Apple Watch Ultraをあらゆるダイビングで編集部スイカが試してみた結果【スキューバ、スキン、フリー、テック】

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Apple Watch Ultraが発売されてからはや10ヶ月。ダイビングでも使えるということでオーシャナ読者の皆さんも興味津々だったに違いない。私も実際にApple Watch Ultraを腕につけていると行く先々でダイバーたちに「それどう?」「ダイビングでもちゃんと使える?」と必ずと言っていいほど質問される。

というわけで、「実際どうなのよ?」というリアルな使用感を大体10ヶ月使ってみたところで書いていこうと思う。結論から言うと、普通にファンダイビングをするならApple Watch Ultraのダイブコンピュータアプリ「Oceanic+(オセアニックプラス)」で十分。なんなら水中でも明るくて見やすいし、タッチパネルなので直感的に操作しやすく、ダイブコンピュータとしても優れているのではと思うほど。ただ、サブスクリプションなのでコスパを考えると、潜る頻度や普段使いをどの程度したいか次第という感じ。デバイスとして水深40mまでの使用が推奨されていることも、ディープダイビングをする方には気になるところだろう。

スキンダイビングやフリーダイビング、テクニカルダイビングでも使用してみたので、それぞれでどう使っていけそうかレポートしていく。

▶︎関連記事:ダイブコンピュータにも使えるタフな「Apple Watch Ultra」が満を持して登場

水中で使える標準アプリ「水深」と他社製アプリ「Oceanic+」

まず前提として、Apple Watch Ultraには水中で使えるアプリが二つある。一つは「水深」アプリ、もう一つは「Oceanic+」アプリだ。

水深アプリ

水深アプリはApple Watch Ultraの標準機能として搭載されており、水中で「現在時刻」、「現在の水深と最大水深」、「水中にいる時間」、「水温」が確認できる。NDLや安全・減圧停止の情報は提供されないため、ダイブコンピュータとして使用することはできないので注意しよう。ダイブコンピュータの「ゲージモード」と言えばわかりやすいのではないだろうか。

「水深」アプリ

水深アプリのログはペアリングしているiPhone「ヘルスケア」アプリのブラウズ>アクティビティから確認することができる。よく使う項目に設定しておけばヘルスケアアプリのトップに出てくるので、頻繁に使う方は設定するのがおすすめ。

水深アプリ

  • ●「現在時刻」、「現在の水深と最大水深」、「水中にいる時間」、「水温」が確認できる
  • ●最大水深40mまで使用可能
※40mを超えた場合、警告画面になり正常に動作しない可能性がある。

Oceanic+アプリ

Huish Outdoors, LLCより提供されている「Oceanic+」アプリはApple Watch Ultraにインストールすることで、Apple Watch Ultraをダイブコンピュータとして使用できるようにするもの。多くのダイブコンピュータにも採用されているビュールマン減圧アルゴリズムが搭載されており、レクリエーションダイビングやシュノーケリングに対応している。ただし、ダイビングで使うにはサブスクリプションプランを契約する必要がある

機能上は上記の図のようになっているが、実際はシュノーケリングモードとスキューバダイビングモードの二つがあり、有料プランを契約しないとスキューバダイビングモードが選べない仕様となっている。つまり、ダイブコンピュータとして使用したい場合は有料契約は必須なのだ。金額は以下の通り。

Oceanic+有料プラン

  • ●月額:1,150円
  • ●年額:10,200円
  • ●1日:700円(初回100円)
  • ●ファミリー契約:年額14,800円で5名までファミリー共有可
※2023年7月現在

スキューバダイビングでの使用

冒頭にも記述したとおり、レクリエーションの範囲でファンダイビングするのであれば、Oceanic+アプリでまったく問題ないのではというのが率直な感想。画面をご覧いただいてもわかるとおり、通常のダイコンとして必要とされる基本機能は完備されている印象。画面も明るくてとても見やすい。

画面表示。水中ではタッチパネルは動作しないので、左のアクションボタンや右のクラウン(歯車のようにクルクル回せるところ)で操作をする。

他のダイコンと比べても深度や時間、NDLの精度に問題はない

その他ダイブコンピュータを選ぶ時に気になる部分については以下のとおり。

  • ●自動潜水モード…入水時にOceanic+が起動する設定をしておけば、水に入ると自動で潜水モードが立ち上がる。そのまま潜水モードに入るには一度アクションボタンを押す必要あり。
  • ●安全・減圧停止表示…自動で表示。
  • ●アラーム設定…深度、時間、NDL、水温それぞれで1つずつ設定可能。音は鳴らないがバイブレーションで通知。安全停止時、NDL残りわずかの時、MOD※1超過時、浮上速度超過時に1秒ごとに振動。アクションボタンを押すと振動が止まる。
  • ●ナイトロックス対応…酸素濃度40%まで設定可能。
  • ●ダイブプランナー…水深とガスの種類を入れると無限圧潜水可能な時間を表示。
  • ●水面休息、飛行機搭乗禁止時間…Oceanic+アプリのサーフェスから確認可。
  • ●高度…自動で記録。
  • ●保守性の変更…0~2の範囲で設定可能。カスタムでグラディエントファクター※2の調整も可能。PPO2は上限1.4まで設定可能。・GPS…エントリー、エキジット地点を自動で記録。ログに反映。
  • ●トランスミッター※3…なし
  • ●ログ…自動で保存されペアリングしているiPhoneアプリに記録。残圧や海況、使用器材、メモなど後から追加可能。
    ↓アプリのログ画面

  • ※1:MOD(Maximum Operating Depth)…最大動作深度。ナイトロックスなど酸素濃度の高いガスを使ったダイビングで潜ることができる最大水深。酸素中毒のリスクを回避するためにMODを超えずに潜る必要がある。
  • ※2:グラディエントファクター(勾配係数)…ビュールマン減圧アルゴリズムにおける、減圧計算の保守性を決める数値の設定。
  • ※3:トランスミッター…タンクに取り付けて、残圧をダイブコンピュータに表示させるための外部機器

設定画面は下記参照。※現在は日本語表記対応

使用が推奨されている最大水深は40mなので、レクリエーションの範囲であれば問題ないと思うが、ディープダイビングで40mギリギリまで潜る方にとっては少し心配かもしれない。一応40mを少し超えてもOceanic+アプリ自体は動くようだが、Oceanic+公式サイトではデバイスの許容範囲を超えずに使用することが強く勧められている

また、普段使いと併用になるので電池の持ちが気になるところだが、睡眠中もApple Watchをつけて1日3本潜ったところ、朝の準備の1〜2時間毎日充電するだけでまったく問題なく使用できている。リストバンドをダイビング向けのものにしていたが、ウエットスーツ着用時とそうでない時と留める位置が違うので、留め具の位置の調整が人によっては面倒かもしれない。

テクニカルダイビングでは使用できる?

緊急浮上ができない範囲(頭上閉鎖環境、要減圧など)を潜るテクニカルダイビング。一部のテクニカルダイビングシーンでは使用できるが、無理して使う必要はないかなというのが感想。Oceanic+が使用できそうなシーンは、たとえば水深40mまでの減圧不要な頭上閉鎖環境。ケーブダイビングでいえばカバーン、イントロケーブの範囲にあたる。

40m以浅の減圧を伴うダイビングの場合は、メインのダイブコンピュータを装着した上で、Apple Watch Ultraは水深アプリを起動させて水深や時間の確認に使用するのがおすすめだ。Oceanic+はDECOが出た場合、自動で減圧時間は出してくれるが、混合ガスやマルチガスには対応していないので減圧ガスを使用するダイビングには使用できない

シュノーケリング、スキンダイビングでの使用

シュノーケリングやスキンダイビングでApple Watch Ultraを使用する場合は、水深アプリかOceanic+のシュノーケリングモードのいずれかを選択することになる。

Oceanic+のシュノーケリングモードは無料で最大深度、潜った回数、直前のダイブ時間、温度の表示とコンパスが使用できる。つまり方角や、水面でのインターバルをどれくらい取れているかなどが確認できるので、より安全に楽しめるのは水深アプリよりもOceanic+だろう。ダイビングと同じようにログがiPhoneアプリに同期されるのも嬉しい。

Oceanic+シュノーケリングモード。※現在は日本語表示対応済み

アプリのログ画面

個人的には水中では水深アプリがシンプルで見やすいと感じたのでそちらを多用していた。どちらも無料なので一度使ってみてシーンや遊ぶ場所に合わせて好きな方を選ぶのが良いのでは。

水深アプリ

フリーダイビングでの使用

一息でどこまで泳げるかを競うフリーダイビング。中でも海でどこまで深く潜れるかを競うコンスタントウエイトウィズバイフィン(2枚フィンでバタ足で泳ぐ)、フリーイマージョン(ロープをたぐって潜降・浮上する)のトレーニングでApple Watch Ultraを使用してみた。

これに関しては水深アプリに軍配が上がった。Oceanic+ではダイブ中の現在水深は水中で表示されるが、水から上がった後の直前のダイブの深度が表示されないため、自分がどの深度まで潜れたのか、都度確認ができないのだ。

Oceanic+シュノーケリングモード。最大水深はトレーニング全体をとおしての水深のため、直前のダイブの水深はわからない。※現在は日本語表示対応済み

その点、水深アプリでは直前のダイブの水深が確認できるので、フリーダイビングではこちらを使用していた。

都度、直前の水深とダイブタイムが確認できる

また、上がった後にヘルスケアアプリにその日のダイブごとの水深がログとして残るのでフリーダイビングにはこちらの方が向いていると感じた。決してログは見やすいわけではないが…。

その日のダイブごとの平均水深が表示される

その深度に到達した時刻が表示される

ただし、どちらのアプリにも深度アラームはないため、音で現在の水深を確認したいフリーダイバーにとっては物足りない。アラーム用にもう一つダイブコンピュータを用意している場合は良いかもしれない。とはいえ、Oceanic+は今後フリーダイビング機能が搭載されていく予定と公式サイトにあるので、期待は大

もしもの時に備えて、Apple Watch Ultraはあった方が良い!?

ダイビングの機能に注目が行きがちだが、Apple Watch Ultraの標準機能を知っておけば、もしもの時に使うことができる。たとえば、Apple Watchを単体で通信できる契約にして、岸から離れても電波の届くところであれば、万が一漂流してしまった場合に、登録してある連絡先に電話したり、緊急通報サービスを使用することができる。ヘルスケアアプリ内から「緊急連絡先」に家族などの連絡先を登録しておけば、テキストメッセージで現在地情報が送信されるという機能も。(※日本国内に限る)

ダイビングが日常に近づくApple Watch Ultra

Apple Watch Ultraを海で使い倒してみて、良かったところ、物足りなかったところを紹介してきたが、普段使いがしやすいスマートウォッチが海でもそのまま使えるというのはとても楽だし、より愛着が湧いた。とはいえサブスク…。フリーダイビングやテクニカルダイビングも行う私にとってはまだまだ物足りないので、水深アプリでゲージやサブ機として使用するのが妥当なところ。

しかし、普段使いとしては、そこはさすがApple Watch。日常生活がどんどん便利になっていくのは感じた。電子マネーでの支払い、音声によるスケジュール管理やメモ、メールや天気の通知、睡眠や運動のログなど健康管理…。特に今回初めてApple Watchを使用したので新鮮だった。ここにダイビングの機能が入ってくるのは、よりダイビングが日常に近づいてきている感じがする。次のApple Watch、もしくはOceanic+のアップデートが楽しみなのは間違いない。

▶︎Apple Watch Ultra
▶︎Oceanic+

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PROFILE
IT企業でSaaS営業、導入コンサル、マーケティングのキャリアを積む。その一方、趣味だったダイビングの楽しみ方を広げる仕組みが作れないかと、オーシャナに自己PR文を送り付けたところ、現社長と当時の編集長からお声がけいただき、2018年に異業種から華麗に転職。
営業として全国を飛び回り、現在は自身で執筆も行う。2020年6月より地域おこし企業人として沖縄県・恩納村役場へ駐在。環境に優しいダイビングの国際基準「Green Fins」の導入推進を担当している。休みの日もスキューバダイビングやスキンダイビングに時間を費やす海狂い。
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