危険な“離岸流”に注意!ダイバーが知っておきたい“波”の話 後編

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気象予報士くま呑みの“ダイバーのためのお天気講座”

メキシコの海と雲(撮影:越智隆治)

前編でお話した、波高や波長などの他に、ダイバーにとって、波を知る上で、波の動く方向もまた、重要な要素です。

例えば、西向きの湾であれば、当然西から来る波に一番弱いはずです。
ですから、沿岸波浪実況図/予想図などを見ると、波の進む方向なども書いてあるので、参考になります。

沿岸波浪実況図/予想図では、風向・風速と共に、波高の分布を等高線で表しています。
また、白抜き矢印で波の進む向きも示してあります。

同時に、全国の代表的なポイント26箇所の波の進む向き(方位)、周期、有義波高が書いてあります。
周期が書いてあるので、波長が長い波なのかどうかも推測できます。

ただ、波についてのもうひとつの性質として、波が海岸に近づいて海が浅くなってくると、海底の影響を受けるということがあります。

具体的には、海が浅いほど波は高くなって、遅くなるのです。

皆さんも、遠浅の海などで、沖合ではそんなに高くない波が浜に近づくにつれて高くなって立ち上がり、最後には崩れるのを見たことがあると思います。

波は浅いところほど遅くなるので、一般には海岸線に平行になるように曲がってきます。別の言い方をするなら、波は回り込んでくることもあるということです。

ですから、たとえ沿岸波浪実況図などで、南から来る波で、湾は西向きだから「安全」とはならないのです。
必ず海況をよく調べる必要があります。

また、当然島などでは、波が来る方向の反対側は一般には穏やかです。
しかし、波長と同じくらいの小さな島の裏側では、島を回り込んだ波同士がぶつかり合って、島の裏側では表の2倍の波になることもありえるのです。

ですから、波は、時には回り込んで複雑な動きも見せることがあることを、常に意識しておきたいと思います。

波によって運ばれた水はどうなるか?

先ほど、波は、一般的には海岸線に平行に押し寄せてくると書きました。
だとしたら、波によって浜に運ばれてきた水はどうなるのでしょうか?

それは、一般的には離岸流という流れになって沖に流れていきます(図2)。

この流れは、時には泳ぐ速度を超えますので、一旦離岸流につかまると、泳いでも泳いでも岸に近づかないという、大変危険な状況になります。

水中で自分の居場所がわからなくなり、海面に上がって岸を目指しているうちに、流れにつかまることもありえます。

しかし、離岸流は図3のように、一般には幅はそんなに広くありません。

自分が離岸流に捕まったと思ったら、無理に岸に向かって泳がず、岸と平行に泳げばすぐに離岸流から脱出できます。

離岸流が発生しやすいところは、浜から見ると沖に砂が流れ出していて海の色が違い、波が少なかったりするので、可能なら海に入る前にチェックをしておくと良いでしょう(図4)。
さらに、日本では多くありませんが、南の島に行って、環礁になっているところなどでは、リーフエッジを越えて波が入ってくると、リーフの切れ目から非常に強い流れで沖に流されることもあります(チャネルなんて言いますね)。

これも離岸流の一種ですが、普通の浜とは比べ物にならないくらいの流れのこともあるので、場合によっては海底をしっかりつかんで進むなどしないとならないこともありえます。

ひと口に波といっても、風浪やうねり、また、波が作る流れまで、我々ダイバーにとっては多面的に影響があります。
そして、波は特にエントリー/エグジットのときなど、危険の原因にもなりえます。

我々ダイバーは、単に晴れや雨などの天気、波の高さだけではなく、波が進んでくる向きや、どのくらい遠くから来ている波なのかなども意識するようにしたいものです。

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PROFILE
日本気象予報士会会員。
国際基督教大学(ICU) 理学科物理卒。
1995 年 よりダイビングを始める。
外見が「熊」なダイバーなので、魚の名前に因んで「くま呑み」を名乗る。

中学の理科の授業で、先生が教卓で雲を作る実験をしてくれたのを見て以来、気象学、天文学、地学に興味を持つ。
ダイビングを始めてからも海と空を眺めるのが好きで、2002年、気象予報士を取得。

ダイビングのスタイルは、「地形派」。
ドロップオフやカバーン、アーチや地層の割れ目などを眺めるのが好き。
特に、頭上のアーチなどをくぐった先で、水面からの光が見える瞬間に萌えてしまう。

ダイビング以外の趣味は、オーガナイズド(組織)・キャンプ、合唱、キャリア
・カウンセリング。
現在は、国際基督教大学にて学生や子ども向けの組織キャンプのディレクターも
努める。
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