ダイバーからサンゴを守れ! @慶良間

■ダイバーからサンゴ守れ…沖縄・慶良間で「半減」規制
http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20091005-OYT1T00014.htm

このニュースでまずツッコミたいのはタイトル。
「ダイバーからサンゴを守れ!」って、俺たちオニヒトデかよっ(笑)。

でも、オニヒトデ駆除もダイバー駆除も同列という、
強烈な皮肉が図らずもこめられているようで結構好きです、このタイトル。
オニヒトデの気持ちがちょっとわかりました。あははは。

まあ、ダイバー側からは、このニュースを見て
スキルの向上や環境への配慮を啓蒙するような意見が出ているようだし、
それはそれでいいことだと思います。

スポットローテーションやダイバー総量制限は、
ダイビングスポットの保全(環境の保全とは言わない)にはいいことだとも思います。

つまり、ダイバーの総量制限自体には賛成です。
あとは、とにかく「フェア」に運用してほしいと思うだけです。
裏を返せば、フェアな運用への懸念があるということで……。

「環境」というフィルターは目を曇らせてしまう代物。
「ダイバーのスキルや意識の問題」へ矮小化させ、
気がつけば「みんなで海を守ろう!」とスローガンを叫んでいるだけってことになりがち。

なので、このニュースを「お金(利権)」というフィルターを通して見てみます。
あ、「ひねくれた性格」というバイアスもちょっとかかっています(汗)。

さて、誰が得をするのか?(する可能性があるのか?)

普通に考えれば、ダイバーの総量が減ったら収益は下がります。
彼らがいうように、「総量制限によってブランド力を高める」という理屈は理解できます。
年間通じてゲストを確保して、長期的に収益を上げる考え方としては素晴らしいと思います。

ただ、もっと単純に考えれば「業者側を減らす」ことができれば、
利権側の人たちは、ブランド力もアップし、収益も減らないってことになります。
まさに一石二鳥。

はい、うがった見方だと自覚しておりますよ。

ただ、「事業者側への割り当て」とか「村長がダイバーの人数枠を割り当てる」なんてのを読むと、
その可能性があることだけは指摘しておきたい。

本当にフェアにやるなら、ダイバー個人の総量を制限するのが筋ではないでしょうか。
事業者への割りあての場合と比べてもサンゴへの影響は同じであり、
かつ、これなら資本主義の力学も働きますしね。
「首長が業者への割り当て」って、ちょっと赤いです……。

ただ、おそらく悪質な業者ってのはおそらく本当にいるのでしょうから、
即時性を考え行政の介入という方法がベストなのかもしれませんが……。

では、なぜ事業者への割りあてなのでしょうか?

『マリンダイビング』で特集を組む際に、
沖縄担当が四苦八苦していたのが慶良間の扱い。
簡単にいえば、沖縄本島のお店と慶良間のお店の軋轢。

沖縄本島の特集を組む際に「慶良間も潜れちゃうよ!」とか、
反対に、慶良間の特集を組む際に、「本島からも潜れちゃうよ!」などと
書くのはなかなかデリケードな問題。

そりゃ、慶良間の人から見れば、
自分たちの海(あえて)に本島からやってきて
潜り散らされたらいい気分はしなのは当たり前です。
ただ、エンドユーザー(ダイバー)からしてみれば、
本島ステイで「本島の海も、慶良間の海もいいとこ取り!」で、
しかも観光資源豊富な本島の陸上まで楽しめるのは魅力的。

個人的には、慶良間ステイにもメリットはたくさんあり、
単純に選択できればいいと思うのですが、
実際のダイバーの反応としては、ちょっと本島ステイの方に分がある印象。

実際、あまり縛りの強くない『アイラブダイビング』で慶良間を扱った時の
自分の記事を読み返しても「本島ステイでいいとこ取り!」の方を押している(笑)。
慶良間ステイは島の雰囲気や「オリジナルスポットに潜れる」というようなことが書いてある。

慶良間側にも本島側にも理屈があり、答えも簡単に出せない限り、
それぞれの理屈で戦うしかないわけで、
慶良間側が本島からの業者に規制をかけるのは当然といえば当然。
先述したオリジナルスポットというのも規制の賜物で、
看板スポットに本島からは潜れなかったりする。

こうしたことが悪いことだとも思わないし、
今回、もし戦略的に環境というフィルターを使ったのなら「うまい!」とも思います。

ただ、「過去にオニヒトデの駆除に協力したなどの保全活動の実績を参考に、
村長がダイバーの人数枠を割り当てる」とか「悪質な事業者が追いやられ、
お客さんも楽しめ、生態系も守っていける」ってのは、不透明過ぎるのではないかと……。

あくまで事業者の割りあてでやるのなら、まだ「慶良間在住」の方がわかりやすい。
また、「過去にオニヒトデなんちゃら」とかでなく、
「未来に、何かしらの義務やルールを課す」とかの方がわかりやすいのかなぁと。

たとえ選択肢が狭まっても、サンゴのために我慢するって
ダイバーが圧倒的だと思うので(ダイバーは結構、意識高いと思います)、
あとはフェアで健全な運用をしてほしいだけ。
何か変な理由で本島の健全なお店が割を食わなけりゃなぁと、思うのでした。

\メルマガ会員募集中/

週に2回、今読んで欲しいオーシャナの記事をピックアップしてお届けします♪
メールアドレスを入力して簡単登録はこちらから↓↓

登録
writer
PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
  • facebook
  • twitter
FOLLOW