ダイバーにとって”ひとつの海”を潜る意義

ダイビングサービスむらいの村井智臣と稲生薫子(撮影:越智隆治)

ダイバーには、休みのたびに、潜ったことのない新しい海に潜りたいタイプと、ホームともいうべきひとつの海を潜り続けるタイプがいます。

休日の事情にもよりますし、どちらが良い悪いではないのですが、ひとつの海を潜りこむ経験は、海を知り、ダイバーとしての幅を広げてくれると思います。

水中写真家の中村宏治さんは、そのインタビューの中で、こう言っています。

ひとつの海を潜ると座標軸ができる

中村さんは、フィッシュウオッチングと潜水訓練に先鞭をつけた益田一氏に師事し、ダイビングを始めた最初の5年間は伊豆海洋公園にしか潜りませんでした。
年間300日は伊豆海洋公園にいたそうです。

■レジェンドダイバー益田一さんのことは須賀次郎さんのブログに詳しいです
http://jsuga.exblog.jp/13712906/

中村さんは、毎日同じところに潜っていてもちっとも飽きることなく、それどころか、ひとつの海に潜ることによってすべての海が楽しめるようになると言っています。

同じ場所に潜っていると、毎日出会う魚とそうじゃない魚がいることに気づく。
昨日見たあいつが今日はここにいた。シーズンになると2匹でいたとか、同じ海を観察し続けることで、海の中で何が起きているのか、いろんな推察ができるようになってくる。
そういう見かたをし始めるとすごく面白い。
若いダイバーのみなさんは、ぜひ自分の基地となるフィールドを持ってほしい。伊豆のように簡単に行かれる場所で、毎週、毎月のように潜っていると、自分の海に対する座標軸ができる。
1つの海で座標軸を作り、生物の知識やダイビングや水中写真の技術が身につくと、すべての海が楽しめるようになるからね。

(「法政大学アクアダイビングクラブ」の機関誌『水平線』より)

1本のダイバーとしての芯とも言うべき座標軸を作り、それから視野を広げていくことの大切さは、ダイビングにおいてすべてのことに言えることかもしれません。

例えばダイビング器材。

よく「どのメーカーがよいですか?」「素材はどっちがよいですか?」と聞かれますが、まずは、ひとつの器材を使いこむことによって、自分なりの器材の座標軸ができ、「次はこういうのが欲しい」「自分に合った器材はこれか」となる。
なかなかいきなり最適な器材と言われても難しいかもしれません。

フィッシュウオッチングでも、ひとつの場所で観察し続けることによりできた座標軸によって、物語を感じることができるようになり、レアかどうかもわかるようになってきます。
さらに、他の海に潜ったときには、「ここにはこんな種類の魚がいるのか〜」「こんなの初めて!」と、どんな海でも楽しめるようになります。
魚を覚えるのも早いでしょう。

もちろん、スキルアップの面でも、ひとつの海に潜り続ける効用は大きいと思います。

「ひとつの海に潜ると座標軸ができる」

そういう意味では、海に囲まれた日本に住むダイバーは幸せな環境にいます。
ぜひ、週末通えるホームゲレンデを作り、自分の芯を作るとダイビングがよりおもしろくなると思いますよ。

ちなみに、このインタビューの中で、中村さんは「ダイビングにおける泳げることの重要さ」についても語っていて、その言葉もご紹介したいと思ったのですが、「フリッパー大会前は、1日1万m、2か月くらいで600㎞以上泳いでいた」とあったので、とりあえずスルーすることにしてみました(笑)。

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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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