法律家に聞くダイビング事故の争点 ~バリの漂流事故から学ぶ~
バリのダイビング漂流事故について、ダイビング訴訟に多く関わる弁護士の上野園美先生に、このような事故で争点になることを挙げていただきました。
- その日の海況などがダイビングをするにふさわしかったか
(もし、他のショップなどが海況などからダイビングを取りやめていれば、事故のリスクが高かったのではないかと思います) - 参加するダイバーの技量や体力、経験などに比して、ダイビング計画自体に問題がなかったか
- 天候の急変があったようですが、これは予見できるものなのか、また予見できた場合、今回のダイビングが妥当なものなのか
- ブリーフィングの内容
- 船とはぐれた場合を想定して、どの程度、ケアがされていたか
- 捜索方法が適切であったか
一般論として、上記のようなことが争点になるとのこと。
つまり、受け入れ側としては、その点が事前にケアすべきことであり、ブリーフィングで伝えるべきことと言えそうです。
以前、小笠原でダイビングをしていた際にダウンカレントに巻きこまれた死亡事故がありました。
現地ガイドはダウンカレントが発生することがありうることは知っていましたが、まさか、自分達がダウンカレントに遭遇するとは考えず、ブリーフィングではダウンカレントの説明は一切していなかったそうです。
ブリーフィングで説明をしていても、ダウンカレントが発生すればなかなか事故は防げない状況かと思いますが、当事者(遺族)は、「ダウンカレントの説明を受けていれば、ダイビングをやめたかもしれない」と言いました。
実際問題、そこでやめることは少ないと思うのですが、やはり、起きるかもしれないリスクの告知は大事だということですね。
「起きるかもしれない危険を告知し、それにもかかわらず危険を承諾して行ったのであれば自己責任にはなるのですが、危険の告知がないと『そんなはずじゃなかった』ということになると思います。どの程度、事故の予見可能性があったのかということに絡みますが、法律家としてはガイドがどのようなブリーフィングをしたのかと気になります」
ガイド側からは、「できるだけ情報を与える」、そして「当事者自身に選択(決定)させる」ことが重要というご指摘です。