民プールのような場所に行かないと泳ぐ機会がないそうです(そもそも市民プールのような場所も日本と比べてかなり少ないそうですが)。

ニニさんは、こうも言っていました。
「日本に来て3年経ちますが、未だに海に馴染みは感じません。だって、日本にいても普段から海に行くわけじゃないですから」

多くの日本人も、普段から海に行くわけではありません。
ただ、日本には「夏には水遊びをする」という風土があります。
その風土の根付き方の違いが、海への認識の違いだとぼくは思います。

また、海をよく知る人であっても、いや、むしろよく知る人ほど海の怖さを知っているものだとは思います。
ニニさんが海に対して感じた怖さはきっと、それとは全く逆のベクトルである、知らないことによる怖さなんじゃないでしょうか。

グレートバリアリーフのサンゴ(撮影:越智隆治)

話の中で、ニニさんは何度か「そもそも海に対する感覚が違う」という言い方をしました。

その感覚の違いというのは、普段から魚を食べるかどうかということだったり、夏になれば泳ぐかどうかということだったり、そんな些細なことに起因する、海に対する大きな距離感の違いだったりするのでしょう。

それだけに、内陸国の人と日本人の海への認識の違いを感じて改めて、「日本には海があるんだ」ということを気づかされる、そんな異文化交流でした。

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PROFILE
横浜在住のダイビング歴一年ちょっとの新米ダイバー。ハタチのお気楽大学生。
大学生ダイビングサークル、「Ocean KIDs」でダイビングに出会い、同サークルの現会長を務める。
これからの人生において自分は大好きなダイビングとどんな付き合い方をしていくか、ということを考える毎日。
実はダイビングと同じくらい音楽が好きだったりして、音楽雑誌「OTONARI」の刊行にも関わる。
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