ダイバーの命を守る最後の砦となるのか?新生DANジャパンへの期待

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DANジャパンの意義ともどかしさ

先日、DANジャパンが発行する、年に4回年に3回(2014/8/11 15:45訂正)の会報誌「Alert Diver」の最新号が届きました。
手に取ってみると、表紙で“新生DANジャパン”と大きく謳っています。

サイパンの人気ダイビングポイント・ラウラウビーチ(撮影:高砂淳二)

まず、すでにDANジャパンの会員の方も多いと思いますが、初めて聞いた方に簡単に説明すると、DANとは、ひと言でいえば、“ダイバーのための救急医療救援システム”。

病院や医師とダイバーをつなぎ、潜水医学の研究や安全教育、救急時の医療援助を目的とし、さらに、日本でいえば、海保や警察、消防署など公的な機関とダイバーをつなぐ役割も果たしています。

これまで、保険、酸素供給、緊急ネットワークなど、ダイバーに必要なコンテンツが前進したのも、世界ネットワークや公的機関を背景とした、DANジャパンの貢献が大きいのです。

しかし、これまで、オーシャナでは、その貢献と並行して、時に批判的な記事も掲載してきました。
その理由はいろいろありますが、世界のDANとのかい離といったところでしょうか。

英語に障壁のないダイバーなどは、以前から、DANアメリカの会員サービスとDANジャパンの差を指摘し、オーシャナに掲載される潜水医学の最新情報は、海外のDANから引用したものが多かったのです。

ひと言でいえば、世界のDANに比べてDANジャパンが見劣りして感じていた人も少なくありませんでした。

DANは、アメリカやヨーロッパ、南アフリカ、オセアニアなど、世界ネットワークを築いていて同じような組織と思われがちですが、それぞれが独自の運営をしていてお国柄といったものがあります。

例えば、民間企業であるアメリカと財団法人である日本では、そもそも組織の成り立ち・目的が違いますし、ダイビングの市場規模・会員数、文化(例えばドネーションに対する考え方とか)も違います。
結果、予算も桁違いなはずです。

DANジャパンの設立に多大な貢献をしてきた先生が、会報誌で「人の苦労も知らず、これだけやってきているのに文句ばっかり言って。少しはダイバーのみんなで協力しようって気はないのか」(意訳)と愚痴っていた気落ちもわからなくありません…。

ただ、それにしても、DANアメリカの情報の充実や海外におけるDANへの信頼の高さを見るにつけ、ホームページすら更新しないDANジャパンって何なんだろうと…。
でも、保険は有効だし、もしもの時にこのネットワークな無いと困るし…。
という、スパイラルな気分にさせられる存在だったのです。

これが偽りのない率直な気持ちで、他に誰も批判しないので、その点は批判することが役割だとも思っていたのですが、同調したダイバーの方から「本当そうですよね。会員辞めちゃいましたよ」という話を聞くにつけ、「いや、それはそれで自分たちの首を絞めるんだよね…」と思ったり。

首を絞めるというのは、まず、緊急事態に対するセーフティーネットワークがあることは、ダイバーにとっては大いなる安心です。
そういう意味では、優れた保険制度を持ち、病院や海保と連携できる、DANジャパンを支える、というと語弊がありますが、利用した方がいい、あるいは、無いと困ると思うのです。

そんな状況の中、DANジャパンに転換期が訪れているように感じます。

体制が一新され、DANジャパンの最新の会報誌の表紙には、“新生DANジャパン”と銘打たれ、内容は今後のビジョンを示すものとなっています。

僕が常々思っていたのは、DANアメリカなどが発表している世界最先端の情報を日本人ダイバーにも日本語で提供すべきということだったのですが、このほど、DANジャパンはホームページも一新し、そうした会員向けサービスの拡充を図ることになりました。

オーシャナからも積極的にそうした情報を提供できるようにしていくつもりです。

また、世界のDANは、DSP/HIRAという、救急医療事態に適切に対応するツールを普及しようとしていますが、DANジャパンもそのビジョンを明確に示しています。

いずれ詳しく紹介しますが、DSP/HIRAを簡単にいえば、“このお店は安全性の高いお店だよ”という証明です。
例えば、酸素やAEDが完備され、CPRだけでなく、現場で患者の評価までできるスタッフがいることをひと目でわかるようになります。

その他、日本で機運が高まっているバディ潜水における、優れたレギュレーションをすでにDANは持っていますので、大いに参考にできるはずです。
※単なる認定のための利権に堕すことには注意を払わなくてはいけまんせんが

世界のDANはすでにダイバーから大きな信頼を得ていますが、その一員であるDANジャパンにも、世界基準の知識とノウハウがあり、日本の公的ネットワーク、医療ネットワークがあります。
あと、必要なのは“本気”だけ。

オーシャナで大事にしているテーマのひとつは“安全”ですし、新設するNPOは“安全”が目的。

“新生”と打ち出した、DANジャパンの今後には、期待を持って注目していきたいと思います。
※もちろん、連載陣から批判的な指摘があれば、それも掲載しますけどね。

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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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