【GULL連載 動画あり】超高性能フィン「GT」を実際に使ってみたら予想以上にすごかった!

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9月に入り、「そろそろドライスーツに衣替えかな…」と思うダイバーも多いのではないだろうか。実は、水温によってウェットスーツやドライスーツを変えるように、海況や脚力に合わせてフィンを変えるとダイビングがより快適に何倍も楽しくなるのは意外と知られていない事実。

プロからビギナーまで多くのダイバーに支持される日本のダイビングギアブランド「GULL(ガル)」には、「GT」という究極のハイスペックフィンがラインナップされているのを知っている方も多いのではないだろうか。このGTは今までLサイズとXLサイズの展開だったが、今年新たに足の小さなダイバー向けた “Mサイズ”が追加された。そこでオーシャナ編集部のセリーナが、(株)キヌガワのGT開発チームの一人・播磨めぐみ氏に、GTをおさらいする意味で改めてその特徴と、今年新しくラインナップされたMサイズの特徴について伺った。

さらに、元競泳選手で平泳ぎを専門とし、フロッグキックに関してはダイビング業界一?(笑)こだわりが強い私が、GTは“フロッグキック(あおり足)で進む”というウワサを聞きつけ、実際に試したい!とお願いし、水中で検証してみた。

GT開発チームの一人・播磨めぐみ氏

GTはこんなフィン

今年新しくラインナップされたMサイズの特徴を紹介する前に、2020年10月に販売されたGTがどんなフィンなのかおさらいをしておこう。

「GULLではオープンヒールのフィンをさまざまラインナップしています。そのうちの一つでもあるGTは、ゴムフィンメーカーである弊社こだわりの“しなり”を活かし、軽いキックで効率良く推進力が得られると、評価いただいています。しかし実は、オープンヒールで最上級なハードスペック(スピード重視ではなく、プロダイバーや水中土木・海底調査などを行うコマーシャルダイバー向けの硬めでパワフルな蹴り心地のもの)なフィンをつくろうと開発し始めたのがGT誕生のきっかけでした。そのため、開発当初は硬めでパワフルな蹴り心地のもの”を設定していたのですが、柔らかいフィンを好む傾向になってきたユーザーのニーズなども加味して、“せっかく最上級なハードスペックのフィンを作るならやはり一般のダイバーの皆さんにも使ってほしい“と設定が変化していきました」と播磨氏。

販売から約2年が経ち、多くのダイバーに愛用され、「フロッグキックでの推進力がスゴイ」、「脚力が弱くて小さなキックだとしても進む!」というクチコミも広まり、GULLの中でも主力製品となっている。また、GTには重量が重めという特徴があるが、そこにも理由はあるのだろうか。

「プロダイバーなどが深い水深でも使えるように水圧を考慮するとどうしてもリブ(フィン側面)を高く厚めにしたかったんです。そうすることで、水圧がかかりフィン生地(ゴム)がつぶされても、しっかりと水を捉えてパフォーマンスを発揮することができます。最上級なハードスペックのフィンをつくる上でベストな設計にした結果、当社のオープンヒールと比べるとやや重ために(※)なっています。重量がある故、使用する人によりますがドライスーツ着用時にアンクルウェイトを減らせたり、無くせたりする可能性があります。実際、快適に潜ることができているというお声もいただいています」。
※SUPER MEW XX(Mサイズ):1,127g、GT(Mサイズ)1,390g

ちなみに今のところの人気色は、女性がホワイトで男性がセイフオレンジとのこと。他にもブラック、オリーブ、そして今年だけの数量限定カラーのエドヴァイオレットも注目のカラーだそう。

特徴①しなり

一般的なハードスペックなフィンは、ブレードが短く、幅広で、硬めなイメージ。強い脚力があるダイバーにとっては、理想的な推進力を生み出す最適な造り。対するGTは、“セミロングブレード”と長年のノウハウを活かした自社工場で開発の“キヌガワラバー”が卓越したしなりを生み、弱い脚力でもブレード全体(先からフットポケットまで)がしなり、水を押し切ることで、軽いキックで効率良く推進力を得ることができる造りとなっている。この“しなり”に関しては、とことんこだわって作り上げられているそうだ。

さまざまな硬さのフィンを用意し、理想のしなりを追い求める

さまざまな硬さのフィンを用意し、理想のしなりを追い求める

特徴②ジェットホール

通常、フィンキックをすると、カルマン渦という乱流がフィンの裏面に発生し、フィンがカルマン渦に引っ張られて推進力が減ってしまう。しかし、GTにはフットポケットとブレードの境目あたりにジェットホールと言われる水が通るホール(穴)が設けられており、このジェットホールで発生した勢いのある水流によってカルマン渦を引き込み、水流を整えることで、フィンの推進力を効率良く引き出すことができる仕組みとなっている。

フィンの表から見たジェットホール

フィンの表から見たジェットホール

さらに、+αの機能として、左右のホールにジェットホールスタビライザー(特許取得済)というキヌガワ独自の凸部を設けている。ジェットホールのあるフィンだと、ジェットホールで発生し排出された水流は拡散してしまうが、GTの場合、ホールに凸部があることでコアンダ効果(水が凹凸部に沿う現象)という流体の性質を活かし、水流が拡散するのを遅らせている。そうすることで整流効果を高め、フィンの推進力をさらに効率よく引き出せるようにしているのだ。

フィンの裏から見たジェットホールスタビラーザー

フィンの裏から見たジェットホールスタビライーザー

特徴③スプリングストラップ

今年から新設計されたスプリングストラップは最大4cmの長さ調節が可能でドライスーツにもウェットスーツ用のブーツにも対応可能。さらに、ラバーストラップだと、キックをした時にキック力に負けてラバーが伸びてしまい、力が逃げてしまうこともあるが、スプリングストラップだとキック力に負けず足にフィットし、足の力を最大限フィンに伝えることができる。さらに、たとえ5mmといった厚手の寒さ対策用グローブをしていたとしても着脱が簡単に瞬時に行えるように持ち手がついた形状になっているのは特筆すべき点だ。

長さ調節可能なスプリングストラップ

長さ調節可能なスプリングストラップ

厚手のグローブでも持ち手がついていれば着脱が楽

厚手のグローブでも持ち手がついていれば着脱が楽

特徴④フットポケット

ウェットブーツでもドライブーツでも使用できるフィット感抜群のフットポケット。同社のオープンヒールは足底の面が踵まであることによって、キックの踏ん張りが効き、キック力を無駄なく推進力に繋げることができる。

大型フットポケット

大型フットポケット

新登場Mサイズの特徴

GTがどんなフィンなのか、わかったところで今年新しくラインナップされたMサイズについて紹介しよう。リリースの背景にはユーザーの声が後押しになったという。

「嬉しいことに好評価なクチコミが広がり、ドライスーツに合わせて使いたいという足の小さな女性や、ウェットスーツ用ブーツに合わせて使いたい男性などから『26〜27cmブーツ対応のLサイズよりもう一回り小さなサイズがあれば嬉しいなぁ』という声が後を絶ちませんでした。その声に後押しされて、今年25〜26cmブーツ対応のMサイズをリリースすることができました」。

Mサイズ

Mサイズ

Lサイズ

Lサイズ

サイズ GSブーツ 他社製ドライブーツ
(ワールドダイブ社/モビーディック社)
M 25~26cm 23~25cm
L 26~27cm 25~26cm
XL 28~30cm 27~28cm

実際に水中で試してみた!

さぁ、いよいよ待ちに待った水中での検証。ここではフィンで大切な、推進力や得られるスピード、蹴り心地について検証していこうと思う。ダイビングで主に使用されるキック「フロッグキック」・「フラッターキック」に加えて、狭くて大きなキックができない場合を想定した「モディファイドフラッターキック(足先だけの細かなキック)」の3種類を、「SUPER MEW XX(全長56cm)」・「GT類似形状品(全長約56cm)、重量2,020g)」と比較。それぞれ、フィンの動きやしなり具合がわかるように横から撮影した映像と、「フロッグキック」・「フラッターキック」は推進力と得られるスピードがわかるよう往復約32mのプールを泳いでタイムを測定した。

フロッグキック比較

まず、フロッグキックは水中でのバランスが取りやすく、移動はもちろん撮影や生物観察時には最もよく用いられるキックだ。そのため、フロッグキックでの蹴り心地は重視したいポイントだ。

スピードでいうと2番目という結果になった。しかし疲労感を比べた場合は、類似製品よりも圧倒的に軽い蹴り心地で、もしさらにもう一往復(64m)を泳いで計測したらGTの方が後半で上がってくるのではないかと予想する。

一方、SUPER MEW XXも疲労感はGT同様に少ないものの、水のかかり具合に大きな違いを感じた。SUPER MEW XXは水を捉えきれず空振りしているような感覚だが、GTはしっかりと水を捉えて推進力に変えられている感覚があった。ダイビングでのキックがフロッグキック中心のダイバーにはうってつけのフィンに間違いない。正直、この時点で私も欲しくなった。

フラッターキック比較

次に、フラッターキックは長い距離を一定のスピードで泳ぎたい時に用いられるキック。そのため、疲労感とスピードは重視したいポイントだ。

GTが最もスピードがあるという結果になった。しなりとジェットホールのおかげなのか、フロッグキックと同様に後半での疲労感が少なく感じる。SUPER MEW XXはフラッターキックなら、GTとさほど遜色のなく、水をしっかり捉えることができているような蹴り心地だったが、スピード面ではGTに敵わなかった。GTは、たとえば南伊豆・神子元島でのダイビングなど、流れがあり、かつ、ある程度の距離とスピードで泳ぎ続けなければならないポイントには最適なのではないかと思う。

モディファイドフラッターキック比較

最後に、岩と岩の狭い通路を泳ぐ時や、すぐ近くのダイバーを蹴らないように移動する時、小さなキックをすることもある。もしくは、元々フラッターキックの振り幅が狭いダイバーもいる。そこで、小さな足の振り幅でも楽に泳げるのかどうか、試してみた。

振り幅の小さなキックの割に、想像以上の推進力を得ることができている感覚があった。これはフィンがしなることで、足の振り幅以上の水を捉えられることが理由なのではないかと推測。また、太ももを使わずに足先だけに頼ったキックなので、疲労感の違いに顕著な差が出た感じがした。

>>次ページ:着脱スピードの比較動画

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PROFILE
0歳~22歳まで水泳に没頭し、日本選手権入賞や国際大会出場。新卒で電子部品メーカー(広報室)に入社。同時にダイビングも始める。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。ライターとして、全国各地の海へ取材に行く傍ら、フリーダイビングにゼロから挑戦。1年で日本代表となり世界選手権に出場。現在はスキンダイビングインストラクターとしてマリンアクティビティツアーやスキンダイビングレッスンを開催。
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